注文書ファクタリングとは、案件の受注時点で「将来発生する予定の売掛金」を現金化できるサービスです。本記事では注文書ファクタリングと通常のファクタリングの違いや適した業界・業種、おすすめサービスを紹介。審査クリアのコツやサービスの選び方も解説します。
注文書ファクタリングとは?
注文書ファクタリングとは、受注した案件を本来よりも早く現金化できるサービスです。
たとえばシステム開発会社が100万円分の開発案件を受注したとしましょう。この案件は規模が大きく、納期が5ヵ月先、請求ができるのも5ヵ月先だとします。納品・請求の翌月末が支払期日なら、案件の報酬が振り込まれるのは半年先です。
こんなとき、注文書ファクタリングを利用することで、半年後に入るはずの100万円のうち何割かを、すぐに現金化できます。
受注から納品・請求までが長く、資金不足や黒字倒産のリスクが高いときにおすすめにサービスです。
通常の買取ファクタリングとの違い
注文書ファクタリングと通常の買取ファクタリングでは、債権を現金化するタイミングと、審査に必要な資料が違います。
通常のファクタリングでは商品やサービス(役務)を納品し、請求書を出した、確定済みの売掛債権を売却します。そのため、審査では売掛債権の金額や支払期日などが書かれた請求書が必要です。
一方、受注した案件を現金化する注文書ファクタリングでは、将来発生する予定の売掛金を現金化します。当然、案件の受注時点では請求書はないため、審査では注文書や発注書などの資料を使います。
通常のファクタリングでは本来の支払期限よりも1ヵ月ほど早く資金調達ができるのに対し、注文書ファクタリングでは半年ほど早く資金調達できることが多いです。
注文書ファクタリングに適した業界・業種
注文書ファクタリングは、案件の受注から納品・請求までが長い業界・業種、特に大型案件に適しています。具体的には、次のような業界・業種の企業、フリーランスなどにおすすめです。
- 建設業
- IT業界(特にシステム開発系)
- ブックライター
- デザイナー など
建設業やシステム開発などでは大型の案件も多く、受注から納品・請求までに数ヵ月かかることも珍しくありません。フリーのエンジニアやデザイナーなどでも、大規模な開発や製作では、作業そのものはもちろん関係各所による確認にも時間がかかるでしょう。ライター系の職種は納品・請求までにあまり時間がかかりませんが、ブックライターのような職種ならその限りではありません。
クライアントによっては、大型案件では「報酬の半分を先渡し」「小分けにして月ごとに支払ってくれる」ということもあるでしょう。しかし、すべてのクライアントがこのような対応をしてくれるとは限りません。大企業や硬めの会社から請け負った案件ほどこのような融通は利きづらく、注文書ファクタリングが役立つでしょう。
注文書ファクタリングのメリット
注文書ファクタリングの3つのメリットを、通常の買取ファクタリングやほかの資金調達方法と比較しながら3つ紹介します。
受注した時点で資金調達ができる
注文書ファクタリングの1つ目のメリットは、「受注した時点で資金調達ができる」ことです。
通常のファクタリングでは1~2ヵ月先に入る予定の売掛金を現金化できますが、注文書ファクタリングなら、一般的に半年先までの請求をすぐに現金化できます。大型案件に集中するためのつなぎ資金の調達、黒字倒産の回避などに役立つでしょう。
売掛先に知られずに利用できる
注文書ファクタリングの2つ目のメリットは、「売掛先に知られずに利用できる」ことです。
ファクタリングには利用者とファクタリング会社の2社で契約を結ぶ「2社間ファクタリング」と、ここに売却する債権の売掛先を加えた3社で契約を結ぶ「3社間ファクタリング」があります。このうち2社間ファクタリングでは売掛先への通知が必要なく、ファクタリング利用が知られることもありません。
一般的に、注文書ファクタリングは売掛先への通知がいらない2社間の契約となります。クライアントから悪印象をもたれる心配はありません。
売掛先の倒産・不払いへのリスクヘッジにもなる
注文書ファクタリングの3つ目のメリットは、「売掛先の倒産・不払いへのリスクヘッジにもなる」ことです。
ファクタリングは債権の譲渡であるため、売掛金の回収に関する責任やリスクも、利用者からファクタリング会社に移動することになります。そのため、売掛先が自社に報酬を支払ってくれなかった場合、ファクタリング会社への支払いを自社で補填する必要はありません。
ちなみに、2社間ファクタリングは利用者が売掛先から売掛金を回収し、ファクタリング会社に支払うという流れを取りますが、これはファクタリング会社と利用者で「売掛金の回収業務の委託契約」を結んでいるからです。売掛先にファクタリング利用を通知しない2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社から売掛先企業に請求をすることができません。そのため、本来はファクタリング会社が行うべき請求・回収業務を利用者に委託するという形を取っているのです。
注文書ファクタリングのデメリット
注文書ファクタリングは通常の買取ファクタリングよりも早期に資金調達ができますが、それ以外の点では通常の買取ファクタリングに劣る点も多いです。注文書ファクタリングの3つのデメリットを紹介します。
通常のファクタリングよりも手数料が割高
注文書ファクタリングの1つ目のデメリットは、「通常のファクタリングよりも手数料が割高」なことです。
