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売掛金回収の方法は?支払い遅延や未回収時の対応、リスクヘッジの方法をまとめて解説

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売掛金の回収に関する基礎知識

売掛金の回収について考える前に、まずは売掛金とは何なのか、未回収の売掛金はいつまで回収できるのかを確認しておきましょう。

そもそも売掛金とは

売掛金とは、商品やサービスの提供後に顧客が支払いを行う金額のことです。この「代金受け取り前に商品やサービスを提供する取引」は掛取引と呼ばれ、掛取引の販売側には売掛金が、購入側には買掛金が生じます。

BtoBでは一般的な取引形態で、たとえば飲食店や小売店の仕入れ、業務のアウトソーシングの報酬などでよく使われています。

売掛金の時効は5年

2020年4月1日以降に発生した売掛金には5年間の時効があります。時効を過ぎると売掛金を回収する権利が失われてしまいますが、売掛金の時効は督促や差し押さえなどを行うことで更新されます。

この時効により売掛金が消滅しないよう、未回収の売掛金があると気付いたら、すぐに対応することが大切です。

売掛金の回収方法

売掛金の回収方法として一般的なのが「請求書払い」です。請求書払いは、売上が発生したり確定したりした際に請求書を発行し、顧客に支払いを求める方法です。請求書には支払いの期日と金額が記載され、顧客にはその期日までに支払いを行うことが求められます。

実際の支払いは口座振込・振替で行われることが多いです。請求書に記載された銀行口座に売掛金を振り込むことで、支払いが完了します。

アウトソーシングサービスや電気・ガス・水道などのライフラインでは毎月支払いが発生するため、口座振替(自動引き落とし)が使われることが多いです。

売掛金の回収が遅れたりできなかったりするとどうなるか?

回収すべき売掛金を回収できなかったり、回収が遅れたりすると、自社はさまざまな不利益を被ります。

資金繰りの悪化

売掛金の回収が遅れると、自社(売り手)の資金繰りにが悪化する恐れがあります。特に売掛金が自社の主要な収入源である場合、回収の遅れは現金不足を引き起こし、事業運営のための資金が足りなくなるかもしれません。

黒字倒産の一因でもあり、特に売上に占める売掛金の割合が多いスタートアップにとっては気をつけたい事態です。

金融機関から融資を受けづらくなる

売掛金の回収がスムーズに行われない場合、自社の信用度が低下する可能性があります。金融機関から「お金を適切に管理できない会社」とみなされるためです。

その結果、金融機関から融資を受ける際に審査に通りにくくなったり、融資機関の短縮や金利の上昇などといった対応を取られたりすることもあります。

従業員のリソースが圧迫される

売掛金の回収を自社で行っている場合、未回収の売掛金が増えるほど、従業員のリソースが圧迫されてしまいます。従業員は回収業務に多くの時間と労力を割かなければならなくなり、ほかの業務に取り組む時間がなくなったり、効率が落ちたりするかもしれません。

売掛金の回収が遅れたときに、まずやるべきこと

売掛金の回収が遅れたときは、とにかく早めに対応を取ることが大切です。「売掛金には5年間の時効がある」という理由もありますが、対応が遅れるほど自社が甘く見られ、「払わなくても大丈夫」と思われかねないためです。

ただ、いきなり法的手段を取るのも難しいでしょう。自社としてもできれば穏便に済ませたいでしょうし、自社の知識とリソースでは取れる手段に限界があります。

売掛金の回収が遅れたときにまず取るべき対応を、3つのプロセスに分けて紹介します。

対象の売掛金について再確認する

売掛金の回収が遅れた場合、まずは対象の売掛金について再確認しましょう。請求書の発行や支払期日、顧客とのやり取りの履歴などを確認して、詳細な状況把握を行います。

この際、支払期日からどのくらい遅れているのかを確認し、時効までの猶予も把握しておきましょう。

取引先に連絡する

回収が遅れた場合、ひとまずは取引先に直接連絡を取りましょう。取引先は支払いを忘れているだけかもしれません。資金繰りが厳しく期日どおりに支払えないという場合でも、こちらから連絡を取ることで、相手方も相談がしやすくなります。

「支払いの意思はあるが支払えない」という場合、一部入金や分割払いなどの選択肢もあります。相手方の事情も聞きながら、支払い計画について話し合いを進めていきましょう。

必要に応じて取引を停止する

回収が遅れている顧客に対しては、取引を一時停止することも考えましょう。そのまま取引を続けていると回収しなければならない売掛金が増えていってしまいます。支払い遅れがなくなるまで取引を一時停止する旨を伝えましょう。

状況に応じた方法で売掛金を回収する

売掛金の回収方法は状況によって異なります。顧客との協議や交渉を通じて、分割払いや債権譲渡などの方法を検討しましょう。これらの方法については、次から詳しく解説していきます。

