配膳ロボットとは?概要/仕組み/特徴/導入方法/費用
配膳ロボットとは配膳と下げ膳を行うロボットです。主な導入場所は飲食店ですが、物の運搬もできるためコンビニや病院、宿泊施設などでも活躍中です。外国より遅れること数年、日本でもコロナ禍をきっかけに配膳ロボットの普及が加速しています。
今回は配膳ロボットの導入を検討している飲食店経営者へ向けて、配膳ロボットの仕組みや特徴、登場した背景と現状、主な機能と導入メリットを紹介します。
配膳ロボットの仕組みと特徴
配膳ロボットは、天井に貼り付けたタグの情報を基に移動する「タグナビゲーション式」と、間取り図を作成してその範囲内を移動する「マッピング式」の2種類があります。自分の位置を把握したうえで人や障害物を察知して動くため、接触せずに移動できます。
配膳ロボットの本体重量は30キロ〜60キロほど。トレイは3段〜4段が基本で、最大積載量は30キロからと、重い物を載せても安心です。画面に顔が表示されるもの、見た目が可愛いネコ型のロボットもあります。
配膳ロボットの導入方法と費用
配膳ロボットの導入方法は利用するサービスによって異なりますが、購入・レンタル・リースの3種類があります。
購入
日本で販売されている配膳ロボット「PEANUT(ピーナッツ)」は250万円ほど、「Servi(サービィ)」は570万円ほどで購入可能です。高額ですが、導入時には「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」といった補助金が利用できる可能性があります。
レンタル・リース
レンタル・リース料を支払うことで、配膳ロボットを長期的に借りられます。一般的にはレンタルよりリースの方が契約期間は長めです。レンタルは3年間、リースは5年間ほどが目安とされます。
配膳ロボットが登場した背景や導入状況
配膳ロボットが登場した背景には、飲食店の人手不足やコロナ禍が深く関わっています。日本は外国より遅れて配膳ロボットを導入しましたが、徐々に普及しているようです。配膳ロボットが求められる理由と、導入の現状を見ていきましょう。
飲食店の人手不足 – スタッフの仕事を配膳ロボットが担う
2021年11月に帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(※)」を見てみると、飲食店の6割以上でアルバイト・パートが不足していることが分かります。その人手不足をカバーするため、配膳ロボットが登場しました。
少子高齢化の日本では、今後も人手不足は続くことが想定されます。外食産業においてはデジタル化・ロボット化が進み、配膳ロボットがメインに働く日も遠くないかもしれません。
※出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」
非接触 – コロナ禍での新たな提供方法が求められる
コロナ禍では、さまざまなシーンで非接触が求められるようになりました。飲食店の接客や提供も同様です。配膳ロボットはスタッフと利用客の接触防止に活躍します。コロナ禍が長引く今、ロボットが料理を運ぶ新たな提供方法が浸透しつつあります。
導入の検討 – 多くの飲食店が導入を考えている
ファンくるが行った「フードテック導入についての意識調査」では、フードテックを導入している飲食店が81%にも上ることが分かっています。非接触の実現や人手不足解消のため、多くの飲食店がテクノロジーを活用しています。
なお、同調査内の「導入しているフードテック」では、配膳ロボットは7%と低い数値でした。しかし「今後導入したいフードテック」では「キャッシュレス」に並んで「配膳ロボット」が最も多い結果に。今後、より多くの飲食店で配膳ロボットが活躍しそうです。
約7割が普及を望む – 配膳ロボットの需要は高まっている
2022年4月、日本トレンドリサーチは飲食店の利用客を対象に「配膳ロボットに関するアンケート」を行い、「今後、飲食店で「配膳ロボット」は普及してほしいですか?」という質問を行っています。
その結果は「普及してほしい」が22.1%、「どちらかといえば普及してほしい」が45.5%と、7割近くの人が普及を望んでいることがわかりました。
同じ設問を年代別に見ていくと、20代以下〜40代の若い世代が特に普及を望んでいることがわかります。ただ、50代・60代・70代でも「どちらかといえば普及してほしい」が5割近くに達していることから、配膳ロボットは全世代から高評価だと考えられます。
配膳ロボットの主な機能5つ
配膳ロボットの機能は料理の提供だけではありません。利用客の案内やコミュニケーション、店内の巡回と、普段はスタッフにお願いしている業務を代行してもらえます。配膳ロボットは何ができるのか、主な機能を見てみましょう。
1. 座席案内
