起業したいが資金が足りない、新しい事業を始めるのに資金が必要という方向けに、資金調達方法を紹介します。資金調達には、返済が必要なものと不要なものが存在しますが、返済不要のものを紹介します。個人事業主の方も使える方法ですので、参考にしてみてください。
返済不要の資金調達1.補助金・助成金
補助金・助成金は国や自治体などの公的機関による、事業者の支援制度です。受け取った資金は一切返済不要であり、手間と時間がかかるデメリットはあれど、融資や出資と異なりリスクはありません。
返済不要の資金調達のなかでも、最初に検討したい方法です。
メリット
- 返済不要
- 種類が多い
- 信用向上につながる
補助金・助成金はあくまで支援制度であり、融資でも出資でもありません。そのため返済はもちろん、株式の提供も必要ありません。融資のように長期の返済が経営を圧迫したり、出資のように自由に経営できなくなったりする心配はないでしょう。
支援金を受給するには各制度の要件を満たさなければなりませんが、補助金・助成金にはさまざまな種類があります。たとえば雇用維持なら「雇用調整助成金」、ITツールの導入なら「IT導入補助金」というように、自社が利用できるものがないか探してみましょう。
補助金・助成金は国や自治体による制度であり、その審査をクリアすることで、自社の社会的信用が向上するメリットもあります。
デメリット
- 時間と手間がかかる
- 基本的に後払い
- 競争が激しい
補助金・助成金にはそれぞれ要件が決まっています。要件を満たしているかどうかを確認したり、必要な書類を作成したり、手続きには時間と手間がかかります。
要件を満たして受給が決まっても、支援金は基本的に「後払い」です。たとえばIT導入補助金でITツールを導入する場合、まずは自己資金でそのツールを購入し、後からその費用の一部を受け取ることになります。自己資金があまりない事業者にとっては、少し使いづらいかもしれません。
また、補助金には定員があり、要件を満たしていても受給できないことがあります(助成金は要件を満たしていればほぼ確実に受給できます)。
返済不要の資金調達2.出資を受ける
ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家などから出資を受ける方法です。彼らの目的は将来成長しそうな企業の株式を早めに購入し、その企業の価値が上がってから売却することで得られる差額(キャピタルゲイン)です。
VCは企業・組織として、エンジェル投資家は個人として、それぞれ企業への出資を行っています。
メリット
- まとまった金額の資金調達ができる
- 金銭的・コスト的な意味でのデメリットがない
- アドバイスやビジネスネットワークが得られることも
VCやエンジェル投資家などからの出資は、返済不要の資金調達の中でも大きな金額を調達できます。補助金・助成金は経費の一部しか支援されない補助金・助成金、調達できる額が限られる資産の売却・ファクタリングなどと比べ、特に開業時の資金調達に向いています。
補助金・助成金と同じく、一切の返済がなく、金銭的なコストがかからないのも魅力的です。たとえば後述するクラウドファンディングも返済不要ではあるものの、「リターン」を提供するためのコストがかかります。売掛債権の売却であるファクタリングでは、調達した額に手数料を加えた金額を後から支払わなければならず、実質的には返済があります。
このような金銭的・コスト的な意味でのデメリットが、出資にはありません。
また、VCやエンジェル投資家はいくつもの企業を成功に導いた経営のプロです。彼らからアドバイスを受けたり、彼らの属するビジネスネットワークに紹介してもらったり、資金調達以外のメリットもたくさんあります。
デメリット
- 投資家を探すのに時間と手間がかかる
- 自由に経営できなくなる恐れがある
- 利用できるケースが限られる
先述のとおり、VCやエンジェル投資家の目的は「株式売買の差額(キャピタルゲイン)」です。彼らは株式の購入を通して出資を行い、最終的にはその株式を売却することで利益を得ます。そのため、上場するつもりがない企業は出資を受けられないでしょう。
上場するつもりがあっても、投資家たちに自社の可能性を示せなければ出資は受けられません。彼らの目的はあくまでキャピタルゲインであり、ボランティアではありません。自社の可能性を伝えるための資料を作ったりプレゼンをしたり、自社に投資してくれる投資家を探したり、何かと時間と手間のかかるでしょう。