売掛金の未回収に対し、法的手段を取る場合

自社から連絡しても売掛金を支払ってもらえない場合、明らかに支払いの意志がない場合などは、法的手段を取ることも考えましょう。売掛金回収のためにどんな手段が取れるのか、必要な準備と併せて紹介します。

契約書の内容を再確認する

未回収の売掛金に対して法的手段を取る場合、まずは契約書の内容を再確認しましょう。支払い期日や利息に関する条項、所有権移転の時期などを把握し、法的な権利や義務を確認します。

特に契約書がある場合は「期限の利益損失条項」「商品の所有権転移」についての記載があるかを確認します。

期限の利益損失条項について

期限の利益損失条項は未払いが発生した場合、支払期日前のほかの売掛金に対しても支払い義務が生じる条項です。たとえば1~5月の末日にそれぞれ支払期日があり、2月の支払いが期日までに間に合わなかった場合、3~5月分の売掛金も2月分と合わせて請求できます。

商品の所有権移転時期について

商品の所有権移転時期が契約書に明記されている場合、未回収の売掛金に対して所有権を主張することができる場合があります。

この条項は商品の所有権がいつ移転するのかを明記するもので、たとえば「代金支払い時」と定められていれば、掛売りで提供した商品の所有権は、売掛金を回収するまで自社にあることになります。この場合、契約を解除し商品を回収することも可能です。

ただし、移転時期が「商品引き渡し時」であれば、売掛金が未回収でも商品の所有権は取引先にあることになります。また、提供したものが形のないサービスであること、一度でも人の手に渡ることで商品価値が大きく落ちてしまうことも多いです。

この方法はあくまでも損失を少しでも抑えたり、支払い意志がない相手に自社の姿勢を示したりするためのものと思った方がいいでしょう。

内容証明郵便で催告を送る

未回収の売掛金に対しては、内容証明郵便で催告を送ることが効果的です。

内容証明郵便そのものには法的な強制力はありませんが、日本郵便により「その郵便をいつ、誰が、誰宛に、どんな内容で出したのか」が証明されます。これにより催告の差出日や内容を証明できるため、法的手段を取るうえで有利になります。

特にこれを自社ではなく弁護士名義で送ることで、自社の本気度が伝わりやすくなるでしょう。それまで支払い意志がなかった相手も「法的措置を取られてしまう」と思い、その後の対応がスムーズになるケースも多いです。

交渉し、必要に応じて合意書を作成

未回収の売掛金については、顧客との交渉が重要です。分割払いであれば全額支払えるのか、全額支払いが難しいなら債権の相殺や商品の回収、債権譲渡などの方法も検討し、顧客と合意できる解決策を見つけましょう。

結論が出たら、その内容を記した合意書を作成するのがおすすめです。これにより双方の同意が確保でき、法的に有効な証拠にもなります。

取引内容に応じた対応を取る

取引内容によって未回収の売掛金に対する対応は異なります。法的手段のほかに、商品の回収や債権譲渡などの方法も検討することも重要です。取引内容や状況に応じて最適な対応策を選びましょう。

債権の相殺

取引先が自社の顧客であると同時に仕入先である場合、「債権の相殺」ができるかもしれません。債権の相殺とは、売掛金と買掛金を相殺することです。

たとえば10万円の売掛金に対して10万円の買掛金を相殺すれば、両方とも消滅します。10万円の売掛金に対して6万円の買掛金しかない場合でも、売掛金から6万円を相殺することで、未回収の売掛金が4万円になります。

未回収の売掛金と相殺できる債権がある場合は、顧客と相談し相殺も検討しましょう。

商品の回収

未回収の売掛金に対して、取引先と相談のうえ商品を回収することもあります。代金がまだ支払われていない商品を回収し、ほかの取引先に販売することで、その分の費用を回収で着るでしょう。

ただし、商品の回収には取引先の同意が必要です。勝手に回収すると自社が罪に問われることもあります。

債権譲渡

売掛金を回収できない場合、取引先の持つ債権を自社に譲渡してもらう方法もあります。これにより、譲渡された分の金額を回収できます。

たとえば取引先A社に対して30万円の未払い金があり、取引先は別の会社B社に10万円の売掛金を持っているとしましょう。B社への売掛金10万円を、A社から自社に譲ってもらうことで、10万円分の未払い金を回収できます。

この場合、B社に事情を説明し、A社ではなく自社に売掛金を振り込んでもらうよう相談しましょう。

回収できないなら訴訟も検討する

これらの方法で売掛金を回収できない場合、法的手続きとして訴訟を検討することもあります。小額訴訟や通常訴訟など、適切な手続きを選択し、未回収の売掛金の回収を求めましょう。