配膳ロボットは自律走行できるため、指定した場所へ移動が可能です。案内機能を使うと入り口へ移動し、座席までお客さんを案内してくれます。なかには、音声でコミュニケーションを取りながら案内できるロボットもあります。
2. 配膳/下げ膳
配膳ロボットの主な仕事は配膳と下げ膳です。料理の提供時はロボットの画面にある「配膳」ボタンを押し、トレイにお皿を載せたらテーブル番号を押すだけ。目的のテーブルに到着した配膳ロボットは、声と光で料理の取り出しをお客さんに促します。
下げ膳はお客さんの退店後に使用する機能です。空いたテーブルに配膳ロボットを派遣し、テーブルの上に並んだ食器類をトレイに載せて「完了」ボタンを押すと、キッチン(返却場所)へと運んでくれます。
3. 空間認識/障害物センサー
配膳ロボットには空間認識・障害物センサーが付いているため、人や物、壁の検知が可能です。自律走行中も常にセンサーが稼働しており、ぶつかる前によけられます。
その他、トレイにセンサーが付いていて、お皿がなくなったことを確認するとテーブルから離れるロボットもあります。
4. コミュニケーション
多くの配膳ロボットにはコミュニケーション機能が搭載されています。数百のメッセージが登録されていて、お客さんと簡単な言葉のキャッチボールができます。多言語に対応しているロボットであれば、インバウンド対策にも有効でしょう。
5. 店内の巡回
配膳ロボットの中には、巡回モード・クルージングモードが搭載されたものもあります。ルート・エリアを指定すると、その範囲内を自動で巡回する機能です。音楽を流しながら移動し、各テーブルにデザートを勧めたりサービスの案内をしたりと、アイディア次第で多用な活用方法があります。
配膳ロボットを導入する6つのメリット
飲食店への配膳ロボットの導入は「人手不足の解消」「ホール業務の効率化」「生産性・売上アップ」「非接触の実現」「話題性への期待」「顧客満足度の向上」と、主に6つのメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 人手不足の解消/人件費の削減につながる
配膳ロボットを導入すると、料理の提供や座席への案内をロボットに任せられます。その分、スタッフには違う業務を依頼できるため、少ない人数でもホール業務を回せるでしょう。
また、スタッフの代わりにロボットを使うことで、人件費の削減にもつながります。
2. ホール業務を効率化できる
配膳ロボットの最大積載量は30キロ以上、かつ一度に複数のテーブルへ移動できるため、人力では運べない量の料理提供を一度で済ませられます。提供に関わる業務が効率化されることで、ホール業務全般がよりスムーズに進むでしょう。
3. 生産性の向上/売上アップに期待できる
前述したように、配膳ロボットは下げ膳にも対応しています。複数のテーブルの配膳・下げ膳を一度で済ませられれば、座席の回転率が向上します。お客さんが増えることで、売上アップにも期待できます。
4. 非接触を実現できる
すでに紹介したとおり、配膳ロボットは座席の案内も可能です。入店から料理の提供までの非接触が実現できるため、コロナ禍でもお客さんは安心して利用できるでしょう。会計もセルフレジであれば、入店から退店まで一貫した非接触も可能です。
5. 話題性/集客効果を狙える
配膳ロボットはまだ日本では珍しいため、導入すると話題になるでしょう。特にネコ型のロボットは子どもや女性客から人気です。近所の店に導入されたと話題になれば、集客効果を狙えます。
6. 顧客満足度の向上につながる
ロボットに仕事を任せた分、スタッフは違う業務に携われます。接客や掃除などにこれまで以上に注力することで、顧客満足度アップに期待できます。
また、非接触を望んでいるお客さんの場合、案内や料理の提供が配膳ロボットなだけで満足度が高まるでしょう。
配膳ロボットのデメリット・導入時の3つの注意点
ここまで見てきたように、配膳ロボットには魅力が豊富です。導入するとホール業務の改善に期待ができますが、導入コストや無人化・自動化、稼働環境には課題が残ります。ここでは配膳ロボットのデメリットとして、導入前に知っておきたい注意点を紹介します。
1. 導入コスト/ランニングコストが発生する
配膳ロボットの購入は1台で数百万円かかります。1店舗に複数台、もしくはグループ店舗にも導入する場合、多大な資金を用意する必要があります。
レンタルやリースの場合は月に10万円ほどに抑えられますが、3年や5年契約が多いため、総額で考えると購入費用と大きくは変わらないでしょう。
2. 完全な無人化/自動化はできない
配膳ロボットができるのは料理や物の運搬のみです。食器類の上げ下げは自動ではなく、人力で行う必要があります。また、移動の指示を出すのも人間です。配膳ロボットといっても完全な無人化・自動化はできないため、ホールスタッフをゼロにすることは難しいかもしれません。
3. 導入できる環境に制限がある
