ファクタリングとは?仕組みをわかりやすく解説
ファクタリングとは売掛債権をファクタリング会社に譲渡(売却)し、本来の支払期日よりも早く現金化するサービスです。16世紀のイギリスで発祥し、アメリカで発展した後、1970年ごろに日本に入ってきたといわれています。
ファクタリングの仕組みがわかりやすいよう、ひとつの例を挙げて解説しましょう。手元に100万円の売掛債権があり、その支払期日は翌月末だと考えてください。しかし、自社には1週間後に30万円の支払いがあり、そのための現金はないとします。
こんなときに役立つのがファクタリングです。この場合、100万円の売掛債権のうち30万円分をファクタリング会社に売却し、1週間後の支払いに必要な現金を手に入れます。本来の支払期日になり取引先から自社に100万円が振り込まれたら、自社はファクタリングした30万円に手数料を加えた額をファクタリング会社に支払います。
3種類のファクタリング
ファクタリングは大きく3種類に分けられます。どれも「売掛債権を譲渡し現金化するサービス」であることは同じですが、それぞれ適したケースや用途が異なります。
買取ファクタリング
一般的にただ「ファクタリング」とだけ言う場合、この「買取ファクタリング」を指します。先述した「売掛債権を売却し、その一部を早めに現金化するサービス」が買取ファクタリングです。
買取ファクタリングでは売掛債権の金額や支払期日などを確認するために、「請求書」を使います。請求書に書かれた売掛金の額のうちいくらかを、そこに書かれた本来の支払期日よりも早く現金化します。
注文書ファクタリング
売掛債権を早めに現金化するファクタリングでは、商品やサービス(役務)などを提供し、取引先に請求済みの売掛金を現金化します。
しかし、受注から納品・請求までに時間がかかる案件もあるでしょう。たとえばシステム開発会社やフリーのエンジニアなどでは、「受注から納品・請求までに半年ほどかかる大型案件」も珍しくありません。
受注から納品・請求までの間の資金が足りずに大型案件の受注を見送ったり、受注から納品・請求までが早い小口の案件でつなぎ資金を確保しなければならず、大型案件に集中できなかったりということもあるでしょう。
こんなときに役立つのが注文書ファクタリングです。受注済みの案件を早めに現金化できるサービスで、「注文書に書かれた、納品後に請求するであろう金額」の一部をファクタリングできます。
注文書ファクタリングは通常の買取ファクタリングと異なり、確定した売掛債権ではなく、将来発生するであろう売掛債権を現金化します。そのため、通常の買取ファクタリングよりも審査は厳しく、現金化できる額も小さくなりやすいです。
しかし、受注時点で現金化しつなぎ資金を確保することには、「大型案件に集中できる」というメリットがあります。
保証ファクタリング
「つなぎ資金の調達」が主な目的の買取ファクタリング・注文書ファクタリングと異なり、保証ファクタリングは「リスクヘッジ」が目的のサービスです。
注文書ファクタリングでもファクタリング会社に売掛債権を譲渡し、現金化してもらいますが、それは「売掛先の倒産などにより、売掛金が回収不能になった場合」です。先述2つのファクタリングが資金調達のためにすぐに売掛債権を現金化するのに対し、注文書ファクタリングは売掛金の回収不能に対する保証として機能します。
【図解付き】買取ファクタリングの仕組み
買取ファクタリングは契約形態により、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」に分けられます。それぞれの仕組みを図解つきで解説します。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングはファクタリングの利用者とファクタリング会社の「2社間」で契約を結びます。
売却する売掛債権の売掛先(利用者にとっての取引先)にファクタリング利用を知らせずに済むため、「ファクタリングって怪しいサービスじゃないの?」「割高な手数料を支払ってでもファクタリングをするなんて、資金繰りが厳しいのでは?」のような悪印象をもられる心配がありません。
取引先に債権譲渡の承諾を取る必要もなく、ファクタリングの申し込みから現金化までのスピードも早いです。
ただし、ファクタリング会社への手数料は8~18%が相場といわれており、3社間よりも割高です。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社の2社に、売掛先(取引先)を加えた「3社間」で契約を結びます。
