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診療予約システムとは|基本機能・仕組み・種類
診療予約システムとは、病院・クリニックの予約をオンライン上で受け付けるシステムのことです。施設側は受付に関わるスタッフを削減でき、患者側は24時間好きなタイミングで予約ができるなど、双方にさまざまなメリットがあります。
今回は診療予約システムの機能や導入メリット・事例、自店舗に合うシステムの選び方などを紹介します。
診療予約システムの基本機能
診療予約システムの基本機能は次の通りです。
- 予約管理:予約情報の一元管理
- 予約枠設定:受付枠の設定
- メール送信:予約やキャンセル情報の送信
- 顧客管理:個人情報や来院履歴などの管理
- 顧客分析:蓄積データを基にした顧客情報の分析
- 決済端末/外部システム:キャッシュレス決済やSNSなどとの連携
診療予約システムの仕組み
診療予約システムは「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。
<クラウド型>
受付情報や電子カルテなど、各種情報をクラウド上で保存・管理するタイプです。自社サーバーが不要なため、初期費用を抑えられます。
<オンプレミス型>
別名「オンプレ型」とも呼ばれ、自社サーバーを必要とするタイプです。サーバーの構築が必要なため初期費用は数百万円と高価ですが、セキュリティ面が優れています。
種類 | 自社サーバー | 初期費用 | セキュリティ |
クラウド型 | 不要 | 安価 | クラウドセキュリティが求められる |
オンプレミス型 | 必要 | 高価 | 強固なセキュリティ環境を構築できる |
なお、現在のトレンドはクラウド型であり、普及率は年々高まっています。
診療予約システムの種類
診療予約システムには、順番制・時間制・時間帯制の3つがあります。
順番制は来院順に発券機などで予約を受け付け、番号が早い順に診察の順番を通知します。時間制は「〇月〇日の△時」と予約日時を指定するタイプです。時間帯制はそれらが複合したもので、「〇時~〇時に△人受付」と枠を指定し、来院順に診察をしていきます。
診療予約システムの4つの主要機能
病院・クリニック向けの診療予約システムには、ネット予約・LINE連携・電子カルテとレセコンとの連携・非接触の来院受付といった機能があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. ネット予約
診療予約システムが導入された病院・クリニックでは、患者がパソコン・スマホ・携帯電話から予約可能です。電話予約と違って時間を気にせず好きなタイミングで予約ができるため、患者の利便性が向上します。
また、診察当日は受付後にスマホで診療状況の確認ができます。
2. LINE連携機能
診療予約システムには、LINE連携機能が備わっているものが数多くあります。
LINE上で予約できるだけでなく、予約完了やリマインド、診察の呼び出しといった各種通知も送れます。QRコードを読み取るだけで友だち登録されるため、2回目以降の来院のきっかけづくりにもなるでしょう。
3. 電子カルテとレセコン連携機能
診療予約システムの多くは、電子カルテやレセコンとの連携も可能です。連携すると予約・受付・診療・会計と、病院・クリニックにおける一連の工程を一元管理できます。
また、バラバラで管理していた各種情報が紐づけられることで、予約が入った際に診察室・受付で患者の来院履歴や診察内容をスムーズに確認できます。
4. 非接触の来院受付機能
診療予約システムは来院受付の非接触の実現を可能にします。病院・クリニックに設置された再来受付機に、患者が診察券を表示したスマホをかざすだけで受付は完了です。診察券の受け渡しがなくなることで、受付業務に関わる作業負担が軽減されます。
診療予約システムの市場規模・注目される背景・トレンド
診療予約システムの導入率は高く、市場規模も拡大していくことが予想されています。ここでは市場規模と導入率に加え、診療予約システムの導入時に活用できる補助金制度を紹介します。
拡大する市場規模 – 2023年度の国内医療ICT市場規模は1.28倍の予想

2022年7月に株式会社矢野経済研究所が発表した調査結果では、2023年度の国内医療ICT市場規模(事業者売上高ベース)が、2021年度比1.28倍の211億4,000万円になると予測されています。
診療予約システムは3密(密閉・密集・密接)回避に役立つことから、新型コロナウイルス感染症の蔓延以降、市場拡大が顕著のようです。
高い普及率 – 新規開業クリニックの6割以上が導入済み