小額訴訟

少額訴訟は60万円以下の支払いに限り、1回の期日で審理を終えられる、つまり1日で判決が出る訴訟です。通常の訴訟と比べて時間がかからず、手続きも簡素化されています。

通常訴訟

大きな金額や複雑な争いに関しては、通常の訴訟手続きを取ることが一般的です。ただし、少額訴訟よりも手続きが複雑で、時間と手間がかかります。求められる知識も多いため、弁護士に相談しながら手続きを進めていくことになるでしょう。

売掛金の未回収を防ぐ方法

ここまでは未回収の売掛金を回収する方法について解説してきましたが、そもそも未回収や支払い遅延を起こさずに済むなら、それがいちばんです。売掛金の未回収を防ぐ方法、取引のうえで気をつけたいことを紹介します。

与信管理を徹底する

売掛金の未回収を防ぐためには、何よりも与信管理を徹底することが重要です。与信とは顧客の信用調査や支払能力などを確認することですが、これは取引開始時だけでなく、定期的に行いましょう。

掛取引は信用に基づく取引形態です。まずは与信のうえで安心できる金額の取引からはじめ、複数回の取引を経て問題ないようなら与信枠を増やし、そうでないなら制限することを心がけましょう。

適切な支払い条件を設定する

売掛金の回収をスムーズに進めるためには、適切な支払い条件を設定することも重要です。支払期日や割引制度、利息の発生条件などを適切に設定し、顧客にとって無理のない条件か確認しましょう。

債権管理を効果的に行う

債権管理を効果的に行うことで、未回収のリスクを軽減することができます。請求書の適時発行や支払い督促の迅速な対応、債権の管理や監視などを行い、未回収のリスクを最小限に抑えましょう。

顧客とのコミュニケーションを重視する

顧客と密にコミュニケーションを取ることも、未回収リスクの軽減につながります。コミュニケーションをこまめに取りながら取引を進めていくことで、支払い状況や問題の早期発見、適切な対応策の検討などができるでしょう。

リスクヘッジ策を検討する

売掛金の未回収に対して、リスクヘッジ策を検討することも有効です。たとえば債権の回収不能に備え、「保証ファクタリング」や「未回収保証つきの決済代行サービス」などが活用できるでしょう。

保証ファクタリングは信用力に不安のある取引先に対する保険として機能するサービスです。ファクタリング会社は取引先の信用調査をし、保証限度額を決定。取引先の倒産などにより売掛金が回収できなくなった場合、限度の枠内で保証金を支払ってもらえます。

決済代行サービスはクレジット払いや電子マネー、口座振込・振替などの決済手段をまとめて提供するサービスで、各金融機関との手続きや管理を代行してくれるサービスです。

中には売掛金の回収代行、未回収保証つきのサービスもあります。未回収へのリスクヘッジとしてはもちろん、回収業務にあたる自社従業員のリソース圧迫を防ぐためにも役立ちます。

売掛金回収の手間や未回収リスクを減らすために、決済代行サービスを検討しよう

売掛金は将来的に確定する売上であり、帳簿にも収益として記帳できますが、そのすべてを確実に回収できるとは限りません。支払いが遅れたり、取引先の倒産や債務整理などにより回収できなくなったりすることもあるでしょう。

特に、売上に占める売掛金の割合が大きい企業は、売掛金回収の手間や未回収リスクを減らすための対策を講じることが大切です。

BtoBの事業で、特に一社に売上が依存しているような状態なら保証ファクタリングがおすすめ。回収業務が従業員のリソースを圧迫していたり、BtoCの事業で後払い系の支払い方法が多かったりするなら決済代行サービスがおすすめです。

特に決済代行サービスを活用すれば、クレジット払いや電子マネー、口座振込・振替、コンビに後払いなど、さまざまな決済方法をまとめて導入・管理できます。支払い方法が充実していることは顧客にとってのメリットも多く、集客にも有効です。

こちらの記事では決済代行サービスとは何か、その選び方やビジネスモデル別のおすすめサービスを紹介しています。売掛金回収に不安のある企業、決済方法を充実させたい企業はぜひお読みください。

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この記事の監修
中島 崚
中島 崚
慶応義塾大学商学部卒業。新卒でフロンティア・マネジメント株式会社に入社し、メーカーの中期経営計画や百貨店の再生計画策定に従事。その後、スマートキャンプ株式会社に入社し、事業企画として業務を担う。また、兼務でグループ会社であるマネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社に出向し、アントレプレナーファンド「HIRAC FUND」でキャピタリスト業務に携わる。2022年7月よりこれまで副業で経営していたステップ・アラウンド株式会社を独立させる。
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