電子棚札(ESL)とは
電子棚札(ESL)とはElectric Shelf Labelの略称で、スーパーやコンビニの値札がデジタル化されているものです。
以前は液晶モニターなどのものが多かったですが、現在は電子ペーパーが主流となっています。電子ペーパーとは薄型の紙のような表示パネルであり、液晶パネルよりも表示速度などは遅いですが、電力のコストカットなどの観点から主流となっています。
電子棚札(ESL)の価格表示の仕組み
電子棚札(ESL)の仕組みは簡単です。商品棚に電子棚札を設置します。後は、管理システムからWifiや赤外線通信などを介して価格情報を送信できます。
電子棚札の大きな特徴は人が値札を変更しなくても柔軟に価格変更ができることです。価格だけでなく、キャンペーン情報やQRコードの表示なども可能で、大規模のスーパーなどでも作業効率化の点からも導入されています。
電子棚札の3つの種類
- セグメント型
- モノクロアクティブマトリクス型
- カラーアクティブマトリクス型
電子棚札には大きく3つの種類があります。セグメント型はシンプルな表示が特徴です。モノクロアクティブマトリクス型は高解像度でお客さまにあわせて価格以外の表示もできます。カラーアクティブマトリクス型は赤や黄色などの表示でき、キャンペーン中のものを強調することに活用できます。
電子棚札の3つのメリット
電子棚札の導入メリットを3つ紹介します。
一括価格変更でミス削減・店舗オペレーションの効率化
電子棚札を導入する1つ目のメリットは、「一括で価格変更することで、ミス削減・店舗オペレーションの効率化ができる」ことです。従来の値札は人力で一枚一枚に長い時間かけ値札の貼り直しが必要でした。しかし、電子棚札を活用することで、管理システムより一斉送信で変更できるようになります。
従来発生していた貼り直しの時間やコストの削減や、人的ミスを防止が期待できます。
ダイナミックプライシングによる最新価格の表記
電子棚札を導入する2つ目のメリットは、「ダイナミックプライシングによる最新価格の表記」です。ダイナミックプライシングとは、需要に応じて価格を決めるという手法です。飛行機やホテルの価格決定に活用されています。
電子棚札を活用することで、他店の価格に合わせて価格を変更するなど柔軟な価格設定ができるでしょう。
位置情報を活用した販促・OMO施策の展開
電子棚札を導入する3つ目のメリットは、「位置情報を活用した販促・OMO施策の展開」です。スマートフォンの普及にともない購入時に商品の詳細やレビューを調べてから購入するというユーザーが増えました。電子棚札を活用することで、NFCを活用しスマホを近づけるだけで、商品情報やレビューの確認ができます。
また、それ以外に位置情報を活用した販促も期待できます。例えば、事前にチラシでチェックしていた商品をスマホ上の店頭地図で確認し、近づくと電子棚札のLEDが光るといった仕組みです。このように、電子棚札はオンラインとオフラインをつなぐ起点として活用できます。
電子棚札の市場規模・注目される理由
電子棚札の市場規模や注目される理由を紹介します。
2027年には28億5,760万ドルまで成長、電子棚札の市場予測
世界の電子棚札市場規模は2017年時点で3億9200億ドルでしたが、2019年には6億3,080万ドルと評価されました。わずか2年で2倍近く市場規模が成長したのです。さらに、2027年までに28億5,760万ドルに成長すると予測されています。
スマートフォンの普及により、買い物客は実店舗からECへと移行しています。コロナ禍はこの流れを加速させ、コロナ禍が実質終息した2023年3月以降も、実店舗はさまざまな困難に直面してきました。
EC登場やコロナ禍の前と比べ、実店舗の売上アップは難しくなっています。売上アップが難しいなら、経費を削減するしかありません。
人力で値札を変えなくても良い電子棚札を導入することで、必要な人員数が減り、人件費を削減できるでしょう。特に日本は少子高齢化による労働力の不足が深刻であり、導入メリットは人件費削減だけに留まりません。
電子棚札が社会に普及するほど、規模の経済により導入コストは下がっていくでしょう。人件費削減や人手不足の解消を目的に電子棚札を導入する店舗は増え、導入増によるコストダウンがその流れをさらに加速させるでしょう。
店舗のデジタル化による購買データ活用・EC連携
電子棚札が注目されているもうひとつの理由として、購買データの活用や実店舗とネットショップの連携が進んでいることが挙げられます。
テクノロジーの進歩により、顧客のオフラインの行動の取得が可能になりました。誰がどのような商品を手に取ったのかなどを分析することにより、商品ラインアップの検討などに活用できます。電子棚札をRFIDやNFC(※)などと併用することで、顧客の行動分析への活用と、それを踏まえた価格調整が期待されています。
RFIDは電波により読み取りができる商品タグのことで、読み取り機に商品カゴを置くだけで、商品を自動でスキャンできます。たとえばユニクロの無人レジで活用されています。NFCは近距離無線通信のことで、スマートフォンやカードなどの「かざす決済」で利用されています。
【おすすめ7選】電子棚札のシェア・メーカー比較
電子棚札を提供しているメーカー7選のシェア率やおすすめポイントを紹介します。
株式会社イシダ(シェア70%)
- 価格表示ミスほぼゼロを実現
- 高い視認性
- 貼り替え作業の負担軽減
株式会社イシダは、電子棚札でシェアNo1の企業です。通常の値札と比べて高い視認性の値札を提供しています。また、システムから一括で情報を送信するため価格表示ミスもほぼありません。また、POSデータとの不一致によるロスもなくします。
詳細はこちら:https://www.ishida.co.jp/ww/jp/products/signage/esl/
パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社
- LEDライト搭載によるオペレーション改善
