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企業間決済とは?主な支払い方法やキャッシュレス化が進まない原因を解説

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企業間決済とは、企業対企業の取引での支払いのことです。企業間決済では口座振込・振替が一般的ですが、クレジットカード決済をはじめとするキャッシュレス決済はなぜ普及しないのでしょうか。その理由を、BtoCとの違いや日本社会の特徴などから読み解きます。

企業間決済(BtoB)とは?

企業間決済とは名前の通り、企業対企業で行われる取引の決済のことです。法人間決済やBtoB決済などと呼ばれることもあります。企業間決済の例として、次のような取引(決済)が挙げられます。

  • 飲食店や小売店の仕入れ費用を掛売りで支払う
  • 業務のアウトソーシングサービスの利用料を後払いで支払う
  • コンサルティングやEC事業の運営代行などを成果報酬で支払う など

BtoCの決済との違い

企業間取引(BtoB取引)に対して、企業対一般消費者の取引を「BtoC取引」と呼ばれます。BtoC取引には次のようなさまざまな形態・例があります。

  • スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでの買い物
  • 美容室やサロンなどの料金
  • 習い事の月謝
  • 電気やガスなどの公共料金
  • オンデマンドサービスの利用料
  • ECサイトでの買い物 など

私たちが企業の一員としてではなく一個人として行うすべての取引がBtoC取引です。BtoC取引とBtoB取引の違いには、「動く金額や取引の規模が大きい」「決裁権が複雑なことが多い」などがあります。

BtoB取引には仕入れや業務のアウトソーシングなど比較的金額の小さいものもありますが、事業に使う施設を建設したり複数の社用車をまとめて購入したり、金額や規模の大きい取引も多いです。

一度の取引のスケールが大きいため、売り手側は自社を選んでもらおうと、買い手側は少しでもコストを抑えようとそれぞれ工夫を凝らします。

また、BtoB取引では決裁権が複雑なことも多いです。BtoC取引では購入の決断を下すのは本人か、せいぜい家族の誰かでしょう。

一方BtoB取引では担当者がそのまま決裁者(キーマン)であることはほとんどありません。すべての決裁に社長・代表の承認が必要なこともあれば、役職者に部分決裁権が与えられ、一定の金額内での決定権がある場合もあります。

担当者からその上長へ、上長から役職者へと「稟議」を進めてなくてはならないケースも珍しくありません。

企業間決済の主な支払い方法

BtoBは取引のスケールが大きく流れも複雑なため、決済方法もこれに対応できるものでなければなりません。

企業間決済の主な支払い方法を紹介します。

請求書払い

企業間決済では普通、請求書払いが採用されます。支払いの金額や期限、方法などが書かれた請求書を売り手が買い手に送付し、これに基づいて決済が行われる方法です。

なお、請求書にはコンビニ払込票のバーコードのようなものはなく、請求書だけで支払いを済ませることはできません。請求書はあくまで支払いの内容を伝えるためのもので、実際の支払いは口座振込・振替やクレジットカードなどで行われます。

口座振込・振替

企業間決済において最も一般的なのが、口座振込・振替です。

口座振込は指定された銀行口座に直接現金を振り込んだり、口座から口座にお金を移したりする方法です。一度きりの取引や、支払いが不定期で発生する取引でよく使われています。

口座振替は自動引き落としとも呼ばれ、指定した口座から支払い金額を自動で引き落とします。口座が残高不足の状態だと引き落としはかかりませんが、この場合も2~3回の追加引き落としがかかるのが普通です。

各種公共料金やオフィスの家賃、業務のアウトソーシングサービスなど、毎月支払いが発生する取引でよく使われる方法です。

クレジットカード払い

クレジットカード払いはBtoCでよく使われる決済手段で、企業間決済ではあまり浸透していません。ただ、経費の立替払いの代わりとして、法人カードでの支払いが行われることは増えてきました。

企業間決済とキャッシュレス

企業間決済のキャッシュレス化はあまり進んでいません。まずは企業間決済の現状について確認していきましょう。

企業間決済のキャッシュレス化はBtoCより進んでいないが、コロナ禍による進展は見られる

企業間決済のキャッシュレス化はBtoCほどは進んでいません。ただ、コロナ禍によりBtoC市場のキャッシュレス化が進んだように、企業間決済のキャッシュレス化も飛躍的に進みました。