また、株式による資金調達という性質上、経営の自由度はどうしても下がります。自社と意見や価値観、方向性の合う投資家を探すことが大切です。
返済不要の資金調達3.クラウドファンディング
クラウドファンディングは、主にインターネットのプラットフォームを介し、個人の出資者を募る方法です。
『CANPFIRE』や『REAYFOR』などのプラットフォームで、「こんな商品・サービスを作りたい」「こんなお店を開きたい」などのプロジェクトを立ち上げ、それに出資してくれる人を広く募ります。
メリット
- 出資ではあるが株式を譲渡せずに済む
- 資金調達と同時に集客や宣伝ができる
- プロのアドバイスを受けながらプロジェクトを進められる
クラウドファンディングは出資者を募り資金調達をする方法ですが、先述の「VCやエンジェル投資家からの出資」と異なり、株式を譲渡せずに済みます。そのため、経営の自由度が下がることはありません。
クラウドファンディングでは出資者に対し、「リターン」と呼ばれる見返りを提供します。リターンは自由に設定でき、たとえば飲食店なら「お店のロゴ入りジョッキ」「店内への名前掲示」、IT企業なら「発売前のガジェットの提供」などがリターンになります。商品やサービスを作るためのプロジェクトなら、その商品やサービスをリターンになることが多いです。
そのため、クラウドファンディングではいかに面白く、魅力的なリターンを作れるかが成否を分けるでしょう。
ただ、リターンの設定やプロジェクトの宣伝などについては、プラットフォームの担当者がアドバイスをしてくれます。魅力的なプロジェクトはSNSや口コミで拡散されることもあり、目標金額の何倍もの資金が集まることもあります。
拡散による集客や宣伝も期待できること、出資者の多くは「応援」の気持ちで出資をしてくれるため、自社やブランドのファンを作れることなど、資金調達以外のメリットも多い方法です。
デメリット
- 時間と手間がかかる
- ある程度のスキルや知識が必要
- 資金が1円も得られないことも
魅力的なプロジェクトとリターンを作れるかどうかが、クラウドファンディングでの資金調達の成否を分けます。プロジェクトやリターンがどんなに魅力的でも、プロモーションが悪ければ、その存在を出資者たちに知ってもらえません。
担当者からのアドバイスを受けられるとはいえ、ある程度のスキルや知識は必要です。プロジェクト・リターンの設定からプロモーションまで、とにかく手間と時間がかかる方法でもあります。
また、クラウドファンディングには「All or Nothing」と「All In」の2種類があります。どちらも集めたい資金の目標額を設定しますが、「All or Nothing」では集まった資金が目標額に届かないと資金を受け取れません。たとえば目標額が100万円なら、たとえ99万9,999円が集まっていても、1円も資金を受け取れないのです。
「All In」なら集まった分の資金は受け取れますが、目標額の達成・非達成にかかわらず、プロジェクトを必ず実行しなければなりません。たとえば100万円の目標に対して10万円しか集まらなかった場合でもプロジェクトを実行しなければならず、資金不足に陥るリスクがあります。
返済不要の資金調達4.資産の売却
使わない設備や遊休地などの資産を売却し、資金に換える方法です。
メリット
- 完全に返済不要である
- 不用品の整理もできる
- 比較的早く資金調達できる
使わなくなった設備や不動産を売却するだけなので、返済不要なのはもちろん、出資のように自由に経営できなくなるリスクもありません。
資金調達と同時に不用品を整理できるメリットもあります。特に不動産の場合は固定資産税がかからなくなるため、キャッシュフローの改善にもつながるでしょう。
返済不要の方法の中では資金調達のスピードが早く、ファクタリングと同程度の時間と手間で現金を得られます(売却する資産にもよります)。
デメリット
- 調達できる金額が限られる
- 不動産などは売却に時間がかかる
- 売却したものが後で必要になることも
資産を売却するという性質上、この方法で調達できる金額は限られます。設備や社用車などは比較的早く売れますが、調達できる金額が小さいです。不動産のような資産は高額で売却できますが、買い手が見つかるまでに時間がかかるでしょう。