利用者は取引先に売掛債権をファクタリング会社に譲渡(売却)する承諾を取らなければなりません。そのため、取引先とのやり取りにかかる時間の分だけ、資金調達にかかる時間も長くなります。
ただし、ファクタリング会社にとっての「買い取った売掛債権を回収できないリスク」が低くなるため、手数料も低くなります。2社間ファクタリングの手数料が8~18%が相場といわれているのに対し、3社間では2~9%が相場といわれています。
ここからは、ファクタリングのメリット・デメリットを解説します。
ファクタリングで資金調達するメリット5つ
ファクタリングは申し込みから入金までが早く、突然資金が必要になったケースに適しています。その理由を、ファクタリングで資金調達する5つのメリットと併せて解説します。
メリット1.まとまった資金をほぼ即日で調達できる
ファクタリングで資金調達する1つ目のメリットは、「まとまった資金をほぼ即日で調達できる」ことです。
ファクタリングでは売掛金の最大7~8割ほどをすぐに現金化できます。申し込みから入金までのスピードは早く、2社間ファクタリングなら最短即日で資金調達ができるでしょう。
そのため、突然支払いが必要になったときや事業拡大のチャンスが訪れたときなど、「いかに早く資金を集めるか」がカギとなる場面で役立ちます。
メリット2.審査が緩やか
ファクタリングで資金調達する2つ目のメリットは、「審査が緩やか」ことです。
ファクタリングの審査では、自社よりも売却する債権の売掛先(取引先)の信用度が重視されます。「自社の信用度に不安がある」「審査落ちで融資を受けられない」などのケースでも、審査をクリアできるケースが多いです。
ファクタリングの審査に通りやすいのは、次のような取引先への売掛債権です。
- 取引期間の長い売掛先
- 信用度の高い売掛先
- 法人の売掛先(個人事業主ではない売掛先) など
メリット3.個人事業主でも利用しやすい
ファクタリングで資金調達する3つ目のメリットは、「個人事業主でも利用しやすい」ことです。
ファクタリングでは自社よりも売掛先の信用度が重視されるため、個人事業主でも利用しやすいです。「個人事業主への売掛債権」は審査に通りにくいですが、自社が法人か個人事業主かはあまり重要ではありません。
個人事業主NGのサービスもありますが、OKのサービスの方が多いです。
メリット4.バランスシート上の負債が増えない
ファクタリングで資金調達する4つ目のメリットは、「バランスシート上の負債が増えない」ことです。
ファクタリングは売掛債権を譲渡し、資金を調達する仕組みであり、融資のような「借り入れ」ではありません。そのため、バランスシート上の負債は増えません。
バランスシート上の負債が増えると、融資を受ける際の審査で不利になってしまいます。近い将来融資を受ける予定があっても、ファクタリングは利用しやすいでしょう。
メリット5.売掛金の回収不能へのリスクヘッジになる
ファクタリングで資金調達する5つ目のメリットは、「売掛金の回収不能へのリスクヘッジになる」ことです。
一般的にファクタリングはノンリコース(償還請求権なし)であり、売却した売掛債権が回収できなかったとしても、それを自社が補填する必要はありません。ファクタリング会社に売却した売掛債権の回収義務はファクタリング会社にあり、回収不能になったからといって、債権の買い戻しを求められることはありません。
ただ、ファクタリングを装ったヤミ金業者や悪質サービスもあります。このようなサービスでは債権の買い戻しを求められるリスクもあり、避けるべきです。
ファクタリングの契約を結ぶ前に、その契約がノンリコース(償還請求権なし)であることを確認しましょう。
ほかの資金調達と比べたファクタリングのデメリット3つ
ファクタリングは突発的な資金調達に適したサービスです。つなぎ資金の調達や黒字倒産のリスクヘッジなどにはおすすめできますが、それ以外のケースでは使いづらいかもしれません。
その理由を、ほかの資金調達と比べたファクタリングのデメリットと併せて解説します。
デメリット1.手数料が割高
ほかの資金調達と比べたファクタリングのデメリット1つ目は、「手数料が割高」なことです。
