クリニックが人手不足になる理由
近年、クリニックにおける人手不足が深刻な課題となっています。本記事では人手不足によりクリニックでどんな問題が起こるのか、それを防ぐために、新規採用なしで人手不足を解決する方法を紹介します。
しかしその前に、クリニックで人手不足が起こるのはなぜなのか、特に深刻な3つの理由について知っておきましょう。
少子高齢化と労働人口の減少
日本全体が直面している少子高齢化による影響は、医療業界においても顕著です。高齢者の増加にともない医療ニーズが増加している一方で、労働人口が減少傾向にあるため、加速度的に人手不足が深刻化しています。
流行り病による患者数と業務の増加
クリニックでは、特に感染症の流行時に人手不足が深刻になりやすいです。流行り病による患者が増えるのはもちろん、通常業務に加えて感染拡大の予防策も行わなければならず、リソースが圧迫されてしまいます。
たとえば新型コロナウイルスの流行時には発熱外来を設けたり院内の消毒をしたりと、業務負担が大きくなりました。
ルール作りや仕組み化の遅れ
小規模なクリニックの中には従業員数が10名以下のところもあるでしょう。従業員10名以下の事業所には就業規則の作成が義務付けられておらず、仕事に関するルールや仕組み化が遅れやすい傾向にあります。
このような環境は従業員にとっての働きづらさにつながり、ひいては離職増加につながりかねません。従業員の負担を減らすため、ライフワークバランスを確保するためのルール・仕組みづくりが働きやすい環境をつくり、離職防止にもつながるでしょう。
人手不足によりクリニックで起こり得る問題
深刻な人手不足は従業員の業務負荷を高めます。これにより離職増加やサービス品質の低下など、さまざまな問題が起こり得ます。医療現場であるクリニックでは、重大な事故やミスにもつながりかねません。
人手不足によりクリニックでどんな問題が起こるのか、4つの例を紹介します。
働きづらい環境
クリニックの人手不足が続くと、従業員の業務負荷は高くなり続け、心身ともに疲労が溜まっていきます。残業や休日出勤が増えればライフワークバランスだけでなく、体調を崩す従業員も出てくるでしょう。
離職率の増加
人手不足が続き心身の健康を損なうような状況が長引くと、従業員の離職率が増加するリスクが高まります。
離職が増えれば新しく従業員を採用する必要が出てくるでしょう。広告を出したり面接をしたりと採用そのものにかかるコストに加え、新人への教育や研修などにも時間と手間がかかります。
特に長く働いていた従業員が辞めてしまうと、その人が持つ経験や知識もクリニックから失われてしまいます。社歴の浅い従業員や新しい従業員が同じレベルまで成長するまでに膨大な時間がかかり、医療品質への影響が懸念されます。
サービス品質の低下
人手不足により従業員の業務負荷が大きくなれば、身体的な疲労だけなく精神的なストレスも溜まっていきます。
これによりクリニック内にピリピリとした雰囲気が流れたり、患者への応対がおざなりになったりするかもしれません。従業員が忙しさに追われて診療に時間を割けない、集中力の低下で業務効率が落ちるなど、待ち時間も長くなるでしょう。診察時間が短くなることもあり、患者に適切な医療を提供するのが難しくなる場合もあります。
これが患者の不満を引き起こし、再来院の意欲を削いでしまうかもしれません。
人的ミスや事故
先述のとおり、人手不足により業務負荷が大きくなると従業員は心身ともに疲弊し、集中力も低くなってしまいます。これにより医療ミスや事故のリスクが高まります。これは患者への影響はもちろん、法的なトラブルにもつながりかねない重大な問題です。
クリニックの人手不足は新規採用なしでも解決できる
クリニックの人手不足を解消する方法は、新規採用だけではありません。離職率を下げてこれ以上の人手不足を防ぐこと、ITツールや仕組み化で業務効率を高め、今いる人員で業務に対応することなど、できることはたくさんあります。
ここからは、クリニックの人手不足を解決する新規採用以外の方法を紹介します。
クリニックの離職率を下げる3つのアイデア
まずは離職率を下げ、これ以上の人員流出を防ぐための取り組みをしましょう。離職防止の取り組みは人手不足を解決する基本です。離職を防ぐための環境づくりができていれば、新規採用した従業員の定着率も高くなり、採用・教育にかかるコストを削減できます。