配膳ロボットは、段差や通路幅など導入に制限があります。対応範囲はロボットによって異なりますが、段差は1センチ以下まで、通路幅は最小55センチが一つの目安です。店舗内に段差や幅の狭い通路があるとロボットの移動範囲が限定され、導入効果が薄れるため注意が必要です。
飲食店・配膳ロボットの導入事例
日本でも浸透しつつある配膳ロボット。一足早く導入している店舗は、利用客の待ち時間やスタッフにかかる負担の削減に成功しています。飲食店の導入事例を2つ紹介します。
50%削減 – 利用客の待ち時間を大幅に短縮
回転寿司店「魚魚丸 イオンモール東浦店」は他店舗より広いこと、スタッフ数が揃わないことで下げ膳に時間がかかり、お客さんを待たせる時間が長くなっていました。せっかく来てくれたお客さんに迷惑をかけないため、配膳ロボットの導入を決めています。
導入後は巡回モードによって下げ膳の手間が解消され、お客さんの平均待ち時間が約50%も削減されました。配膳ロボットが代わりに動いてくれることで、スタッフの作業負担も軽減され、満足のいく結果になっています。
約130時間の削減 – スタッフの負担を大幅に軽減
群馬県にある「お好み焼きKANSAI 伊勢崎宮子店」は、コロナ禍によって非接触サービスが求められたため、配膳ロボットの導入を決めています。
配膳ロボットが最大180回以上の配膳・下げ膳を行うことで、月間130時間におよぶスタッフの負担削減に成功しています。その分、スタッフは人でしかできない気配りやサービスを提供できるようになりました。
飲食店におすすめの配膳ロボット3選&比較一覧表
最後に、おすすめの配膳ロボットを3つ紹介します。どれも人気があり、多くの飲食店で導入されています。
PEANUT
- 各種センサーで料理を安全に配膳する
- タッチパネルで目的のテーブルを指示するだけの簡単操作
- 専用ヘルプデスクが24時間365日対応
PEANUTは料理の配膳から、テーブルを巡回しての下膳などの業務を行います。日々の業務をロボットと分担することで、人手不足の解消や店舗スタッフの削減にもつながります。
コロナ禍でも非接触による安全なサービスなので、安心してお客様をお迎えすることができます。
スタッフはお客様に対して人でしかできない細かなサービスに注力できるので、顧客満足度を上げられることが特徴です。
初期費用 | 月額料金 | 主な機能 | |
1台あたり | 385万円(税込み) | /安全性/簡単操作/抗ウイルスフォロー、サポート体制 | |
リースの場合 | 6万円~ |
Servi
- 業務用屋内サービスロボット世界売上一位(2022年4月末時点)
- 1日で約9時間分の作業を効率化できる
- 座席回転率の向上
Serviは高い移動機能や簡単な操作性が特徴です。3Dカメラ等のセンサーにより最短60㎝の幅でもスムーズかつ安全に料理を運べます。操作は目的地を選んでタップをするだけなので、テーブルや天井に目印を設置する必要もありません。
実際にServiを導入することでスタッフのホール滞在時間が約2倍になり、接客に一層時間を使うことでお客様満足度の向上に寄与しています。
初期費用 | 月額料金 | 主な機能 | |
3年プラン | なし | 119,800円 | /誰でも操作可能/高い移動性機能複数台利用可能 |
5年プラン | なし | 99,800円 |
BellaBot
- 世界各国で活躍中の最新配送ロボット
- AI音声機能を搭載
- キュートなデザインで子供から大人まで注目を集める
BellaBotは飲食業界の人手不足問題を解決し、ピーク時でも安定的な配膳サービスを非接触で実現します。40キロの積載量、4段の大きなトレーで一度に多くの料理を配膳できます。
スタッフが1日200~300皿の料理を運ぶのに対し、Bellaは約400皿の料理を運ぶことができるので、高い回転率に繋がります。
またAI機能搭載により、「見て・聞いて・触れて」コミュニケーションできるため快適性を提供できるのが特徴です。
初期費用 | 月額料金 | 主な機能 | |
HPには記載なし | HPには記載なし | /AI音声/ライトインタラクション/タッチによるフィードバック/豊かな表現力 |
配膳ロボットは飲食店の人手不足解消に役立つ
コロナ禍をきっかけに注目を集めている、配膳ロボット。お客さんを座席まで案内したり、配膳・下げ膳をしたりと、普段はスタッフが行っている業務を代行してくれます。
慢性的な人手不足に悩んでいる飲食店が配膳ロボットを導入すると、少ない人数でもホール業務がスムーズに進むでしょう。導入コストの高さが少しネックかもしれませんが、レンタルやリースも視野に入れて、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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