キャッシュレス決済の普及に伴い、QRコード決済の導入が注目されています。経済産業省の発表によると、2024年のキャッシュレス決済比率は「42.8%(141.0兆円)」となり、2025年までに40%という中間目標をクリアしました。
特に注目すべきは、キャッシュレス決済の内訳でQRコード決済(コード決済)が9.6%(13.5兆円)を占め、電子マネーの4.4%(6.2兆円)を大きく上回っていることです。NIRA総合研究開発機構の調査でも、QRコード・バーコード決済の利用が8.1%となっており、急速な普及が確認されています。
QRコード決済の導入を検討している事業者の多くが抱える悩みは、「どのサービスを選べばよいかわからない」「手数料や費用がわからない」「導入方法が複雑そう」といったものです。
本記事では、QRコード決済導入における選び方のポイント、各サービスの手数料比較、実際の導入費用シミュレーション、具体的な導入手順まで、事業者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。これらの情報を活用することで、自社に最適なQRコード決済サービスを選択し、スムーズな導入を実現できるでしょう。
QRコード決済の基本と仕組み
QRコード決済の仕組みと決済方式
QRコード決済は、スマホアプリからQRコードを使って支払う決済方法です。決済方式は主に2つに分かれます。

ユーザースキャン方式では、店舗に設置されたQRコードを顧客がスマートフォンで読み取って決済を行います。QRコードを掲示するためのステッカー等は事業者から無料で提供してもらえます。この方式は初期費用がほぼかからないため、多くの店舗で採用されています。
ストアスキャン方式では、顧客のスマートフォンに表示されたQRコードを店舗側が読み取ります。店舗側がユーザーの端末に表示されたQRコードを読み取る方式では、店舗側は専用の決済端末を用意する必要があります。
決済の流れとしては、顧客がアプリを起動し、事前にチャージした残高またはクレジットカードからの引き落としで支払いが完了します。決済情報は即座にデータ化され、店舗側の管理システムに反映されます。
QRコード決済の普及状況と市場規模
日本のQRコード決済市場は急速に拡大しています。日本能率協会総合研究所の調査によると、2023年の国内のQRコード決済市場は約8兆円に達し、さらなる成長が期待されています。
利用率の面では、MMD研究所の調査によると、QRコード決済利用上位4サービスで93.2%を占める結果となりました。具体的には、「PayPay」が46.3%、「楽天ペイ」が19.4%、「d払い」が16.2%、「au PAY」が11.3%となっており、これら主要4サービスが市場の大部分を占めています。
QRコード決済は、商品・サービスの単価が低いほど利用されやすい傾向にあります。実際に、経済産業省の調査では、1,000円以下の決済において現金払いは「49%」と約半数を占めており、QRコード決済の利用率は「19%」でクレジットカードを上回る結果になっています。
一般社団法人キャッシュレス推進協議会の最新データでは、2024年12月末時点での各サービスのアカウント数の総計が274,077千アカウントに達しており、利用者基盤の拡大が続いていることが分かります。
QRコード決済導入のメリット・デメリット
QRコード決済導入のメリット
QRコード決済導入の最大のメリットは、初期投資を抑えながらキャッシュレス決済を実現できることです。QRコード決済は、状況によっては初期費用が発生しないため、コストを抑えながら導入できます。決済手数料もクレジットカード決済と比較すると安く、企業にとって負担を軽減しながら決済手段を増やせるのがメリットです。
業務効率化も大きなメリットがあります。QRコード決済を導入することで、会計業務の効率化に加えて、金銭管理の手間を省いたり人的ミスを減らしたりできます。現金を扱う必要がなくなるため、釣り銭の準備やレジ締め作業の手間が大幅に削減されます。
