5月4日に緊急事態宣言の延長が発表され、新型コロナウイルスの感染収束は長期化することが予測されています。店舗業界では営業時間の短縮や停止、BtoBでも感染対策としてテレワークを実施する企業が増えていますが、未だ先行きは見えないことも多くあります。
そうした状況を踏まえ社内での展望検討の参考になればと思い、コロナウイルスによる経済影響・消費者意識の変化を整理。市場変化やトレンド予測をレポートとして作成しました。
今回はレポート内容をもとにアフターコロナの4つのメガトレンド、パラダイムシフトで店舗に求められる変革や未来の顧客体験について考えていきます。
世界で広がる新型コロナウイルスとは
経済や消費者行動に大きな影響を与えているコロナウイルスとは、そもそもどのようなものなのでしょうか。あらためて感染症としての位置づけや種類を整理していきます。
コロナウイルス(COVID-19)の分類
コロナウイルスはCOVID-19と呼ばれ、病原体の中でも細菌よりも微細なウイルスです。
感染症を引き起こす病原体の種類は大きさによって区別されており、ウイルスで代表的なものとしては「インフルエンザ・ノロウイルス」などがあります。
コロナウイルスの4つの種類
コロナウイルスには大きく4つの種類があり、今回のCOVID-19以外は感染経路も特定されおり接触・飛沫によって感染することがわかっています。
今回流行しているCOVID-19は8年前に中国や台湾で流行した「SARS」、「MERS」といった感染症の亜種です。
コロナショックによる経済影響・売上から見える変化の兆候
では、コロナウイルスによって企業や経済にはどのような影響が出ているのでしょうか。調査データをもとに上場企業や店舗業界への影響をみていきます。
上記のグラフは帝国データバンクが上場企業を対象に行った「新型コロナウイルス感染症」に関する調査データをまとめたものです。
業績のマイナス傾向に関して言及する企業は約半数近くにのぼり、とくに店舗を持つ業態では「営業停止・時間短縮」の影響が顕著にでているといえます。
総額1.8兆円の売上ダウン、相次ぐ企業の下方修正
また東京商工リサーチが上場企業を対象に実施した「新型コロナウイルス影響に関する調査」によると、業績の下方修正を行った企業は240社、合算売上は1.8兆円となっています。
しかし下方修正企業の2倍以上の企業では、未だに影響金額が明らかになっていないのが現状です。
そのため上記は氷山の一角といえるため、企業で正確な試算を行っていくことで影響金額はさらに大きくなることが予想できます。
通販は上昇トレンド、オンライン需要で伸びるEC領域
企業の業績を細かく見ていくことで、業界や領域のトレンド変化もみえてきます。次のグラフは小売業界の売上成長率をまとめたものです。
生活必需品を扱うスーパーやコンビニは原則停止しない方針のため、コロナによる特需をもたらしているといえます。しかし百貨店やショッピングモールなどの娯楽・ラグジュアリー消費は著しく低下しています。
対面接客が全体的に不調な一方で、ユナイテッドアローズ社の成長率をセグメント別にみると、ネット通販に関する需要は大幅に増加していることがわかります。
低価格でEC構築が可能なことで近年注目を集めているBASE(ベイス) やShopify(ショピファイ)など、ネットショップ・ECサイト作成サービスの活用も今後はさらに注目されるでしょう。
コロナウイルスによる消費動向の変化予測
経済や企業活動に大きな影響をもたらしている新型コロナウイルス。消費者への影響や意識変化はどのようなことが考えられるでしょうか。
次は消費動向に関する意識変化や、購買行動のトレンドについて予想していきます。
消費動向に関わる5つの意識変化・購買トレンド
紹介したとおり企業への影響もすでに出始めています。「中長期的な経済停滞による所得減少」、「先行きの見えない状況下での倹約・支出削減」は消費者の意識としても高まり複数のネガティブトレンドが想定されます。
一方で消費者行動に少なからずポジティブに作用することで、上昇トレンドを生むことも考えれます。
ユナイテッドアローズ社の事例で紹介したように、オンラインに関する購買は活性化し、生活必需品・娯楽商品の購入は増加が期待できます。
また外出自粛明けに来るであろう反動消費は、短期的には上昇トレンドに作用することも想定できます。
緊急事態宣言明けに起こる消費変化の3つのプロセス
現状のコロナムードからのパラダイムシフトは次のように、「デジタルシフト準備期・移行期・アフターコロナ」の3つステップに分解ができます。
緊急事態宣言による外出自粛ムードの状況では、各社がデジタルシフトに向けて準備や検討を行っていることでしょう。
緊急事態宣言が解除されるタイミングでは、反動消費により購買が一時的に加速し移行期に入ります。この際これまで店舗で買い物をしていた消費者は、テレワークやオンラインでの購買を経験し、リアル店舗に行くことが必須ではなくなっていることも考えられます。
そうなると消費者行動は変化し、リアル店舗に求める商品や体験も変わることが予想され、顧客セグメントへの対応が必要になるといえます。