ファクタリングの手数料は2社間ファクタリングで8~18%、3社間ファクタリングで2~9%が相場といわれていますが、法律による上限はありません。そのため、手数料率がこの範囲を超えることもあるでしょう。
一方、融資の金利は1~6%ほどが相場といわれています。金利が高いノンバンクからの融資でも、上限金利の定めがあるため、利率20%を超えることはありません。
デメリット2.分割払いできない
ほかの資金調達と比べたファクタリングのデメリット2つ目は、「分割払いできない」ことです。
ファクタリングはお金の借り入れではないため、分割払いができません。ファクタリングで調達した資金は、売掛金が振り込まれたら一括で支払わなければなりません。そのため、新規事業を起こしたり新規店舗を開いたりなど、長期目線での資金調達には適さないでしょう。
「分割払いOKのファクタリング」を謳うサービスもありますが、ファクタリングを装った違法業者、ヤミ金の可能性が高いです。このようなサービスは避けた方がいいでしょう。
デメリット3.売掛金の範囲でしか資金調達できない
ほかの資金調達と比べたファクタリングのデメリット3つ目は、「売掛金の範囲でしか資金調達できない」ことです。
ファクタリングは売掛債権を早めに現金化するサービスであるため、売掛金の範囲内でしか資金調達ができません。手数料を考えると、売掛金の7~8割が調達できる金額の限度でしょう。
ただ、複数の売掛債権を合算して売却することはできます。たとえば70万円の売掛債権と30万円の売掛債権があるなら、合算した100万円の7~8割、70万~80万円ほどが調達できる金額の限度になるでしょう。
ファクタリングの審査をスムーズに進めるコツ
ファクタリングは融資や出資、補助金・助成金などと比べてスピーディに資金調達ができます。しかし、必要書類や審査クリアのコツを知らないと、資金調達にかかる時間は長くなるでしょう。
ファクタリングの審査をスムーズに進めるコツ、安心して利用できるサービスを見極めるためのチェックポイントを紹介します。
まずは主な必要書類を確認しよう
一般的に、ファクタリングの審査では次のような書類・資料が必要になります。
書類・資料 | 提出タイミング | 備考・具体例 |
請求書 | 毎回 | 取引期間が長く支払い遅れがない、 法人が売掛先の請求書が審査に通りやすい。 |
通帳 | 毎回 | 売却しようとする債権の売掛先からの、 直近3ヵ月分の入金が記載された通帳が好ましい。 |
取引のエビデンス | 毎回 | 取引が本当に行われていることを証明するために必要。 ビジネスチャットやメールのやり取りを スクリーンショットするなどして用意する。 |
本人確認書類 | 初回 | 代表者の顔写真付きの本人確認書類。 運転免許証が使いやすく、 次点でマイナンバーカードがおすすめ。 |
各種証明書 | 初回 | ・売掛先との基本契約書 ・納税証明書 ・印鑑証明書 ・直近の決算資料(法人) ・登記簿謄本(法人) ・直近の確定申告書(個人事業主) ・開業届(個人事業主) など |
これらはあくまで「一般的に必要となる書類」です。必要書類は申し込むサービスにより異なるので、公式HPを確認したり問い合わせたりしてみましょう。
審査に通りやすい売掛債権(請求書)は?
ファクタリングでは売却する売掛債権の売掛先(自社にとっての取引先)の信用度が重視されます。社会的信用度が高い売掛先、自社との取引が長く売掛金が回収不能になるしすくが低い売掛先への債権が、審査に通りやすいでしょう。
具体的には、次のような売掛先が審査をクリアしやすいです。
- 取引期間が長い売掛先
- 支払い遅れがない売掛先
- 社会的信用度が高い売掛先
- 自社HPがある、作り込まれている売掛先
- 法人(個人事業主ではない)の売掛先 など
契約書のチェックポイントはここ!
ファクタリング自体は違法性のない、安心して利用できるサービスです。しかし、日本ではファクタリングがまだあまり浸透しておらず、融資と異なり手数料の上限も決まっていません。この状況を悪用しファクタリングを装う違法業者、悪質なサービスもあります。
このような違法業者、悪質なサービスを見抜くために、契約書の内容をしっかりチェックしましょう。次のようなサービスは避けた方が無難です。
- 償還請求権ありの契約
- 手数料率が相場を大きく超えている
- 事前の見積もりと契約書で手数料が異なる
- 手数料の内訳が不明瞭
- 契約期間の定めがあり、利用を一度でやめられない など
審査が甘く手数料が安いサービスは?