通常の買取ファクタリングでは商品やサービス(役務)を提供済みの、すでに確定した売掛債権を売却します。一方、注文書ファクタリングでは「将来発生するであろう売掛債権」を扱うため、ファクタリング会社にとっての「買い取った注文書(将来の売掛金)を回収できないリスク」が大きいです。
もちろん、通常の買取ファクタリングでも売掛先の倒産や不払いなどによる未回収リスクはあります。しかし、売掛債権がまだ確定していないという点は買取を行うファクタリング会社にとって大きなリスクです。
注文書ファクタリングはファクタリング会社のリスクが大きい分、かかる手数料も割高です。
通常のファクタリングよりも審査が厳しい
注文書ファクタリングの2つ目のデメリットは、「通常のファクタリングよりも審査が厳しい」ことです。
先述の通り、注文書ファクタリングは通常のファクタリングよりもファクタリング会社にとってのリスクが大きいです。そのため、通常のファクタリングよりも審査は厳しくなります。
提供会社が少ない
注文書ファクタリングの3つ目のデメリットは、「提供会社が少ない」ことです。
最近は少しずつ増えてきましたが、注文書ファクタリングはまだあまり一般的ではありません。サービスを提供する会社が少ないため、通常のファクタリングよりも選択肢は少なくなります。
注文書ファクタリングを選ぶ5つのポイント
手数料や何ヵ月先の注文書を現金化できるかなど、注文書ファクタリングを選ぶ5つのポイントを紹介します。
ポイント1.手数料率
注文書ファクタリングを選ぶ1つ目のポイントは「手数料率」です。
通常の買取ファクタリングの手数料率は、2社間で8~18%、3社間で2~9%ほどが相場といわれています。一方、注文書ファクタリングは5~20%ほどの手数料がかかることもあり、通常のファクタリングよりもコストが高くなりがちです。
まずは公式HPに書かれている手数料の目安や上限を確認すること、そのうえで複数社から見積もりを取り、実際の手数料を比較することが大切です。
ポイント2.償還請求権なし(ノンリコース)
注文書ファクタリングを選ぶ2つ目のポイントは「償還請求権なし(ノンリコース)」であることです。
償還請求権ありの契約だと、売掛先の倒産や不払いなどにより売掛金を回収できなかった場合でも、利用者からファクタリング会社への支払いをしなければなりません。この場合、売却した債権の買い戻しが求められることになるでしょう。
しかし、償還請求権なしであれば、このリスクはありません。売掛金が回収不能になった場合、利用者がファクタリング会社に補填する必要はありません。
ポイント3.審査通過率
注文書ファクタリングを選ぶ3つ目のポイントは「審査通過率」です。
ファクタリング会社の公式HPには審査通過率が書かれていることもあります。手数料の目安・上限や必要書類と併せてチェックしておきましょう。
ただ、審査通過率はあくまでも数値データであり、自社が審査に通るかどうかは実際に審査を受けてみるまでわかりません。審査通過率の高いサービスから優先的に申し込みをするのはいいですが、「審査通過率が低いから申し込まない」というのはおすすめできません。
ポイント4.何ヵ月先の注文書を現金化できるか
注文書ファクタリングを選ぶ4つ目のポイントは「何ヵ月先の注文書を現金化できるか」です。
一般的に、注文書ファクタリングは納品・請求が半年先までの注文書を売却できます。ただ、サービスごとに何ヵ月先の注文書を現金化できるのかが異なることもあります。現金化しようと思っている注文書を利用できるのか、公式HPからチェックしておきましょう。
ポイント5.運営会社の信用度・評判
注文書ファクタリングを選ぶ5つ目のポイントは「運営会社の信用度・評判」です。
ファクタリングは日本ではまだあまり浸透していないサービスです。最近は取締りにより少なくなりつつありますが、ファクタリングを装った違法なサービス、利用者に不利な契約を結ばせようとする悪質なサービスも、まだ残っているかもしれません。
サービスや運営会社の名前で検索するなど、口コミや評判、運営会社の信用度を調べるようにしましょう。
注文書ファクタリングの審査をクリアするコツ
注文書ファクタリングは通常の買取ファクタリングと比べ、審査が厳しいです。ただ、審査をクリアするコツは通常のファクタリングとそう変わりません。通常の買取ファクタリング・注文書ファクタリングに共通する、審査クリアの3つのコツを紹介します。
売掛先との取引期間が長い
ファクタリングで売却する債権・注文書は、なるべく取引期間が長い売掛先へのものを選びましょう。取引期間が長い売掛先ほど、ファクタリング会社にとっての回収不能・回収遅れのリスクが低いからです。
売掛先が法人で、信用度が高い
ファクタリングでは個人事業主への債権は売却しづらいです。特に注文書ファクタリングは、個人事業主への注文書は買取不可としているサービスも多いです。
注文書ファクタリングでは法人で、信用度が高い売掛先への注文書を選びましょう。具体的には次のような売掛先が審査に通りやすいです。
- 取引期間が長い
- 支払い遅れがない
- 企業規模が大きい
- 認知度が高い
- 創業からの年月が長い
- 会社HPがある、作り込まれている など
取引が安定しているエビデンスを示す
何度もいうように、ファクタリング会社にとって最大のリスクは買い取った債権が回収不能になること、次点で回収が遅れることです。ファクタリング会社にとってのリスクを抑えるほど審査には通りやすくなるでしょう。