同じく株式会社矢野経済研究所が2020年に行った「新規開業クリニックに関する法人アンケート調査」では、予約システムの導入率は62%と発表されています。半数以上が導入済みという結果から、注目度の高さがうかがえます。
IT導入補助金 – 制度の拡大、対象額は最大2年分まで引き上げ
診療予約システムの導入には「IT導入補助金2022」が使えます。今年度「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」に名称が変更され、サービス利用料の対象額は最大1年分から2年分まで引き上げられるなど、補助の範囲が広がりました。
<対象になるもの>
- 予約システム
- 電子カルテ
- POSレジ本体機器
- POSレジ周辺機器
- バーコードリーダー
- Wi-Fiルーター
- 配送設置費
- クラウド利用料 など
制度について、詳しくは公式ホームページをご確認ください。
病院/クリニックが抱える課題と導入メリット
ここまで見てきたように、診療予約システムは病院・クリニックの運営に役立つ機能が豊富です。導入することによる患者側のメリットも多いため、導入企業が増えています。ここでは診療予約システムが解決する課題と、導入メリットを紹介します。
待ち時間 – 患者が抱える不満の第一位の解消

過去に株式会社メディネットが行った調査では、外来患者が抱える不満トップ10の1位は「診察待ち時間(22.2%)」という結果です。

診察待ち時間に対する不満では「10分未満(3.7%)」「10~20分(6.0%)」と20分までは1桁台ですが、「20~30分(11.7%)」「30~40分(19.5%)」と、30分を超えると2桁になります。また「40~50分(35.9%)」と、40分を超えると不満度は一気に上がっています。
診療予約システムを導入すると、患者は診察・待ち状況をスマホで確認が可能です。呼び出し機能があれば、順番が来るまで買い物や用事を済ませるなど、待ち時間を有効活用できるため、患者の満足度向上に期待できます。待つことに対する不満が軽減されることで、クレームの減少にもつながるでしょう。
コロナ感染 – 約7割が不安に感じる密集の解消

2020年7月、⽇本医師会は「第7回 日本の医療に関する意識調査」を行っていました。その中の「医療機関の待合室などで感染症に感染する不安」という項目では、33.2%が「不安」と、36.1%が「やや不安」と回答しており、実に7割近くの人が待合室で不安を抱いていることが分かりました。感染への不安は、受診控えの要因になっていると考えられます。
診療予約システムがあれば、患者は待合室以外の場所で待機できます。密集の解消は感染予防につながるため、受診を控えていた患者が来院するかもしれません。
人手不足 – 約15%が離職、少ないスタッフ数でも円滑なクリニック運営を実現

2021年に日本看護協会が行った 「2021年 病院看護・外来看護実態調査」では、2020年度の離職率が以下のように発表されています。
- 正規雇用看護職員:10.6%
- 新卒採用者:8.2%
- 既卒採用者:14.9%
これらの数値は、ここ数年で特に改善の様子が見られないとのことです。コロナ禍で仕事を辞めたいと考える職員が増加したことで、人手不足に悩む病院・クリニックも少なくありません。
診療予約システムは予約・受付などに関わる業務が自動化されるため、人手不足の解決にも役立ちます。今まで受付業務をしていたスタッフに別の仕事を依頼することで、人手が少なくても業務をスムーズに進められるでしょう。
病院・クリニックおすすめ診療予約システム初期・月額比較7選
ドクターキューブ

ドクターキューブは4,000以上の導入実績がある病院向けの診療予約システムです。予約方式も順番予約・時間予約・時間枠予約の3つのタイプに対応しており、併用利用や途中の変更です。
機能面も豊富でリライト診察券・バーコード診察券・ジャーナル印字など必要な機能が網羅されており、チェックインの際は電子カルテと連動するため、順番情報や予約時のメモ送付もできます。
また院内表示ディスプレイはカスタマイズができ、1つ画面で全体把握ができます。音声呼び出しも可能でスムーズな受付管理が実現できます。
初期費用 | 月額費用 | 主要機能 |
お問合せ | お問合せ | LINE通知/院内表示ディスプレイリライト診察券 バーコード診察券自動音声予約/タッチパネル予約 |
詳細はこちら:https://jtc.doctorqube.com/
メディカル革命 byGMO

