売掛金とは、商品やサービスを提供して売上を計上したものの、まだ取引先から受け取っていない代金のことです。
たとえば、10万円の商品を販売し、代金を翌月末に受け取る場合、売上を計上してから入金されるまでの10万円が売掛金になります。
売掛金は企業にとって将来受け取る予定のお金であり、貸借対照表では資産として扱います。一方、売上が発生していても実際に入金されるまでは手元の現金は増えません。そのため、売掛金の回収が遅れると、利益が出ていても資金繰りが悪化する可能性があります。
本記事では、売掛金の意味や仕訳方法、買掛金・未収入金との違い、回収・消込の流れ、未回収を防ぐ管理方法までわかりやすく解説します。
売掛金とは?本業の売上で発生する未回収代金
売掛金とは、本業の商品販売やサービス提供によって発生した売上のうち、まだ代金を回収していない金額です。
企業間取引では、商品を販売するたびに現金で決済するのではなく、一定期間の取引をまとめて後日支払う「掛取引」が一般的に行われています。
たとえば、次のような取引です。
- 4月10日:商品を10万円で販売
- 4月30日:請求金額を確定
- 5月31日:取引先から10万円が入金
この場合、売上を計上した後、5月31日に入金されるまでの10万円を売掛金として管理します。
売掛金は単なる「未払いのお金」ではありません。企業が取引先に対して持つ代金を受け取る権利=債権の一つです。
売掛金は資産に分類される
売掛金は、将来現金として回収する予定の債権であるため、貸借対照表では流動資産に分類されます。
貸借対照表では、現金や預金などと同じ資産側に表示されます。
ただし、売掛金が多いからといって、必ずしも手元資金が豊富とは限りません。
たとえば売上が1,000万円あっても、その大半が売掛金として残っていれば、仕入代金や人件費、税金などを支払うための現金が不足する可能性があります。
そのため経営では、売上高だけでなく、
- 売掛金残高
- 回収予定日
- 入金状況
- 回収までの日数
まで確認することが重要です。
売掛金はいつ発生する?
売掛金は、原則として自社の会計方針に基づいて売上を計上するタイミングで発生します。
商品販売であれば出荷・納品・検収など、サービスであれば役務の提供完了などが売上計上の基準になることがあります。
重要なのは、「請求書を発行した日だから必ず売掛金を計上する」というわけではない点です。
売上をいつ認識するかは取引内容や契約条件、自社が採用している会計処理によって異なるため、実務では売上計上基準を社内で統一しておく必要があります。
売掛金と掛売りの違い
掛売りは取引方法、売掛金は掛売りなどによって発生した未回収代金を表す勘定科目です。
両者は似ていますが、意味が異なります。
| 用語 | 意味 |
| 掛売り | 商品・サービスを先に提供し、代金を後日受け取る取引方法 |
| 売掛金 | 掛売りなどによって発生した、本業の未回収代金 |
| 売掛 | 掛売りによって代金が未回収になっている状態を表す言葉 |
たとえば、取引先へ商品を10万円で販売し、翌月末払いとした場合、「翌月末に支払ってもらう」という取引方法が掛売りです。
そして、実際に入金されるまでの10万円が売掛金になります。
売掛金と買掛金の違い
売掛金は自社が受け取る予定のお金、買掛金は自社が支払う予定のお金です。
売掛金と買掛金は、立場が反対になります。
| 項目 | 売掛金 | 買掛金 |
| 意味 | 後日受け取る代金 | 後日支払う代金 |
| 自社の立場 | 債権 | 債務 |
| 貸借対照表 | 資産 | 負債 |
| 主な発生原因 | 商品販売・サービス提供 | 商品・原材料などの仕入れ |
たとえば、自社が取引先へ商品を販売して代金を後日受け取る場合は売掛金です。
反対に、自社が仕入先から商品を仕入れ、代金を後日支払う場合は買掛金になります。
経営上は、売掛金の回収時期と買掛金の支払時期のバランスも重要です。
売掛金を回収する前に買掛金の支払期限が到来すると、利益が出ていても手元資金が不足する可能性があります。