そのために、売却する債権や注文書の請求先(取引先)との取引が安定しているエビデンスを示せると良いです。審査の資料として、このようなエビデンスが必要になるサービスもあります。
具体的には取引先とのやり取りをしているメールやビジネスチャットのスクリーンショット、振込み用口座の通帳などがあるといいでしょう。
注文書ファクタリングのおすすめ5選
ビートレーディング
- 2社間・3社間・注文書ファクタリングに対応
- ファクタリング業界の老舗企業
- 融通が利き利用しやすい
ビートレーディングはファクタリング業界の老舗企業として有名です。2社間・3社間の両方に対応し、注文書ファクタリングの提供もいち早く始めました。
最低3万円の買い取り実績があり、小額でも利用しやすいでしょう。「はじめてで利用できるか不安」「金額が低くて他社に断られた」といったケースでも、担当者が親身になって相談にのってくれるため安心です。
初めてファクタリングを利用する人におすすめのサービスです。
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
2社間:4~12% 3社間:2~9% ※目安 | 買い取り可能額の制限なし。 最安:3万円の買取実績あり 最高:7億円の買取実績あり | 個人事業主の利用:可 2社間:〇 3社間:〇 注文書ファクタリング:〇 |
ビートレーディングの料金・主な機能
BESTPAY
・仕事着手前の資金化が可能
・発注者の承諾が不要
・ノンリコースのため安心
BESTPAYは、注文書・受注書受領時点から利用可能で、納品前より格段に早い段階での資金化を可能にする注文書ファクタリングサービスです。「ヒアリング・書類の提出・ご契約後お振込み」の3STEPで、注文書の買取後は最短翌日から3営業日以内に入金されます。
サービス利用前に買取手数料のシミュ―レーションが可能であることや、万が一買取った債権が回収不能になった場合に補償を求められることがないことから、安心してご利用いただけます。
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
下限:5% 上限:要問い合わせ | 下限:100万円 上限:3億円程度 | 個人事業主の利用:可 2社間:〇 3社間:〇 注文書ファクタリング:〇 |
トップ・マネジメント
・買取対象は、見積書・受注書・発注書 のいずれか1点
・全国どこからでもオンライン手続きで最短即日入金OK
・売掛先への利用通知がない安心の2社間取引
トップマネジメントは、見積書・受注書・発注書のいずれか1点のみでファクタリングが実行できる金融サービスです。契約はトップ・マネジメントと利用者の2社間で行われるため、外部に知られることなく資金を調達することが可能です。
また専用口座を売掛金の振込先へ変更した場合には、利用手数料を通常よりも減額させることが可能です。
24時間オンラインでの申し込み・相談を受け付けているため、日中は忙しくて手が回らないという方にもおすすめです。
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
下限:1.8% 上限:12.5% | 下限:30万円 上限:3億円 | 個人事業主の利用:不可 2社間:〇 3社間:〇 注文書ファクタリング:× |
GMO BtoB 早払い
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
下限:1% 上限:12% | 下限:100万円 上限:1億円 | 個人事業主の利用:不可 2社間:〇 3社間:〇 注文書ファクタリング:〇 |
けんせつくん
・最短2時間でお振込み
・完全オンライン手続き
・受注時の注文書でも可能
けんせつくんは、建築業界の多くの方が抱えている資金繰りに関する不安を解消する、建設業界専門のファクタリングサービスです。
発注時の注文書または入金待ちの請求書をけんせつくんが買い取り、最短2時間で資金化する事が可能です。
建設業界ならではの事情も考慮されるため、他のサービスで審査に落ちてしまった場合にもけんせつくんであればファクタリングが可能になるかもしれません。
顧客満足度が94%を記録していることや、メールまたはLINEからもお申込みができることもポイントです。
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
下限:5% 上限:要問い合わせ | 下限:要問い合わせ 上限:要問い合わせ | 個人事業主の利用:可 2社間:〇 3社間:要問い合わせ 注文書ファクタリング:〇 |
注文書ファクタリングは黒字倒産の回避、大型案件に集中したいときにおすすめ
案件を受注した時点で現金化できる注文書ファクタリングは、大型案件の納品・請求までのつなぎ資金を調達するのに最適です。黒字倒産の回避はもちろん、つなぎ資金のための小口案件を請けず、大型案件に集中したいときにもおすすめできます。
ただ、注文書ファクタリングは中将の買取ファクタリングと比べて手数料が割高で、審査も厳しいです。本記事で紹介したコツを意識して、まずは先述の5社から見積もりを取ってみましょう。
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