売却したものが後から必要になり、業務に支障が出たり、買い戻しに費用がかかったりするリスクもあります。売却する資産の選定は慎重に進めましょう。
返済不要の資金調達5.ファクタリング
ファクタリングは設備や不動産ではなく「売掛債権」を売却する方法です。ファクタリング会社に売掛債権を売却(譲渡)し、売掛金の範囲内で、本来の支払期日よりも早く資金を手にできます。
メリット
- 最短即日で資金調達ができる
- バランスシート上の負債が増えない
- 自社の信用に不安があっても利用しやすい
ファクタリングは売掛債権を譲渡し、その金額内で資金調達をする方法です。わかりやすくいうと、請求書に書かれた金額を、そこに書かれた支払期日よりも早く現金化できます。
たとえば自社が「手元に100万円分の売掛金があるが、支払期日は翌月末。しかし、1週間後に30万円の支払いをしなければならない」といった状況だとしましょう。自社には現金がないものとします。
この場合、100万円の売掛金のうち30万円をファクタリングすることで、最短即日で現金を調達できます。売上の大部分が売掛金という事業者なら、まとまった金額をスピーディに調達できるでしょう。
ファクタリングには実質返済がありますが、売掛債権の譲渡であり借り入れではないため、バランスシート上の負債は増えません。そのため、近い将来融資の審査を受ける予定があっても、安心して利用できるでしょう。
また、ファクタリングの審査では自社よりも、売却する売掛債権の請求先(取引先)の信用が重視されます。ファクタリング会社にとっては買い取った債権を期日どおりに回収することが重要なので、審査で見られるのは主に「その取引先の信用度はどうか」「これまで期日どおりに振り込みが行われてきたか」です。そのため、融資は審査落ちで利用できなくとも、ファクタリングなら利用できることが多いです。
デメリット
- 厳密には返済不要といえない
- 調達できる金額が限られる
- 分割払いができない
ファクタリングで売却した売掛債権は、本来の支払期日になり売掛金が振り込まれたら、「売却した額+手数料」の金額でファクタリング会社に支払わなければなりません。債権の譲渡であるため「返済」という言葉は使われず、バランスシート上の負債も増えませんが、実質的には返済不要とはいえません。
また、ファクタリングは売掛債権の売却であるため、売掛金以上の資金は調達できません。手数料の支払いを考えると、ファクタリングで調達できる金額は、売掛金の7~8割ほどになるでしょう。
なお、ファクタリングでは分割払いができません。分割払いを認めると貸し金の扱いになってしまうからです。
長期の返済が必要ないこと、審査と入金がスピーディなことから、突発的な資金調達に特化した方法といえます。
ファクタリングの仕組みやおすすめのサービスを知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
SNSの返済不要の資金調達には要注意
最近、SNSで返済不要の資金調達を宣伝する投稿が増えています。宣伝される資金調達の方法はさまざまですが、不特定多数の人を介するものが多く、手間がかかるうえリスクが高いです。
運営元がいわゆるヤミ金であったり、詐欺まがいのサービスであることも多く、このようなものは利用しない方が良いでしょう。返済不要と謳っているのに返済を求められたり、担保として渡した資金を騙し取られたりするリスクがあります。
補助金・助成金以外の返済不要の資金調達にはリスクがある
補助金・助成金は別として、資金調達にはある程度のリスクがあります。たとえば融資なら金利を支払わなければならず、長期的な返済が経営を圧迫するかもしれません。返済不要の資金調達でも、出資なら経営権を握られてしまうリスクが、クラウドファンディングなら目標額を達成できずかけた時間と手間が水の泡になるリスクがあります。
資金調達を考える際、まずは利用できる補助金・助成金がないか探してみましょう。そのうえで、足りない資金をほかの方法で調達すればいいのです。
【番外編】資金調達と同時に検討したいおすすめのビジネスクレカ3選
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