集客効果も期待できます。経済産業省の調査によると、中小企業1,031社におけるキャッシュレス決済導入率は「80%」に達し、そのうちQRコード決済の導入率は約55%と、半数以上の店舗で導入が進んでいることがわかりました。スマートフォンの利用者が増加し、キャッシュレス決済が普及している中で、QRコードを導入することで多くの消費者からの利用が期待できます。
QRコード決済導入のデメリット
一方、デメリットとしては入金タイミングの遅れがあります。QRコード決済による売上金は、即時入金はされません。売上金はQRコード決済事業者を経由して、店舗に振り込まれるためです。この点は資金繰りに影響する可能性があるため、注意が必要です。
セキュリティ面でのリスクも考慮が必要です。店舗で用意したQRコードがすり替えられて、第三者に送金されてしまう可能性があります。定期的なQRコードの確認と適切な管理が重要になります。
QRコード決済サービス比較|手数料・費用
QRコード決済手数料比較一覧表
決済サービス | イメージ | 初期費用 | 月額費用 | 決済手数料 | 入金サイクル | 入金手数料 |
PayPay 無料プラン | ![]() | 無料 | 無料 | 1.98% | ・月末締め翌日 ※PayPay銀行 ・月末締め翌々営業日 ※その他金融機関 ・早期振込サービス | 月1回無料 早期振込サービス: 0.38%+ PayPay銀行:20円 その他金融機関:200円 |
PayPay マイストア ライトプラン | ![]() | 無料 | 1,980円 | 1.60% | ・月末締め翌日 ※PayPay銀行 ・月末締め翌々営業日 ※その他金融機関 ・早期振込サービス | 月1回無料 早期振込サービス: 0.38%+ PayPay銀行:20円 その他金融機関:200円 |
楽天ペイ | ![]() | 無料 | 無料 | 2.95%~ 新規加盟店は2.20%~ | ・毎日 (翌日入金) ※楽天銀行 ・月1回 (末日締め翌月25日入金) ※その他銀行 | 楽天銀行:無料 その他銀行:330円/回 |
d払い (メルペイ) | ![]() | 無料 | 無料 | 2.6% (メルペイとの 共通QRコードの場合) | ・月1回 ・月2回 (1~15日分:当月25日入金 16~末日分:翌月10日入金) | 無料(1万円以上) 1万円未満の場合:200円 |
au Pay | ![]() | 無料 | 無料 | 2.6% | ・月1回 ・月2回 (1~15日分:翌月15日入金 16~末日分:翌月末入金) ・早期振込サービス | 無料(1万円以上) 早期振込サービス: 210円 |
QRコード決済も決済代行サービスを経由する場合には3.24%の手数料が適用されることが多く、その場合はカード決済などの他のキャッシュレス決済手段と手数料率がほぼ同等になります。
PayPay

PayPayは日本最大のQRコード決済サービスで、登録ユーザー数は6,500万人を超えており(2024年8月時点)圧倒的なシェアを誇ります。
最大のメリットは利用者数の多さです。業界最高レベルのユーザー数により、新規顧客の獲得効果が期待できます。また、手数料率も業界内で比較的安く設定されています。
個人事業主のPayPay導入に関する記事もご覧ください。
プラン | 無料プラン | マイストアライトプラン |
初期費用 | 無料 | 無料 |
月額費用 | 無料 | 1,980円 |
決済手数料 | 1.98% | 1.60% |
入金サイクル | ・月末締め翌日 ※PayPay銀行 ・月末締め翌々営業日 ※その他金融機関 ・早期振込サービス | ・月末締め翌日 ※PayPay銀行 ・月末締め翌々営業日 ※その他金融機関 ・早期振込サービス |
入金手数料 | 月1回無料 早期振込サービス: 0.38%+ PayPay銀行:20円 その他金融機関:200円 | 月1回無料 早期振込サービス: 0.38%+ PayPay銀行:20円 その他金融機関:200円 |
楽天ペイ

楽天ペイは楽天経済圏との連携が強みのQRコード決済サービスです。楽天市場で獲得したポイントを使えることから、楽天ユーザーの集客に効果的です。
楽天ポイントとの連携により、楽天ユーザーの囲い込み効果が期待できます。また、楽天の各種サービスとの連携により、総合的なマーケティング戦略を展開しやすい点も魅力です。