メディカル革命は病院やクリニックに特化をした診療予約システムで、予約受付から会計までをシームレスに効率化ができます。機能面も豊富でオンライン診療・LINE予約・IVRなどで受付の効率化にもつながります。
また受付に設置された予約時に取得できるQRコードによる非接触チェックインで、混雑を緩和。電子カルテとも連携しているため来院把握を自動化することができます。
キャッシュレス決済にも対応しているため、クレジットカードでの支払も可能でレジ会計時の待ち時間削減にもつながります。
初期費用 | 月額費用 | 主要機能 |
お問合せ | お問合せ | LINE予約/キャッシュレス決済 複数人同時予約/電子カルテ連携 自動電話予約/ロボット対応 |
詳細はこちら:https://medical-reserve.co.jp/
kakari for Clinic

kakari for Clinicは病院やクリニックでの予約を起点とした接点を、専用アプリやかかりつけ化につなげる診療予約システムです。アプリを通したサポートが得意でお知らせ配信・チャット・オンライン診療まで1つのアプリの中で利用できます。
またHPの作成も可能でテンプレート選択式のkakari for Clinicホームページ制作でHP制作を行うと、HPとアプリを連動させることも可能です。
初期費用 | 月額費用 | 主要機能 |
お問合せ | 9,800円~ | 予約台帳/予約枠指定 リマインド/HP制作/アプリ連携 電子カルテ/レセコン連携 |
詳細はこちら:https://kakari-for-clinic.jp/
ヨヤクル

ヨヤクルは病院の先生やスタッフの現場の声から生まれたクリニック向けの診療予約システムです。カスタマイズ機能も豊富で100種類以上の機能が備わっており、予約枠(科目)の追加・変更、予約方式の変更・メール配信など様々な機能の利用ができます。
電子カルテ連動や自動音声予約・リライト診察券・Web問診票・バーコード受付などクリニックを効率化する多くの機能が備わっています。
初期費用 | 月額費用 | 主要機能 |
176,000円~ | 9,900円~ | 時間帯/日時指定予約 バーコード受付/Web問診 電子カルテ連携/自動音声予約 リライト診察券/タッチパネル予約 |
詳細はこちら:https://yoyakuru.jp/
診療予約2022

診療予約2022はクリニック専用の診療予約システムで、シンプルでわかりやすい画面構成と操作性が特徴です。順番待ち・時間帯予約版・複合版に分かれています。
また診療予約2022は初期費用が0円で導入がしやすく、60日間の無料期間が設けられており気に入った場合に利用ができます。月額費用も10,000円からと低価格なのが特徴です。
初期費用 | 月額費用 | 主要機能 |
0円 | 10,000円~ | 時間帯/日時指定予約 バーコード受付/Web問診 電子カルテ連携/自動音声予約 |
詳細はこちら:https://www.medicalforest.co.jp/index.html
CureSmile(キュアスマイル)

CureSmile(キュアスマイル)はLINE公式アカウントを活用したオンライン診療予約システムで、専用アプリのログインは不要、15秒程度の操作で簡単に予約受付ができます。
そのため従来の電話予約・Web予約に加えて使いなれたLINE上からも患者側は予約ができます。受付業務の無駄や手間を削減したい・感染防止対策や三密回避をしたい・LINEでの受付を検討しているクリニックにおすすめです。
初期費用 | 月額費用 | 主要機能 |
110,000円 | 13,200円~ | 時間帯/日時指定/LINE予約 電子カルテ連携/Web問診 予約券発券/デジタル診察券 |
詳細はこちら:https://curesmile.jp/
3Bees

3Beesは病院・クリニック向けの診療予約システムでLINEで予約・順番待ち予約が可能です。LINE予約では日時指定予約・完了通知・リマインド通知・キャンセル通知が利用できます。
LINE予約自体はオプション機能のため単体で利用することはできませんが、新規で診療予約システムの導入を検討しているクリニックにはおすすめです。
初期費用 | 月額費用 | 主要機能 |
539,000円~ | 13,200円~ | 診察予約/順番管理/LINE予約 リマインド通知/日時指定予約 |
詳細はこちら:https://www.3bees.com/
診療予約システムの導入事例
診療予約システムの導入を迷っている場合は、導入事例が参考になります。ここでは、実際に診療予約システムを活用している医院の事例を紹介します。
導入事例 – 時間制にすることで診療待ちの行列が解消