- NFCを使用した情報取得
- 電子ペーパーによる高い視認性
パナソニックが提供している電子棚札は、「白・黒・赤」「白・黄・黒」など高い視認性でキャンペーンなどに活用できます。またLEDを搭載しており、該当商品を光らせることで商品を探す時間など大幅に削減できます。また、オプションで、NFCを活用した情報取得サービスも提供しています。
詳細はこちら:https://panasonic.biz/cns/invc/tanafuda/
凸版印刷株式会社
- ダイナミックプライシング対応
- 省電力・省エネルギー
- 店頭デジタル化のきっかけ
凸版印刷が提供する電子棚札は約5年の寿命がある電池を採用しており、省電力につながるとともに、従来の紙の値札のコストを削減につながる。また需要に応じた価格表示のダイナミックプライシングにも対応しています。
詳細はこちら:https://solution.toppan.co.jp/toppan-digital/service/storedx.html
株式会社寺岡精工
- POPの付け替えコストも削減
- 水場、冷蔵庫などさまざまな場で活躍するラインアップ
- 店内のさまざまな場所で運用可能
寺岡精工が提供する電子棚札は、−25度から40度まで対応できるものや耐水性があるものなどさまざまな売り場で活躍するラインナップを提供しています。また、無線通信で価格が一斉に変更できるため柱などの障害物などの影響も受けません。
詳細はこちら:https://www.teraokaseiko.com/jp/products/category/002/
E Ink Japan株式会社
- 電子インク・電子ペーパーを提供
- 電子タブレットなどなどさまざまな分野のラインアップ
- 3色表示の電子棚札を開発
E Ink Japanは、電子インクや電子ペーパーなどを提供している企業です。電子タブレットやウェラブルデバイスなどさまざまなプロダクトに技術提供しており豊富なノウハウがあります。また、E Inkが提供する電子棚札は赤・黄色・白などの3色表示することが可能です。
詳細はこちら:https://jp.eink.com/application/detail/ESL
株式会社アイニックス
- 7色LED、2倍の電池寿命などの高機能次世代ESLを提供
- 電子ラベルから押しボタンなどさまざまな機能を取りそろえるラインアップ
- グラフィック表示なども可能
株式会社アイニックスが提供する電子棚札は、7色のLEDを搭載した次世代モデルからアパレルに使用できる電子ラベルまで幅広いラインアップを取りそろえています。また、グラフィックなども表示できるモデルでは値札だけでなく、POPや案内板としても活用できます。
詳細はこちら:http://www.ainix.co.jp/products/biometrics_service/digital_signage/
株式会社フォーバル
- リアルタイムの価格変更
- ペーパーレス化によるコストカット
- ECサイトなどオンラインとの連携
株式会社フォーバルは、電子棚札の導入から運用までをワンストップで対応します。また企業のデータ形式を問わずにさまざまなカスタマイズが可能です。また、テストマーケティングとして導入したい場合などに備えレンタルプランなども取りそろえています。
詳細はこちら:https://www.forval-iot.jp/solution/kakumei/
スーパーや家電量販店で導入 – 電子棚札のEC連動・活用事例3選
最後に、実際に電子棚札の導入している事例を紹介します。
株式会社ビックカメラ
ビックカメラは全店舗で電子棚札を導入しています。電子棚札の導入には、2つの理由がありました。
1つ目はECサイトなどの影響によるリアルタイムの価格変更での対応です。家電量販店は、競合やECサイトなどの価格を受けた価格変更の作業量に大きな負荷がかかってました。しかし、電子棚札を活用することにより作業の効率化が可能です。
2つ目は、現在力を入れている取り置きサービスとの連携です。ECサイトなどでの購入を実店舗に取り置き対応することへの活用が期待されています。
電子棚札のLEDを光らせることで消費者が顧客を取り寄せた商品がどこにあるのかがすぐに簡単に把握できます。このように、実店舗はECサイトのショールーミングストアとして新たな役割を検討しています。
株式会社ノジマ
ノジマは2019年10月に全184店舗への導入が完了したと発表しています。全店舗での導入は日本初です。電子棚札を導入したことにより、今まで値札の貼り替えに費やされていた時間を他の業務に活用できるようになりました。
消費税変更の際の切り替え時間はほとんどゼロに近かったそうです。このように電子棚札を導入したことで店頭業務の効率化を実現しています。
株式会社ファミリーマート
ファミリーマートはIoTやデータ活用を軸とした次世代型ストアの実証実験の一環として、電子棚札を導入しています。
電子棚札を導入することで、POP作成業務や貼り替え業務などの大幅効率化を実現しました。この実証実験では他にIoTなどによるデータ分析などを通して、最適なオペレーション実現などを目指しています。
電子棚札を活用し、AI・デジタル時代の未来型ショッピングと顧客体験を
電子棚札は作業効率化だけでなく、オフラインがオンラインとつながり新たな顧客体験を実現するためのきっかけになります。
例えば、今までは人力で行っていた実店舗とネットショップとの価格統一も、時間をかけずに対応できます。オムニチャネル展開やショールーミングなどが注目される現代社会において、実店舗とネットショップの価格統一のタイムラグをなくせるメリットは大きいです。
また、ビックカメラの事例のようにECサイトで購入した商品がどこにあるのかをLEDで光らせたり、アプリ内の地図で位置情報をリンクさせたり、今までにない顧客体験を実現するきっかけになっています。
電子棚札の導入効果は作業効率化や人件費削減に留まりません。自社の場合はどのように活用できるのかを考え、早めに導入しましょう。