売掛金と未収入金(未収金)の違い
売掛金と未収入金の大きな違いは、本業の営業活動によって発生した債権かどうかです。
| 項目 | 売掛金 | 未収入金 |
| 発生する取引 | 本業の営業活動 | 本業以外の取引 |
| 例 | 商品販売、サービス提供 | 固定資産の売却など |
| 会計上の位置づけ | 売上債権 | その他の債権 |
たとえば、小売会社が商品を販売して代金を後日受け取る場合は売掛金です。
一方、会社が保有していた車両や設備を売却し、その代金がまだ入金されていない場合などは未収入金として処理することがあります。
どちらも「まだ受け取っていないお金」という点は同じですが、何の取引から発生した債権なのかによって勘定科目を使い分けます。
売掛金と前受金の違い
売掛金は商品・サービスを提供した後に代金を受け取る取引、前受金は提供する前に代金を受け取った場合に使用する勘定科目です。
たとえば、商品を先に販売して翌月代金を受け取る場合は売掛金です。
一方、商品を渡す前に顧客から予約金や代金の一部を受け取った場合は、前受金として処理することがあります。
つまり、
- 売掛金:商品・サービス提供が先、入金が後
- 前受金:入金が先、商品・サービス提供が後
という違いがあります。
売掛金の仕訳方法
売掛金は、売上を計上したときに借方へ計上し、代金を回収したときに貸方から減額するのが基本です。
ここでは、商品を10万円で掛け販売した場合を例にします。
※以下は仕訳の考え方を示す簡略例です。消費税の処理方法などによって実際の仕訳は異なる場合があります。
商品を掛けで販売したとき
10万円の商品を販売し、代金を翌月受け取る場合は次のように仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 売掛金 | 100,000円 | 売上 | 100,000円 |
売上を計上すると同時に、将来受け取る予定の10万円を売掛金として計上します。
売掛金が入金されたとき
翌月、取引先から10万円が普通預金へ振り込まれた場合は次のように仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 普通預金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 |
入金によって売掛金を回収したため、売掛金残高を10万円減らします。
このように、
売上計上 → 売掛金発生 → 入金 → 売掛金消込
という流れになります。
売掛金の回収から消込までの流れ
売掛金管理では、単に請求書を発行するだけでなく、請求した金額が予定どおり入金され、正しく消し込まれたかまで確認することが重要です。
一般的な流れは次のとおりです。
1. 商品・サービスを提供する
契約内容に基づいて商品を納品したり、サービスを提供したりします。
自社の売上計上基準を満たした時点で売上を計上します。
2. 売掛金を計上する
代金を後日受け取る場合は、売上と同時に売掛金を計上します。
取引先名、金額、請求予定日、支払期限なども記録しておきます。
3. 請求書を発行する
締め日などに基づいて請求金額を確定し、請求書を発行します。
請求書には少なくとも、
- 請求金額
- 支払期限
- 振込先
- 取引内容
などを正確に記載します。
4. 入金を確認する
支払期日になったら、銀行口座などを確認します。
取引先名と振込名義が一致しない場合や、複数の請求をまとめて入金する企業もあるため、請求額と実際の入金額を照合します。
5. 売掛金を消し込む
入金が確認できたら、その入金がどの請求に対応しているのかを特定し、売掛金残高から差し引きます。
この作業を入金消込と呼びます。
売掛金残高と実際の未回収額が一致していないと、回収漏れや二重請求などの原因になるため、正確な処理が必要です。
売掛金を適切に管理する必要がある理由
売掛金管理の目的は、売上を確実に現金化し、資金繰りを安定させることです。