『西馬込あくつ耳鼻咽喉科』は、診療待ちの行列が発生したことをきっかけに診療予約システムの導入を決めています。朝の診療前に発生していた行列が、システム導入後は見事に解消されたそうです。
また、診療予約システムは同医院に別のメリットをもたらしています。LINEと連携し、休診・検診・流行りの病気に関する情報を発信するなど、患者との院外コミュニケーションを取っています。その効果もあってか、LINEの友だちは7,700人を超え、登録者数は現在も増え続けているそうです。
導入事例 – LINE予約連携で月間検査数が300件を超える

『大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック』は医師が一人で診察するため、予約管理の効率化が課題でした。受付にかかる手間と時間を省くため、診療予約システムの導入を決めています。
診療予約システムの導入後は、ネットとLINEからの予約受付によりスタッフの手間が省けるようになりました。検査の予約数が増えただけでなく、午前・午後の予約の平準化に成功したそうです。少ないスタッフ数であっても、月300件を超える内視鏡検査を実現しています。
導入事例- クリニックの開業と同時に予約システムを導入、目標収益を達成

『なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック』は、開業と同時に診療予約システムを導入しています。導入前に期待したのは、患者の待ち時間の削減とスタッフの仕事量の削減です。
開業後は、目標としていた待ち時間の短縮と、予約・変更に関わる業務の効率化に成功しています。新患の多くがネット予約を利用しており、予約での新患はほぼキャンセルなしとのことです。結果、開業前の目標収益を早々に達成しています。
診療予約システムの選び方
病院・クリニックが診療予約システムを導入する際は「自院に適した予約種別か」「カスタマイズ性は優れているか」「外部サービスと連携可能か」といった部分に着目しましょう。ここでは診療予約システムの選び方を紹介します。
診療科目に適した予約種別を選ぶ
冒頭で触れた通り、診療予約システムには順番制・時間制・時間帯制があり、それぞれ適した科目は異なります。
順番制は基本的に来院順で診察するため、一人当たりの診察時間が長いと他の患者を待たせてしまいます。適しているのは、皮膚科や耳鼻科などの診察時間が比較的短い科目です。
次に、「〇月〇日の△時」と予約日時を指定する時間制は、診察時間に差がない科目に適しています。診察が長引き、指定の時間に呼ばれないと患者の不満につながるので注意が必要です。
「11時~12時」などと予約時間に幅がある時間帯制は、患者によって診察時間に差がある科目に適しています。仮に診察が11時50分に始まったとしても予約時間の範囲内のため、「時間通りに呼ばれない」といった不満を回避しやすいでしょう。
作業効率や患者の満足度を向上させるには、自院に適した種別の選択が求められます。
カスタマイズ性に優れたシステムを選ぶ
診療予約システムを選ぶ際はカスタマイズ性にも着目しましょう。
デザインがカスタマイズできるシステムであれば、予約画面を病院・クリニックのイメージカラーに変更可能です。院内のディスプレイや診察券、ホームページ、予約画面などのカラー・デザインが統一されているとブランドイメージが強くなり、自院のブランディングにつながります。
また、予約種別を変更できるシステムであれば、診療内容に合わせてカスタマイズできて便利です。
他システム/外部サービスとの連携機能で選ぶ
診療予約システムは、製品によって連携できる外部サービスが異なります。多くの病院・クリニックが連携しているのは、電子カルテ・キャッシュレス決済・POSレジ・会計ソフトなどです。
気になる診療予約システムを見つけた際は、自院が望む外部サービスと連携できるか確認しましょう。その上で、別途費用が発生するのか、連携によって使い勝手が悪くならないかなど、細かい部分も見ていくことをおすすめします。
診療予約システムの導入は病院と患者の双方にメリットがある
診療予約システムを導入すると、24時間自動で予約受付が可能です。患者は自分の好きなタイミングで予約でき、病院は受付に関わる人員を削減できます。
また、待合室の3密が解消されれば患者の抱える感染への不安と、病院が懸念する集団感染の発生リスクも低減できるでしょう。
このように、診療予約システムは患者と病院の双方にメリットをもたらします。この機会に、自院に適した診療予約システムを探してみてはいかがでしょうか。