従量課金(使用量課金)とは
従量課金とは、顧客が利用したサービスや製品の使用量に基づいて料金が発生する仕組みです。使用量課金とも呼ばれます。
従量課金制では、ユーザーが実際に使用した量に応じて支払い金額が決まるだけでなく、必要なサービスや機能のみを利用することでコストを抑えることもできます。そのため、ユーザーにとって納得度が高く、サービス導入のハードルも低いです。
従量課金制は電気やガスなどの公共料金、通信サービス、クラウドサービスやソフトウェアなどさまざまな業界で採用されています。
5種類の従量課金とサービス例
使用量課金
使用量課金はサービスや製品の利用量に応じて料金が発生する方式です。利用者が実際に利用した量に対して公正な料金を支払うことができるメリットがあります。
例えばクラウドストレージサービスのようなITツールでも、使用料課金が採用されることが多いです。クラウドストレージでは、利用者が保存するデータの容量に応じて料金が計算されます。
【使用料課金の例】
- 携帯電話の通話料(従量課金プランの場合)
- クラウドコンピューティングサービス
- クラウドストレージ など
ユーザー数課金
ユーザー数課金は、サービスを利用するユーザー数に応じて料金が発生する方式です。ユーザー数課金は、利用者数の増減に応じて柔軟に料金を調整できる利点があります。そのため、ユーザー(≒従業員)数の流動性が高いSaaSなどに適しているといえます。
例えば、SaaSとして提供される勤怠管理システムの中には、料金プランがユーザー数の上限に基づいて設定されているものも多いです。
【ユーザー数課金の例】
- ビジネスチャット
- 勤怠管理システム
- クラウド会計システム など
アクティブユーザー数課金
アクティブユーザー数課金は、サービスを実際に利用したユーザー数に応じて料金が発生する方式です。使う月と使わない月のバラつきが多いサービスに採用されるほか、ユーザー数課金の他サービスとの差別化として導入されることもあります。
わかりやすい例を挙げると、広告プラットフォームがこれにあたります。広告をクリックしたユーザー数に応じて広告主に料金が請求される仕組みです。
他サービスの差別化として導入される例としては、先述の「勤怠管理システム」が挙げられます。
勤怠管理システムの多くは上限のユーザー数で料金プランが決まっていますが、中には「その月に利用(打刻)した従業員数×一人あたりの月額料金」のシステムもあります。このような料金プランは打刻する人数の変動が激しい企業、例えば派遣や単発バイトの割合が高い企業などに好まれるでしょう。
【アクティブユーザー数課金の例】
- クラウド会計システム
- 広告プラットフォーム
- 派遣や単発バイトが多い企業向けの勤怠管理システム など
定額従量課金
定額従量課金は、一定の基本料金に加えて利用量に応じた追加料金が発生する方式です。定額従量課金は、利用者にとって料金の予測がしやすく、使いたいだけのサービスを利用できる利点があります。
最もわかりやすい例は電気やガス、水道などの公共料金でしょう。これらの料金は「基本料金+(使用量×単価)」で支払額が決まり、翌月以降に請求が行われます(厳密には、単価は使用量の範囲に応じて変動します)。
【定額従量課金の例】
- 電気・ガス・水道などの基本料金
- 携帯キャリアの通信料(一定の通信料までは定額、超過分は追加料金のプラン)
- オンラインゲーム(基本プレイ料金+課金の場合)
段階従量課金
段階従量課金は、使用量が一定の範囲に入るごとに料金が段階的に変化する方式です。月ごとの使用量にバラつきがあるユーザー、中でも料金をなるべく抑えたいと考えるユーザーに好まれています。
具体的には、携帯キャリアの一部プランが短かい従量課金にあたります。通信料1GBまでは定額1,000円、7GBまでは定額2,000円、30GBまでは定額3,000円、31GBからは通信料にかかわらず定額4,000円、のような料金プランです。
【段階従量課金の例】
- 携帯キャリアのデータ通信料(一部プラン)
- 一部のモバイルWi-Fi
- 一部のストリーミングサービス など
従量課金とほかの料金形態の違い
従量課金のほかにも都度課金や定額制など、さまざまな料金形態があります。それぞれどんな料金形態なのか、従量課金とどう違うのかを解説します。
都度課金との違い
都度課金はサービスを利用したり、商品を注文したりするたびに課金する方式です。
従量課金と都度課金は、料金が発生するタイミングにおける違いがあります。従量課金は一定期間内の利用量に応じて料金が発生するため、支払額は期間終了後に確定、支払いは翌月に行われることが多いです。
一方、都度課金はサービスや製品を利用するたびに支払いが発生します。
定額制との違い
定額制は決まった機能やサービスを、決まった金額内で好きなだけ利用できる方式です。
従量課金と定額制は、支払額の決まり方に違いがあります。従量課金は利用量に応じて料金も変動しますが、定額制では料金があらかじめ決められており、変動することはありません。