会計上は売上が計上されていても、売掛金が入金されるまでは現金を受け取っていません。
そのため、売掛金の回収が長期化すると、経営にさまざまな影響が生じます。
資金繰りが悪化する可能性がある
商品を販売すると、仕入代金や人件費などの支払いは発生します。
しかし、売掛金の入金が数か月先になると、支払いだけが先行する可能性があります。
売上が増えている企業でも、売掛金の回収が追いつかなければ手元資金が不足するため注意が必要です。
未回収に気づくのが遅れる
売掛金を取引先別・支払期限別に管理していないと、支払期限を過ぎていること自体に気づかない場合があります。
回収が遅れている債権を早く把握するためにも、売掛金残高と回収予定日を定期的に確認することが重要です。
貸倒れリスクが高まる
入金遅延が長期化すると、最終的に代金を回収できなくなる可能性があります。
特に取引額が大きい取引先で未回収が発生すると、企業の資金繰りへ大きな影響を与えることがあります。
売掛金を管理するときの5つのポイント
売掛金の未回収を防ぐには、売上が発生した後だけでなく、取引を始める前から管理することが重要です。
1. 取引前に支払条件を明確にする
取引開始時に、
- 締め日
- 支払日
- 支払方法
- 振込手数料の負担
- 遅延時の対応
などを確認します。
口頭だけでなく、契約書や発注書、見積書などで条件を確認できる状態にしておくことが重要です。
2. 取引先ごとに売掛金を管理する
売掛金は合計額だけを見るのではなく、取引先ごとに管理します。
最低限、
| 管理項目 | 内容 |
| 取引先 | 誰に対する売掛金か |
| 売掛金額 | 未回収金額 |
| 発生日 | 売上を計上した日 |
| 請求日 | 請求書を発行した日 |
| 支払期限 | 入金予定日 |
| 入金額 | 実際の回収額 |
| 未回収残高 | 現在残っている金額 |
などを一覧にすると把握しやすくなります。
3. 売掛金の滞留期間を確認する
売掛金は金額だけでなく、どのくらいの期間回収できていないかを見ることが重要です。
たとえば、
- 支払期限前
- 1~30日遅延
- 31~60日遅延
- 61~90日遅延
- 90日超
などに分けて管理すると、長期化している債権を発見しやすくなります。
回収期間が徐々に長くなっている取引先については、取引条件や与信枠を見直す必要がある場合があります。
4. 支払期限を過ぎたら早めに確認する
支払期限を過ぎても入金されていない場合は、そのまま放置せず取引先へ確認します。
単純な振込忘れや請求書の処理漏れの場合もあるため、まずは、
- 請求書が届いているか
- 請求内容に相違がないか
- いつ入金予定か
を確認しましょう。
5. 入金と請求を定期的に消し込む
入金消込を後回しにすると、実際には回収済みなのに帳簿上は売掛金が残っている、あるいは未回収なのに回収済みと誤認する可能性があります。
銀行口座の入金データと請求データを定期的に照合し、売掛金残高を正確に保つことが重要です。
売掛金が回収できないときの対応
売掛金の支払期限を過ぎた場合は、放置せず、取引先の状況を確認して段階的に対応することが重要です。
まず取引先へ連絡する
入金が確認できない場合は、メールや電話などで支払状況を確認します。
請求書の未着や社内処理の遅れなど、単純な事務ミスである可能性もあります。
支払予定日を確認する
支払いが遅れる場合は、「いつ支払えるのか」を確認し、記録に残します。
曖昧なまま長期間放置しないことが重要です。
今後の取引条件を見直す
支払いの遅延を繰り返す取引先については、
- 与信限度額を下げる
- 前払いに変更する
- 一部前金を求める
- 掛取引を停止する
などの対応を検討します。
長期化する場合は専門家へ相談する
督促を行っても支払いがなく、回収が長期化している場合は、債権額や取引状況に応じて弁護士などの専門家へ相談することも検討します。
