商圏分析とは|分析調査のやり方と手法・活用事例と5つのステップ・無料&有料ツール比較10選

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商圏分析とは

商圏分析とは国勢調査による統計や、顧客データなどを利用することで、出店検討地や予定地周辺の市場環境・地域特性の把握を目的とした分析手法です。

具体的には店舗の出店戦略や販促戦略といったマーケティング戦略を検討するために活用されます。

今回は商圏分析を進めるステップや、活用事例を交えて分析ツールを紹介します。

商圏分析の目的とメリット

商圏分析の主なメリットは、次の通りです。

  • 業態ごとに適した出店エリアがわかる
  • 地域特性がわかり、適切な広告・戦略が打てる
  • 既存店舗の改善にも役立つ

商圏分析ではエリアごとの住人層や地域特性がわかります。そのため、新規出店をするにしても、既存店舗の運営方針を改善するにしても、より適切な施策を打ちやすくなるでしょう。ターゲットがあまりいないエリアに出店してしまうリスクも、既存店舗で的外れな広告・戦略を打ってしまうリスクも軽減できます。

商圏分析の目的と5つの活用場面

商圏分析とは、どのような目的で、どのような場面で活用されるのでしょうか。

主に次のような場面で利用されます。

新規出店・店舗開発

出店候補地を選び、来店が可能な範囲を「商圏」として括ります。

この商圏内の各データを活用することで、「出店によってどの程度の利益を見込めるか?」「どのような店舗にすれば利益を伸ばせるか?」を想定していくことが可能です。

チラシやダイレクトメールなどの販促戦略・分析

商圏内のデータを理解することで、チラシやDMといった販促戦略を取る際も、「どの地域に」「どういった内容の販促を行うか」が見えてきます。

事前に分析することで、効果の薄い範囲への販促戦略を避け、無駄なコストを抑える事が可能です。

エリア別の顧客分析による自社の強み理解

会員データやPOSデータといった顧客情報を商圏データと照らし合わせると、自社が強いエリアや年代などが把握できます。

面で自社の強みを理解することで、自社にとって最適なアプローチ戦略の検討が可能となります。

商圏別の売上分析

複数の店舗を展開する会社であれば、各商圏ごとの売上内容を分析することで、自社が向いている環境や、出店地での問題点を洗い出す事が可能です。

こういったデータの蓄積によって、今後の展開戦略を練ることが可能となります。

営業戦略の立案

商圏分析によって得たデータは、様々な営業戦略においても役に立ちます。

売上の良い商圏があれば、似た条件の地域でも売上が見込めます。逆に、出店すべきでない商圏や、反響の良い商品が他の地域と違う商圏、といった様々な情報を得る事も出来ます。

それらを総合することで、社の営業戦略を立案していくことが可能です。

商圏分析の実施で必要な6つのデータ

では、商圏分析を行う際、必要になるデータとは具体的にどのようなものでしょうか?

(1)エリア特性:人口・世帯特性や市場規模など

最初に必要となるのは、対象地域のエリア特性の把握です。

対象地域の人口数や、年齢・性別割合といった属性別の構成比率など市場成長も考慮します。出店する際にターゲットとなる人口が増えているかどうかは、非常に重要なポイントとなります。

(2)需要特性:地域別の消費動向やライフスタイル

次に、エリア内の需要特性を把握します。

地域に住んでいる潜在顧客はどんな消費行動特性があるのか、どのようなライフスタイルなのかを把握します。

バスや車を使うのかといった移動手段や、週末の過ごし方などを洗いだし、どのような重要が隠れているのかを分析しましょう。

(3)チャネル特性:地域の商習慣

その地域の商習慣も分析ポイントの1つです。どんな特徴のスーパーが利用されているのか、コンビニや小型スーパーが多いのか。もしくは通販をメインにしているのかといった観点です。

利用されやすいチャネルを把握できれば、提供する商品やアプローチ手法の選定材料にもなります。

(4)競合特性:競合企業のマーケットシェア・提供サービス

競合となる店舗がどれほど出店数があるか、マーケットのシェアはどの程度なのかも把握しましょう。

また競合の出店状況が把握した後は競合店の特徴や距離感も分析し、自社の優位性も踏まえた判断も重要です。

(5)文化や風習特性:生活習慣や地域の風習

データとしては見えにくいですが、地域ごとの文化や特性にも気を付ける必要があります。

具体的に言えば、料理の味付け傾向や、各種年中行事が行われる時期など県民性といった部分も戦略のヒントになる場合があります。

(6)商圏バリア:来店の障壁となる大型施設・河川

また見過ごしがちなのが、大型の商業施設や高速道路、河川などの商圏バリアです。

こうした商圏バリアは、顧客の導線を狭めてしまうことが想定されます。地域での出店店舗が少ない場合は、必ずしも影響するとは限りませんが考慮しておきましょう。

商圏分析の調査手法・5つのステップ

商圏分析のステップ
商圏分析の調査手法・5つのステップ

把握すべきデータが分かったら、次は具体的な調査手法の例をご紹介します。

(1)顧客・店舗情報などの自社データのマッピング

まずは、自社や競合店舗などの住所情報を地図上に展開しましょう。

更に現在手に入れている顧客の情報も合わせて展開していきましょう。

(2)最適な自社商圏エリアの把握

店舗や顧客の情報をマッピングしたら、それらを基に自社の商圏エリアを把握します。

どの程度の地域までならしっかりとした売上があるか?どこから売り上げが落ちてくるのか?そういった点に着目し、実勢商圏エリアとして扱える最適な範囲を把握していきます。