サブスクリプションとの違い
サブスクリプションは定額制と近い仕組みで、決まった料金を支払うことで、決まった機能やサービスを好きなだけ利用できる方式です。
従量課金とサブスクリプションの違いは、従量課金が利用量に応じて料金も変動するのに対し、サブスクリプションは変動しない点にあります。
定額制との違いは「サービスの目的」にあります。定額制はユーザーに決まったサービスを提供することが目的ですが、サブスクリプションの目的はユーザーに高い付加価値を提供し、LTV(顧客が契約から解約までの間に自社にもたらす利益の総量)を高めていくことです。
そのため、サブスクリプションのサービスは内容や使える機能により、いくつかの料金プランに分かれていることが多いです。
リカーリングとの違い
リカーリングは繰延収益を目的としたビジネスモデルです。リカーリング(Recurring)には「くり返される」「循環する」などの意味があります。例えば剃刀本体を購入した人が替え刃を購入してもらう、プリンターを契約した企業にインクを購入してもらうなどがこれにあたります。
従量課金との違いは何に対して料金が発生するかです。従量課金が利用料に応じて料金が発生するのに対し、リカーリングでは替え刃やインクなどの購入費が発生します。
リカーリングは近年注目されているビジネスモデルでもあります。注目の背景や発祥、メリットなどについて知りたい方にはこちらの記事もおすすめです。
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従量課金制でサービスを提供するメリット
従量課金制を採用する主なメリットは次の通りです。
【コスト効率の最大化】
利用者は必要なサービスや機能のみを使用し、実際に利用した分だけ料金を支払うことができます。無駄なコストを削減し、サービスから得られる利益を最大化できるでしょう。
【ニーズに合わせた柔軟な料金設定】
従量課金せいで提供されるサービスの中には、利用量や利用者数に応じた料金プランだけでなく、内容や機能に応じた料金プランを提供するものもあります。ユーザーはそれぞれの利用規模やニーズに合ったプランを選べるため、その満足度は高くなるでしょう。
【スケーラビリティの向上】
従量課金制の料金プランは、ビジネスの成長に柔軟に対応することができます。利用量や利用者数が増加した場合でも、料金プランを適切に調整することでスケーラビリティを確保できます。
従量課金制でサービスを提供するデメリット
従量課金制には「定額制に比べると収益が不安定になりやすい」「サービスの付加価値が低いと解約されやすい」といったデメリットもあります。
定額制のサービスなら、収益は「ユーザー数×客単価」で簡単に予測できます。よほどのことがなければ突発的に解約数が増えることもなく、収益は安定しているでしょう。
従量課金制も収益は安定しやすく、見通しも立てやすいですが、定額制のサービスよりは不安定といえます。「ユーザー数×客単価」の計算式の「客単価」が変動しやすいからです。
例えば電気料金は、エアコンが必要な夏・冬の利用量が多く、季節ごとの収益が変動しやすいです。
また、従量課金制ではユーザーに提供する付加価値が重要です。価格のみで競争すると他社との差別化が難しくなり、より価格の低いサービスが登場したときに顧客を奪われてしまうでしょう。
従量課金制で収益を最大化する2つのコツ
従量課金制で収益を最大化するコツを2つ紹介します。
最安プランはお得感を重視
従量課金制のサービスの中には、機能やサービス内容に応じて料金プランを分けているものもあります。この場合、最安プランでお得感を演出することが大切です。
お得感を理由に最安プランに加入したユーザーが、サービスの内容や使用感が気に入り、上位プランに乗り換えてくれるからです。最安プランからのアップグレードを促すために、サービスそのものの付加価値を高め、プランごとの差別化を図りましょう。
課金方式を充実させる
ユーザーのニーズに合った課金方式を取るか、ユーザーが好きな課金方式を選べるようにすることも有効です。ニーズや使用状況に応じて、使用量課金やユーザー数課金などを選べるようにすれば、ユーザーの納得度も高くなります。
従量課金か定額制か…?ビジネスモデルに合った料金形態を
従量課金制には比較的安定した継続収益を得られるメリットがあります。ただ、それは定額制でも同じです。
従量課金制か定額制か、どちらを採用するか決める際は、自社のビジネスモデルや顧客のニーズを考えましょう。従量課金は利用量に応じた柔軟な料金設定ができ、ユーザー側の選択肢も広がります。一方、定額制には予測可能な収益を安定して確保できるメリットがあります。
ビジネスの性質や競合状況、顧客のニーズなどを考慮し、ユーザーにとって魅力的な料金形態を提供することで、収益と顧客満足度の両方を最大化できるでしょう。適切な料金形態を選択し、戦略的な価格設定を行うことが、ビジネス成功の鍵となるのです。
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