回収不能と判断した売掛金を会計・税務上「貸倒損失」などとして処理する場合には要件があるため、自己判断だけで処理せず、税理士などへ確認するのが安全です。
売掛金管理を効率化する方法
取引先や請求件数が増えると、Excelや手作業だけでの売掛金管理には限界が生じやすくなります。
特に、
- 請求書発行
- 入金確認
- 入金消込
- 未入金確認
- 督促
- 売掛金残高管理
を別々に行っている場合、確認作業が増え、処理漏れや入力ミスにつながる可能性があります。
会計ソフトを活用する
会計ソフトを利用すると、売上計上や入金処理と連動して売掛金残高を管理しやすくなります。
取引先別の残高を確認できる機能があると、未回収金額の把握にも役立ちます。
請求書発行システムを活用する
請求書発行システムでは、請求書の作成・送付・保存などを効率化できます。
会計ソフトや銀行口座と連携できるサービスであれば、請求から入金確認まで一連の業務を効率化できる場合があります。
入金消込・債権管理システムを活用する
取引件数が多い企業では、入金データと請求データを自動で照合する入金消込システムや、売掛金残高・回収予定日を一元管理する債権管理システムも選択肢になります。
システムを導入する場合は、機能の多さだけでなく、
- 現在の請求件数
- 入金件数
- 使用している会計ソフト
- 銀行口座との連携
- 複数部門・複数拠点への対応
などを基準に選ぶとよいでしょう。
売掛金に関するよくある質問
売掛金とは簡単にいうと何ですか?
売掛金とは、商品やサービスを販売して売上を計上したものの、まだ取引先から受け取っていない代金です。本業の営業活動によって発生した未回収代金を売掛金として管理します。
売掛金は資産ですか?
はい。売掛金は将来取引先から代金を受け取る権利であるため、貸借対照表では流動資産に分類されます。
売掛金は借方・貸方のどちらですか?
売掛金が発生したときは借方に計上します。代金を回収して売掛金が減少したときは貸方に計上します。
売掛金と買掛金の違いは何ですか?
売掛金は自社が取引先から受け取る予定の代金で、買掛金は自社が仕入先などへ支払う予定の代金です。売掛金は資産、買掛金は負債に分類されます。
売掛金と未収入金の違いは何ですか?
売掛金は本業の商品販売やサービス提供から発生する未回収代金です。未収入金は、固定資産の売却など本業以外の取引から発生する未回収代金に使用します。
売掛金の「消込」とは何ですか?
入金された金額がどの請求に対する支払いなのかを特定し、該当する売掛金残高を減らす作業です。請求件数や入金件数が多い企業では、消込作業の負担が大きくなりやすい傾向があります。
売掛金が増えるのは悪いことですか?
売上の増加に伴って売掛金が増えること自体は珍しくありません。ただし、売上の伸び以上に売掛金が増えている場合や、回収期間が長期化している場合は注意が必要です。未回収額だけでなく回収予定日や滞留期間まで確認しましょう。
売掛金を回収できない場合はどうすればよいですか?
まず取引先へ連絡し、請求内容と支払予定日を確認します。支払いが長期間行われない場合は、取引条件の見直しや専門家への相談を検討します。貸倒れとして会計・税務処理する場合は要件があるため、税理士などへ確認してください。
まとめ|売掛金は「売上」だけでなく「回収」まで管理しよう
売掛金とは、商品やサービスを提供して売上を計上した後、まだ取引先から回収していない代金です。
売掛金は企業の資産ですが、実際に入金されるまでは手元の現金にはなりません。そのため、売上高だけを見るのではなく、売掛金の残高・支払期限・入金状況・回収期間を継続的に管理することが重要です。
特に重要なのは、次の5点です。
- 取引開始前に支払条件を明確にする
- 取引先ごとに売掛金残高を管理する
- 回収予定日を把握する
- 入金後は速やかに消し込む
- 支払遅延が発生したら早めに確認する
取引件数が増えて請求・入金確認・消込が複雑になっている場合は、会計ソフトや請求書発行システム、債権管理システムなどを活用し、売掛金管理を仕組み化することも有効です。