1.就業規則やルールをきちんと設ける
クリニックの離職率を下げるために、まずは明確な就業規則やルールを設けましょう。先述のとおり、従業員数10名以下の小規模なクリニックには就業規則の作成が義務付けられていません。
しかし、義務がないからといって就業規則を作らずルールがない状態だと、従業員にとって働きやすい環境はつくれないでしょう。労働時間や休日・休暇、待遇などについてのルールを設け、公正で納得感のある労働環境をつくりましょう。
具体的にはスタッフの労働時間を管理・調整し過重労働を防ぐこと、最低でも法定労働時間を守り、残業時間を最小限に抑えるよう努めることが大切です。
人手不足だからといって、休日が取りづらい、少ないという状況も良くありません。十分な休日や休暇を与え、リフレッシュの機会を提供することで、従業員の集中力や生産性は回復します。
給与や福利厚生について、公平で透明な基準を設けることも大切です。
2.院長が率先して雰囲気づくりをする
人手不足が深刻になるほど従業員のストレスは溜まり、クリニック内の雰囲気が悪くなることは先述のとおりです。これを防ぐ、あるいは悪くなった雰囲気を改善するためには、院長や経営陣が率先して雰囲気づくりをしましょう。
院長や管理者が明るく挨拶すること、リーダーシップを発揮することで、従業員は安心して働けるようになります。具体的な業務目標や働きやすい環境づくりの取り組みを掲げるのもいいでしょう。
ほかにも従業員の声に耳を傾けクリニックの運営に反映すること、仕事に関する悩みを聞きフィードバックを提供することなど、できることはたくさんあります。
3.ITツールを活用し業務を効率化・自動化する
クリニックの業務を効率化・自動化するためには、ITツールが役立ちます。業務の自動化や効率化は従業員の負担を減らし、疲労を軽減したり休日・休暇を取りやすくしたりすることにもつながります。
ここからは、クリニックの業務効率化に役立つITツールや仕組みについて紹介します。
クリニックの業務効率化に役立つつのITツール・仕組み
クリニックの業務効率化に役立つITツールや仕組みを4つ紹介します。クリニックの課題解決につながるもの、導入しやすいものを探してみましょう。
1.電子カルテ
患者情報や診療履歴をデジタル化し、スムーズな診療をサポートするシステムです。情報の共有が容易になり、診療の効率化が期待できます。全国の医療機関で電子カルテの情報を共有するための仕組みづくりも進んでおり、他院と連携した医療サービスの提供にも欠かせないシステムです。
2.予約・待ち時間管理システム
オンラインで予約を受け付けたり、メールやLINEで待ち時間をアナウンスしたり、予約管理の効率化にも患者の利便性アップにも役立つシステムです。多くの人が日常的に使うLINEからオンライン予約や診療時間が近づいたことをアナウンスできるシステムもあり、小規模なクリニックには特におすすめです。
こちらの記事ではLINE対応のクリニック予約システムについて詳しく解説しています。主な機能や導入メリット、厳選したLINE予約システムと、LINE以外の予約システムを紹介しています。
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3.オンライン診療
オンライン診療を取り入れることで遠方の患者にも医療サービスを提供でき、クリニックの診療範囲を拡大できます。また、スケジュールを柔軟に調整できるようになり、従業員の負担軽減にもつながります。
4.セミセルフレジ
患者が自分で診療費の支払いを行えるシステム・レジです。会計の待ち時間短縮や従業員の負担軽減に役立ちます。
離職防止や効率化の工夫を取り入れ、クリニックの人手不足を解消しよう
クリニックの人手不足は採用に頼るだけでなく、業務効率化やスタッフの離職防止のための策を講じることでも解決できます。これらの対策は人手不足の根本的な原因にアプローチできるもので、新規採用した従業員の定着率も高くなるでしょう。
人手不足を解消し、安心して利用できるクリニックをつくることで、患者からの信頼を高められます。患者と従業員の双方の安心感・信頼感を高めることは、クリニックの持続的な成長に欠かせません。
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