そして移行期を経て、新たな価値を店舗が提供するアフターコロナを迎えます。店舗はデジタルによる購買を軸足に置きながら、さまざまなデータを活用しオンラインとオフラインを融合させたOMO(Online Merges Offline)戦略を本格実施していくようになるでしょう。
アフターコロナの世界~店舗を取り巻く4つのメガトレンド~
では具体的にアフターコロナを迎えた世界は、どのような動きになるのでしょうか。次は店舗をとりまく4つのトレンドについて解説していきます。
(1)人口構造の変化で求められる店舗の効率化
1つ目は人口構造の変化と労働人口減少に伴う、生産性・効率化に関するトレンドです。少子高齢化による人手不足は国内全体での課題といえます。
そうした人手不足に対する方法として、セルフレジやセミセルフといった無人レジが徐々に浸透しています。大手スーパーやコンビニでも首都圏では目にする機会が増え、ユニクロやTSUTAYAといった小売業界でも導入されています。
またオーダー業務に関する効率化の観点では、事前注文を行うモバイルオーダーシステムやテイクアウトアプリ、フードシェアリングも注目されています。店舗で会計せずにアプリ上で注文から決済まで完結するため、席数にしばられない集客が期待できます。
(2)加速するOMO、リアル・ネットデータの統合と活用
こうした消費者のオンラインによる購買が増えていくと、店舗で活用できるデータも増えていきます。
これまでの販促・マーケティング戦略では、リアル店舗を起点としてビジネスを組み立てていくのが一般的なものでした。しかしECやアプリといったオンライン購買が加速していくことを考えると、オフラインのみに軸足を置くことは正しいとはいいきれません。
OMOの考え方は2つの購買情報を分けるのではなく、1つのデータとして捉え両者を融合させたマーケティングを展開し、より顧客起点型のモデルを模索していきます。
そのため「データをどのように管理し・顧客のために扱っていくか」が重要となるため、DMP(データマネジメントプラットフォーム)やMA(マーケティングオートメーション)ツール活用などデータマーケティングの概念も重要になるでしょう。
(3)MコマースからVコマースへ、オンライン購買の拡大
消費者はスマホ1つで注文から決済までを完結し、アプリやサイト上でクーポンを活用しています。こうしたMコマース(モバイルコマース)は、消費者変化と技術変革によりさらに進化していきます。
フィッティングが課題であったアパレルEC領域では、VRを活用したバーチャル試着室も登場しています。すでにいくつかのサービスも提供されており、オンライン試着を提供しているVirtusizeではサイズの比較から自分にあった商品の検索が可能です。
「近くの店舗に求めるサイズ在庫がない・都心にしか店舗がなく購入できない」といった消費者でもスムーズに購入が可能になります。こうしたオンライン購買はさらに拡大し、新たな価値体験の創出も注目ポイントといえます。
(4)店舗のエンタメ化・新たな購買体験と価値提供
先ほど触れたとおり、消費者は外出できない環境下での購買を経験しています。購買のオンライン移行が進むなかで、店舗に求められる価値提供も変わっていくことが予想できます。
ネット通販とリアル店舗の位置づけや役割をあらため、接客やコーディネート提案に特化したショールーミングストアの事例も増えています。
蔦屋家電エンタープライズが運営している次世代型ショールーム「蔦屋家電+ (ツタヤカデンプラス)」では、店舗で売ることだけをゴールとせず、プロダクトや商品を展示し五感で体験を楽しむエンタメ要素を提供しています。
店舗には動線分析カメラを設置し、来店者の行動データや表情を分析、店頭の意見が出店店舗へフィードバックされる仕組みになっています。
上記のようなオンラインとオフラインを融合した、店舗での新たな購買価値や顧客体験の提供も今後は重要になっていくでしょう。
アフターコロナが創るデジタル新市場・店舗の変革予測
コロナウイルスによる緊急事態宣言明けの店舗トレンドや、消費者行動の意識変化予測について解説してきました。最後に今後注目されるであろうデジタル新市場をみていきます。
店舗ビジネスを変革するデジタル市場・DXカテゴリーマップ
店舗を取り巻く変化トレンドでも紹介したように、既存のPOSレジ・予約システムに加えて次のようなソリューションが新たなDX領域として注目されるでしょう。
店舗のオンライン購買を加速させるオーダー領域や、人手不足を解消するウォークスルー・無人レジはトレンドといえます。
また店舗体験という観点では上記と合わせて、需給に応じて単価の自動調整を行うダイナミックプライシングや、購買行動データをヒートマップとして可視化する動線分析ツールも顧客ニーズに即した店舗体験の実現で注目です。
アフターコロナの新時代を勝ち抜く顧客体験
緊急事態宣言を経て消費者は「接触・外出しない」状態での生活を経験しています。これまでにない時間を経験し購買行動は変化していることが予想されるため、オンラインの購買ニーズをいかに早く捉えるかが重要です。
また店舗への来店は、単一チャネルだけでは消費者は振り向かなくなっているかもしれません。消費者行動の変化を感じ取り、ネットとリアルの購買データ統合したチャネルを意識させない顧客体験や新たな来店価値の提供が必要ではないでしょうか。