決済サービス | 楽天ペイ |
初期費用 | 無料 |
月額費用 | 無料 |
決済手数料 | 2.95%~ 新規加盟店は2.20%~ |
入金サイクル | ・毎日 (翌日入金) ※楽天銀行 ・月1回 (末日締め翌月25日入金) ※その他銀行 |
入金手数料 | 楽天銀行:無料 その他銀行:330円/回 |
au PAY

au PAYはKDDIが運営するQRコード決済サービスで、Pontaポイントとの連携が特徴です。au回線契約ユーザーはもちろん、auユーザー以外の利用者を含めて2024年11月時点で会員数は3,600万人を超えます。
入金手数料が完全無料な点が大きなメリットです。また、Pontaポイントとの連携により、既存のPonta利用者の集客効果も期待できます。
決済サービス | au Pay |
初期費用 | 無料 |
月額費用 | 無料 |
決済手数料 | 2.60% |
入金サイクル | ・月1回 ・月2回 (1~15日分:翌月15日入金 16~末日分:翌月末入金) ・早期振込サービス |
入金手数料 | 無料(1万円以上) 早期振込サービス: 210円 |
d払い・メルペイ

d払いとメルペイは共通のQRコードで利用できるサービスです。d払いは、NTTドコモが提供するQRコード決済サービスです。Docomoの回線を契約していなくても、d払いのみが登録できます。
2023年12月から最大6カ月間の決済手数料無料キャンペーンを実施しており、期間限定で手数料負担を軽減できます。
一つのQRコードでd払いとメルペイの両方に対応できるため、より多くの顧客層をカバーできます。特にメルカリユーザーの集客効果が期待できます。
決済サービス | d払い(メルペイ) |
初期費用 | 無料 |
月額費用 | 無料 |
決済手数料 | 2.6% (メルペイとの 共通QRコードの場合) |
入金サイクル | ・月1回 ・月2回 (1~15日分:当月25日入金 16~末日分:翌月10日入金) |
入金手数料 | 無料(1万円以上) 1万円未満の場合:200円 |
詳細はこちら:https://service.smt.docomo.ne.jp/keitai_payment/corporation/shop.html
その他のQRコード決済サービス
主要サービス以外にも、FamiPayなどの特色あるサービスがあります。FamiPayの導入費用は無料です。決済手数料は、JPQR(QRコード決済の統一規格)を利用する場合は2.94%での利用が可能ですが、2023年12月で申込みが終了しました。
FamiPayの最大の特徴は、年間50億人以上の延べ人数が利用するファミリーマートの顧客を呼べる点にあります。ファミリーマートとの連携によるマーケティング効果を期待する事業者には有力な選択肢となります。
Alipay+やWeChat Payなどのインバウンド向けサービスも重要です。これらのサービスは中国からの観光客をターゲットとする店舗には欠かせない決済手段となっています。
QRコード決済導入費用シミュレーション
初期・月額費用
QRコード決済の導入費用は、選択する方式により大きく異なります。ユーザースキャン方式の場合、初期費用はほぼゼロです。必要なのはQRコードを印刷したPOPの設置のみで、これは決済事業者から無料で提供されます。
ストアスキャン方式を選択する場合は、以下の初期費用が発生します:
- QRコード読み取り用タブレット・スマートフォン:3万円〜10万円
- Wi-Fi環境整備費:1万円〜3万円(既存環境がない場合)
- 設定・導入サポート費:0円〜2万円(サービスにより異なる)
月額費用については、ほとんどのサービスで基本料金は無料です。ただし、PayPayのライトプランのように、より低い手数料率を適用するために月額費用が発生するサービスもあります。
売上規模別に決済手数料を比較
月商別の決済手数料シミュレーション(ユーザースキャン方式、QRコード決済比率30%想定):
月商 | QR決済額 | PayPay (1.98%) | 楽天ペイ (2.20%) | au PAY (2.6%) | d払い (2.6%) |