その証明として、経済産業省のまとめた調査結果には次のようにあります。

令和3年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、20.7兆円(前年19.3兆円、前々年19.4兆円、前年比7.35%増)に拡大しています。また、令和2年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は372.7兆円(前年334.9兆年、前々年353.0兆円、前年比11.3%増)に増加しました。

なお、令和元年における日本国内BtoC-EC市場規模は19.4兆円、日本国内BtoB-EC市場規模は350.0兆円であったところ、令和3年における日本国内のBtoC-EC及びBtoB-EC市場規模は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が強まる前の令和元年における市場規模を超したと評価できます。

出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

クレジット払いよりも銀行振込が一般的だが、小口(立替)経費はクレジットカードが浸透

コロナ禍により企業間決済のキャッシュレス化は進みましたが、まだまだ口座振込・振替が一般的という状況です。

ただ、例外として小口(立替)経費の支払いにはクレジットカード払いが浸透しつつあります。

小口経費とは、事業を運営していくうえで発生する細々とした経費を支払うために、店舗や拠点に備えておく少額の現金のことです。

従来、このような経費は従業員が自腹で立て替えた後、店舗や拠点の小口経費から立て替え分を受け取るという流れが一般的でした。あるいは、1ヵ月の立替経費を翌月の給与日に、給与と一緒に振り込むという企業が多かったでしょう。

しかし最近では、従業員による立替の代わりに法人カードを利用する企業が増えてきました。

たとえば従業員が社用車で移動している途中、ガソリンが足りなくなったとしましょう。このとき社用車に法人カードがあれば、従業員は自腹でガソリン代を立て替えることなく、法人カードを使って給油ができます。

法人カードで経費を支払えば、従業員は経費精算を申請する手間から開放されます。経費の立替により現金が足りなくなり、生活が苦しくなることもないでしょう。

小口以外の企業間決済でキャッシュレス化が進まない原因

小口経費の代わりに法人カードを使う企業は増えているものの、それ以外の企業間決済ではキャッシュレス化はあまり進んでいません。それはなぜなのか、4つの原因を紹介します。

日本ならではの商慣習が根強い

企業間決済のキャッシュレス化が進まない1つ目の原因は、「日本ならではの商慣習が根強い」ことです。

クレジットカード決済はアメリカやイギリスなどの諸外国では企業間決済の主な方法として浸透していますが、日本は違います。

その原因として、日本は銀行振込や約束手形などの決済方法が諸外国よりも発達しており、これらの方法からクレジットカード払い(キャッシュレス決済)に切り替えるメリットが少ないことが挙げられます。

取引額が大きいのに手数料率も高い

企業間決済のキャッシュレス化が進まない2つ目の原因は、「取引額が大きいのに手数料率も高い」ことです。

クレジットカード決済では、支払いのたびに決済手数料が発生します。この手数料は受領側(加盟店)の業種や規模により変動しますが、低くて1%、高くて10%にもなるといわれています。

先述の通り、企業間決済は取引のスケールが大きく、支払いの金額も大きいです。たとえば1,000万円の取引では、決済手数料は10万~100万円にもなってしまいます。

一方、口座振込であれば数百円の手数料だけで済みます。従来どおりの支払い方法を使うだけで、利益率が圧倒的に高くなるのです。

決済金額の上限が低く、大規模取引に向かない

企業間決済のキャッシュレス化が進まない3つ目の原因は、「決済金額の上限が低く、大規模取引に向かない」ことです。

クレジットカードには上限額があり、法人カードでも数百万円ほどということが多いです。スケールの大きな取引では上限額が取引金額を下回り、そもそもクレジットカード払いを使うことができません。

受領側が加盟店になる必要があり、導入のハードルが高い

企業間決済のキャッシュレス化が進まない4つ目の原因は、「受領側が加盟店に鳴る必要があり、導入のハードルが高い」ことです。

クレジットカード払いを受け付けるためには、受け付ける側(受領側)がそのカードの加盟店にならなければなりません。

クレジットカードの加盟店になるにはクレジット会社の審査をクリアしなければならず、それなりに煩雑な手続きを経なければなりません。初期費用やランニングコストがかかる場合もあります。