審査の甘さや手数料率だけでサービスを選ぶのは、あまりおすすめできません。先述の通り、ファクタリング会社の中には「ファクタリングを装った違法業者」もあるからです。
ファクタリングを利用する際、まずはこのような違法業者に引っかからないようにすることが大切です。まずは信用できる会社を候補としてピックアップし、「審査をクリアしやすい」「必要書類が少ない」「手数料が安い」などの観点で比較をしましょう。
次からは、審査が甘く手数料が低めの、信用できるファクタリング大手3社を紹介します。
【安心・スピーディ】ファクタリング会社の大手3社を紹介
ファクタリングの利用が初めてなら「ビートレーディング」
- 2社間・3社間・注文書ファクタリングに対応
- ファクタリング業界の老舗企業
- 融通が利き利用しやすい
ビートレーディングはファクタリング業界の老舗企業として有名です。2社間・3社間の両方に対応し、注文書ファクタリングの提供もいち早く始めました。
最低3万円の買い取り実績があり、小額でも利用しやすいでしょう。「はじめてで利用できるか不安」「金額が低くて他社に断られた」といったケースでも、担当者が親身になって相談にのってくれるため安心です。
初めてファクタリングを利用する人におすすめのサービスです。
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
2社間:4~12% 3社間:2~9% ※目安 | 買い取り可能額の制限なし。 最安:3万円の買取実績あり 最高:7億円の買取実績あり | 個人事業主の利用:可 2社間:〇 3社間:〇 注文書ファクタリング:〇 |
手数料が安くて入金が早い「PayToday」
- AIによるスピーディな審査・入金
- 手数料は上限9.5%で安心
- 小規模事業者も利用しやすい
PayTodayは手数料の低さ、スピーディな審査・入金が特徴のサービスです。手数料率は1~9.5%と明記されています。この9.5%は目安ではなく上限なので、これ以上の手数料がかかることはありません。
AIを活用した審査も特徴で、提出した情報・書類をもとに買取可否を判定。最短15分、長くても24時間以内には審査結果がわかります。即日振込に力を入れるサービスで、最短30分での入金を行っています。
ベンチャー企業やスタートアップ、中小企業、個人事業主などの小規模事業者による利用が多く、誰でも気軽に申し込みができるのも魅力です。
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
2社間:1~9.5% | 下限:10万円 上限:なし | 個人事業主の利用:可 2社間:〇 3社間:× 注文書ファクタリング:× |
必要書類が少ない「QuQuMo」
- 必要書類は2つだけ
- 買取可能額の制限なし
- 最短10分で申し込み可能
QuQuMoは手軽に申し込みができるファクタリングです。必要書類は通帳と請求書の2点のみ、申し込みにかかる時間は10分ほどと、初めてでも利用しやすいでしょう。
買取可能額の制限がなく、小額から利用できるため、個人事業主やフリーランスにもおすすめできます。
手数料 | 買い取り可能額 | 対応サービス |
1%~ | 下限:要問い合わせ 上限:なし | 個人事業主の利用:可 2社間:〇 3社間:× 注文書ファクタリング:要問い合わせ |
ファクタリングに関するよくある質問
ファクタリングに関するよくある質問・疑問にQ&A形式で答えます。
Q1.ファクタリングは違法ではないのですか?
債権の譲渡は「民法第466条」で、次のように認められています。
(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
出典:民法 | e-Gov法令検索
ファクタリングそのものに違法性はありません。ただ、ファクタリングを装った違法業者がいるのは事実です。そのような業者の見分け方は、こちらの記事で解説しています。
Q2.ファクタリングは請求書なしでも利用できる?
ファクタリングの審査では、ほぼ確実に請求書が求められます。請求書には売掛金の金額や支払期日が記載されているからです。
ただ、サービスや事情によっては請求書なしで利用できるかもしれません。特別な事情があり請求書が用意できない場合は、電話やメールでそれを説明し、請求書なしでファクタリングを利用できないか問い合わせ・相談してみるといいでしょう。
Q3.ファクタリング以外で即日で資金調達するには?
ファクタリング以外で即日で資金調達をする方法として、次のようなものが挙げられます。
- ビジネスローン
- 手形割引
- 知人・友人からの借り入れ
- 不要資産の売却 など
急な資金調達にはファクタリングがおすすめ!個人事業主でも利用しやすく、つなぎ資金の調達に最適
ファクタリングは手数料こそ割高なものの、申し込みから入金までがスピーディです。審査が緩やか、自社よりも取引先の信用度が重視されるという特徴もあり、法人はもちろん個人事業主にとっても利用しやすいでしょう。
スピーディに資金調達ができるファクタリングは「つなぎ資金の調達」に最適です。「十分な売上はあるのに、そのほとんどが売掛金であり、手元の資金が足りない」というケースにも適していて、黒字倒産の回避にも役立ちます。
ただ、ファクタリングで現金化できるのは「商品やサービスを納品済みの、すでに確定した売掛金」のみです。システム会社やフリーのエンジニア、建設会社などの「受注から納品・請求までが長い業界・業種」では、通常のファクタリングだと資金調達が間に合わないかもしれません。
このようなケースでは通常の買取ファクタリングではなく、「注文書ファクタリング」がおすすめです。
注文書ファクタリングの詳細やおすすめサービスはこちらの記事で紹介しています。「大型案件を受注したが、納品・請求までに時間がかかり資金不足が心配」という方はぜひお読みください。
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