50万円 | 15万円 | 2,970円 | 3,300円 | 3,900円 | 3,900円 |
100万円 | 30万円 | 5,940円 | 6,600円 | 7,800円 | 7,800円 |
300万円 | 90万円 | 17,820円 | 19,800円 | 23,400円 | 23,400円 |
500万円 | 150万円 | 29,700円 | 33,000円 | 39,000円 | 39,000円 |
1,000万円 | 300万円 | 59,400円 | 66,000円 | 78,000円 | 78,000円 |
見落としがちな隠れたコスト
QRコード決済導入時に見落としがちなコストがいくつかあります。
通信費用:ストアスキャン方式を採用する場合、専用端末の通信費が月額3,000円〜5,000円程度発生します。既存のWi-Fi環境を利用する場合でも、通信量の増加により料金が上がる可能性があります。
端末保険・サポート費用:専用端末を導入する場合、故障時の修理費用や盗難保険に年額5,000円〜15,000円程度のコストがかかる場合があります。
スタッフ教育費用:新しい決済システムの導入に伴い、スタッフ教育の時間コストが発生します。特に複数のQRコード決済を同時導入する場合、操作方法の習得に相応の時間が必要です。
システム連携費用:既存のPOSレジシステムとの連携を行う場合、システム改修費として10万円〜50万円程度のコストが発生する可能性があります。
振込手数料:多くのサービスで基本的な入金サイクルでは手数料無料ですが、早期入金サービスを利用する場合は手数料が発生します。資金繰りの関係で頻繁に早期入金を利用する場合、年間で数万円のコストになる可能性があります。
これらの隠れたコストを事前に把握し、総合的な導入費用を計算することが重要です。
QRコード決済導入方法と手順
導入前の準備と必要書類
QRコード決済の導入には、事前準備として必要書類の整備が重要です。法人の場合は、登記簿謄本(発行から3か月以内)、印鑑証明書、代表者の本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)、法人の銀行口座通帳のコピーが必要です。
個人事業主の場合は、確定申告書の控え、開業届または青色申告承認申請書、本人確認書類、事業用銀行口座通帳のコピーを用意します。営業許可証が必要な業種(飲食業、美容業など)では、関連する許可証のコピーも準備が必要です。
店舗情報の整理も重要な準備項目です。店舗の住所、営業時間、取り扱い商品・サービス内容、月間売上高の概算、従業員数などの基本情報をまとめておきます。
決済環境の確認として、Wi-Fi環境の有無、既存レジシステムとの連携希望の有無、QRコード設置場所の検討を行います。複数のサービス導入を検討している場合は、優先順位を決めておくことで、スムーズな申し込みが可能になります。
申し込みから運用開始までの流れ
一般的なQRコード決済導入の流れは以下の通りです:
1. 申し込み(1日目) 各サービスの公式ウェブサイトから加盟店申し込みを行います。基本情報の入力と必要書類のアップロードを実施します。この段階で、決済方式(ユーザースキャンかストアスキャンか)も選択します。
2. 審査期間(2-14日目) 多くのQRコード決済事業者では、個人事業主も本人確認書類を用意しておけば簡単に申請できます。その後審査に通ると、QRコード決済のスタートキットが届く流れです。審査期間はサービスにより異なりますが、通常1〜2週間程度です。
3. スタートキット到着(審査完了後3-5日) 審査通過後、QRコードステッカー、操作マニュアル、設置ガイドなどが含まれたスタートキットが店舗に送付されます。
4. 設置・設定(1-2日) ユーザースキャン方式の場合は、QRコードステッカーを顧客の目に付きやすい場所に設置するだけで完了です。ストアスキャン方式では、専用アプリのダウンロードと初期設定を行います。
5. テスト運用(1-3日) 実際の営業開始前に、スタッフでテスト決済を行い、操作方法の確認とトラブル対応の練習を実施します。
6. 運用開始 正式に顧客向けサービスを開始します。初期は操作に慣れないことがあるため、混雑時間を避けて段階的に利用を拡大することをお勧めします。