一方、銀行口座は法人口座であっても比較的簡単に開設できます。クレジットカードのようなコストもかかりません。

企業間の電子商取引(BtoB-EC)の市場規模は右肩上がり

先述の通り、企業間決済のキャッシュレス化はコロナ禍により進みました。前年比だけで見れば、令和に入ってからはBtoCよりもBtoBが大きいです(BtoB-ECは前年比11.3%増、BtoC-ECは前年比7.35%増)。

BtoB-EC市場の状況をBtoC-ECと比較し、その展望を考えてみましょう。

BtoC-ECの市場規模と比較

出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

グラフはBtoC-ECの市場規模の推移をまとめたものです。BtoC-ECの市場規模は2020年を除き、右肩上がりで伸び続けています。

中でも市場規模の拡大が目覚しいのが「物販系分野(グラフの青色部分)」でしょう。特に新型コロナウイルスの感染が国内ではじめて確認された2019年から翌年2020年にかけての伸びは圧倒的です。

これはコロナ禍によりネットショップの利用率が高まったことによるものでしょう。

出典:コロナ禍前後で10代の3割がAmazon利用頻度増加/利用頻度は月1回が最多に【ウブン調査】 │ MarkeZine

このグラフはコロナ禍前後でAmazonでの購入頻度がどのくらい変わったのかを示したものです。コロナ禍後は月に2~3回の割合が特に大きくなっています。

BtoC-ECは企業間決済のキャッシュレス化を進めるか?

BtoCのキャッシュレス化は順調に進んでおり、特に物販分野のキャッシュレス化はコロナ禍により大きく進みました。これはBtoBのキャッシュレス化を進めることにつながるのでしょうか。

先述の通り、企業間決済のキャッシュレス化にはさまざまな課題があります。2023年現在では、小口経費を除き、企業が決済をキャッシュレス化するメリットはほぼありません。

ただ、企業に属するすべての人は社員や役員であると同時に、一般消費者でもあります。プライベートで一般消費者としてキャッシュレス決済を使い、その便利さに慣れ親しんだ結果、「会社の支払いもキャッシュレス化したい」と考える人が増えてくるのは自然なことです。

クレジットカードや電子マネーなどを提供する決済機関が、このことに気付かないわけはないでしょう。新たなニーズが生まれつつあることに気付き、これをいち早く獲得するために、企業間決済の課題を解決するために動き出す会社も増えていくと思われます。

企業として時代の流れに乗り遅れないよう、決済機関や同業他社の動きには常に目を光らせておきたいです。

企業間決済をスムーズに行うために、決済代行サービスも検討しよう

2023年現在、小口経費以外の企業間決済のキャッシュレス化はあまり進んでいません。

裏を返せば、小口経費をキャッシュレス化したという企業は増えてきています。キャッシュレス決済では従業員が経費を立て替える必要がなく、経費精算の手間も、立て替えにより従業員の生活が圧迫される心配もありません。

また、BtoC市場ではキャッシュレス化が目覚しい勢いで進んでいます。BtoC市場の影響を受け、企業間決済のキャッシュレス化が加速する可能性もあります。

企業間決済のキャッシュレス化にスムーズに対応するために、早めに準備を進めておくべきことはたしかです。そこで役に立つのが「決済代行サービス」です。

決済代行サービスはクレジットカード決済はもちろん、電子マネーや口座振込・振替など、さまざまな決済方法をまとめて導入・管理できるサービスです。これを活用することで、従業員にかかる負荷や人件費を抑えながらキャッシュレス決済に対応していけるでしょう。

こちらの記事ではおすすめの決済代行サービスをタイプ別に紹介しています。選び方も解説しているので、自社に合ったサービスを導入し、コスト削減・業務負荷の軽減などのメリットを最大化できるでしょう。

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この記事の監修
中島 崚
中島 崚
慶応義塾大学商学部卒業。新卒でフロンティア・マネジメント株式会社に入社し、メーカーの中期経営計画や百貨店の再生計画策定に従事。その後、スマートキャンプ株式会社に入社し、事業企画として業務を担う。また、兼務でグループ会社であるマネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社に出向し、アントレプレナーファンド「HIRAC FUND」でキャピタリスト業務に携わる。2022年7月よりこれまで副業で経営していたステップ・アラウンド株式会社を独立させる。
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