運用開始後の管理とポイント
QRコード決済の運用開始後は、適切な管理と継続的な改善が重要です。
日次管理業務として、決済履歴の確認、レジ締め時の売上照合、QRコードステッカーの状態確認(汚れや破損がないか)を行います。異常な取引や不審な決済がないかのチェックも重要です。
月次管理業務では、決済手数料の確認、入金スケジュールの管理、売上データの分析を実施します。各サービスの管理画面から詳細なデータをダウンロードし、経営分析に活用することで、導入効果を最大化できます。
スタッフ教育の継続も重要なポイントです。新人スタッフへの操作説明、トラブル時の対応方法の共有、新機能やキャンペーン情報の周知を定期的に行います。
顧客へのアピール方法では、QRコード決済対応を示すPOPの設置、レジ周りでの声かけ、各サービスのキャンペーン情報の案内などにより、利用促進を図ります。
セキュリティ管理として、QRコードのすり替え防止対策、スタッフのアカウント管理、不正利用発見時の対応フローの整備が必要です。定期的にQRコードの状態を確認し、第三者による改ざんがないかチェックすることが重要です。
1台でQRコード・クレジットカード・電子マネーに対応のマルチ決済端末
QRコード決済を導入にしたい方にとって、QRコード決済ではなく、クレジットカード・電子マネーにも対応できるマルチ決済端末という選択肢もあります。
マルチ決済端末とは?
マルチ決済端末は、一つの端末で3種類全てのキャッシュレス決済に対応することができます画期的なソリューションです。従来は決済方法ごとに異なる端末や契約が必要でしたが、マルチ決済端末により1社との契約ですべての導入が可能になります。
マルチ決済端末のメリット
対応決済手段の幅広さが最大の特徴です。最大71種類のクレジットカード・電子マネー・コード決済に対応するキャッシュレス決済端末提供サービスもあり、ほぼ全てのキャッシュレス決済ニーズに応えられます。
統一された管理システムにより、全ての決済データを一元管理できます。売上集計、入金管理、手数料計算などが一つのシステムで完結するため、経理業務の効率化が図れます。
スタッフの負担軽減も重要なメリットです。決済方法ごとに異なる操作を覚える必要がなく、一つの端末で全ての決済に対応できるため、教育コストと運用負荷が大幅に削減されます。
QRコード決済単体 vs マルチ決済端末 どちらがおすすめ?
コスト面ではQRコード決済だけの導入が有利ですが、集客や顧客満足度を考えると判断が変わります。クレジットカードや電子マネーを利用したい顧客を取りこぼす機会損失を月額20万円と仮定すると、マルチ決済端末の方が総合的にメリットが大きくなります。
選び時ののポイント:
- 低単価商品中心:QRコード決済単体
- 客単価が高め:マルチ決済端末
- 幅広い顧客層:マルチ決済端末
- インバウンド客が多い:マルチ決済端末(Alipay、WeChat Pay対応)
QRコード決済導入のよくある質問
契約や解約時にはどんな手続きが必要?
契約時の手続きについては、ほとんどのQRコード決済サービスで複雑な手続きは不要です。オンライン申し込みフォームに必要事項を入力し、本人確認書類をアップロードするだけで申し込みが完了します。審査期間は通常1〜2週間程度で、個人事業主でも比較的簡単に審査を通過できます。
契約に必要な書類は、法人の場合は登記簿謄本、印鑑証明書、代表者の本人確認書類が標準的です。個人事業主の場合は、確定申告書の控え、本人確認書類、事業用口座の通帳コピーが必要になります。
解約時の手続きは、サービスによって異なりますが、一般的には以下の流れになります。まず、各サービスの管理画面またはカスタマーサポートに解約申請を行います。未決済分の処理完了を待ち、最終的な売上金の入金を確認します。QRコードステッカーや専用端末がある場合は返却手続きを行います。
解約時の注意点として、解約申請から実際の解約完了まで1〜2か月程度の期間が必要な場合があります。この間も決済は可能な状態が続くため、顧客への周知と代替決済手段の準備が重要です。
セキュリティ面でのリスクやトラブル時の対応は?
QRコード決済で最も注意すべきリスクは、QRコードのすり替えです。店舗で用意したQRコードがすり替えられて、第三者に送金されてしまう可能性があります。対策として、QRコードステッカーの定期的な確認、改ざん防止機能付きのステッカー使用、監視カメラの設置などが効果的です。
不正利用への対応では、各QRコード決済サービスでセキュリティ体制が整備されています。不正検知システムにより怪しい取引は自動的にブロックされ、万が一被害が発生した場合も補償制度が設けられています。ただし、店舗側の過失がある場合は補償対象外となる可能性があるため、適切な管理が重要です。
システムトラブル時の対応について、通信障害やシステムメンテナンスにより一時的にサービスが利用できなくなる場合があります。このような状況に備えて、現金決済や他の決済手段への切り替え手順を事前に整備しておくことが重要です。
顧客とのトラブル対応では、決済エラーや重複決済などの問題が発生する可能性があります。各サービスで24時間対応のカスタマーサポートが提供されているため、トラブル発生時は速やかに連絡を取り、適切な解決を図ります。店舗スタッフには基本的なトラブル対応方法を教育しておくことが重要です。
複数のQRコード決済サービスを同時導入できる?
複数のQRコード決済サービスの同時導入は技術的に可能で、実際に多くの店舗で実施されています。主要4サービス(PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAY)全てに対応している店舗も珍しくありません。
導入方法は主に2つあります。個別契約方式では、各サービスと直接契約し、それぞれのQRコードを設置します。手数料を抑えられる可能性がありますが、管理が煩雑になるデメリットがあります。
決済代行サービス利用では、stera packやSquareなどの決済代行会社を通じて複数のQRコード決済をまとめて導入できます。手数料は個別契約より高めですが、運用の簡素化というメリットがあります。
管理面の注意点として、複数サービスを導入する場合、売上データの集計、入金スケジュールの管理、各サービスのキャンペーン情報の把握などが複雑になります。QRコード決済(スマホ決済)の手数料は契約先によって大きく異なりますが、闇雲に契約を進めると、レジ周りがQRコードで溢れかえり、運用や管理の手間が増えてしまう可能性があります。
おすすめとしてはとしては、まず主要1〜2サービスから開始し、運用に慣れてから段階的にサービスを追加することをお勧めします。顧客の利用動向を分析しながら、費用対効果の高いサービスの組み合わせを見つけることが重要です。
まとめ
QRコード決済の導入は、2025年現在において店舗運営に欠かせない施策となっています。キャッシュレス決済比率が42.8%に達し、QRコード決済が47%の利用率を誇る中、導入しないことによる機会損失は無視できません。
手数料面では、PayPayの1.60%〜1.98%が最も競争力があり、楽天ペイの2.95%が最も高い設定となっています。ただし、手数料だけでなく、ターゲット顧客層、入金サイクル、管理の簡便性を総合的に検討することが重要です。
導入方式の選択では、初期コストを抑えたい場合はユーザースキャン方式、より効率的な運用を求める場合はマルチ決済端末の検討をお勧めします。特にクレジットカードや電子マネーの需要も高い店舗では、マルチ決済端末による一元管理のメリットが大きくなります。
成功する導入のポイントは、自店舗の顧客特性と売上規模に適したサービス選択、適切な導入手順の実行、そして継続的な運用改善です。QRコード決済は単なる決済手段の追加ではなく、顧客満足度向上と業務効率化を実現する重要な投資として捉え、戦略的に取り組むことで最大の効果を得られるでしょう。
参考資料:
- 経済産業省「2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
- MMD研究所「2024年3月QRコード決済の利用に関する調査」
- 日本能率協会総合研究所「QRコード決済市場調査」
- NIRA総合研究開発機構「キャッシュレス決済実態調査2023」
- 一般社団法人キャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査」
- インタセクト・コミュニケーションズ「日本のキャッシュレス決済の変化と動向」