(3)統計情報を統合し分析

次に、実勢商圏エリアと顧客情報に、国勢調査データなどの統計データを合わせた分析を行います。

商圏内の人口比や年代、富裕度特性などを把握することで、自社が商圏内でどういった範囲の人間を顧客に出来ているかなどを把握することが出来ます。

(4)エリア別の商圏レポート作成

上記までのレポートを、各エリア別に作成していきます。

そしてエリア別の内容の差異に関しても分析し、社内で検討する際の参考情報として提出し、関係者を招集し吟味しましょう。

(5)営業・販促戦略の実行とPDCA

各エリアの情報やエリアごとの差異を洗い出したら、それを基に営業・販促戦略を取っていきます。

戦略を実行した後は、再び商圏データを洗い出すことによって成果や問題点を認識し、次の戦略に生かしましょう。

無料で使える商圏分析ツール・ソフト5選

こういった商圏分析を行うには、様々なツールを用いる必要があります。

まずは、無料で使用出来る分析ツール・ソフトを5つご紹介していきます。

GIS・商圏分析ソフトの比較まとめ詳細はこちら。

GIS・商圏分析ソフトの比較まとめ詳細

jSTAT MAP

jSTAT MAP

●特徴

  • 総務省が公開
  • レポート出力可能
  • 国勢調査の数値も出力可

「jSTAT MAP」は、総務省が公開している政府統計の総合窓口「e-Stat」で公開されているツールです。

国が公開しているものなので、安心して使用することが出来ます。

詳細はこちら:https://jstatmap.e-stat.go.jp/jstatmap/main/base.html?1567934105591

地域経済分析システム「RESAS」

地域経済分析システム「RESAS」

●特徴

  • 地方創生支援
  • ビッグデータの集約
  • 人の移動の可視化

地域経済分析システム「RESAS」は、地方創生を支援するために、経済産業省と内閣官房が提供しているシステムです。

時間帯ごと人の移動なども確認することが出来ます。

詳細はこちら:https://resas.go.jp/#/13/13101

QGIS

QGIS

●特徴

  • オープンソース
  • ブラウザ使用可能
  • 多機能

「QGIS」は、完全無料でありながら有料のシステムに近い機能や操作性を備えたソフトウェアです。

オープンソースとなっており、機能の追加等は無料のプラグインでインストール可能。

稼働もブラウザで行う事が出来る点が魅力です。

詳細はこちら:https://qgis.org/ja/site/index.html

ロケスマ

ロケスマ

●特徴

  • チェーン店の出店状況把握
  • アプリで使用可能
  • データの別途購入も可能

「ロケスマ」では、全国各地のチェーン店情報をマップで知ることが出来ます。

無料アプリでの利用が可能で、競合となり得るチェーン店の情報を気軽に得る事が可能。データを別途で購入し、自由に活かすことも可能です。

詳細はこちら:https://www.locationsmart.org

e-Stat

e-Stat

●特徴

  • 政府統計の総合窓口
  • 業種や地域ごとに様々なデータを閲覧可能
  • 内容はほぼ全ての国勢調査

「jSTAT MAP」を公開する「 e-Stat」では、地図情報以外にも多くのエリア情報を得る事が出来ます。

統計データ量は政府サイトだけあって多岐に渡り、様々な観点から戦略に繋げることが出来ます。

詳細はこちら:https://www.e-stat.go.jp

高度な分析ができるおすすめ有料商圏分析ツール・ソフト5選

上記のツールは無料のものでしたが、更に高度な分析が可能な有料のツールも存在します。そちらも5つご紹介していきましょう。

MarketPlanner

MarketPlanner

●特徴

  • スマホ・タブレット・パソコンでの利用に対応
  • 人流データ、年収や貯蓄、将来人口など最新の統計データを利用した商圏判定が可能
  • 長年業界に精通しているパスコ独自の候補物件評価ロジックを搭載

「MarketPlanner」では、初めてGISシステムを利用する企業も安心出来るように、問い合わせに対応する専任のデスクや情報の集まるユーザーサイトが開かれているほか、操作アドバイスをする機能を搭載し、マニュアルがなくても安心して操作が可能です。

価格初期費用無料トライアル
変動(要問合せ)変動(要問合せ)なし

詳細はこちら:https://biz-pasco.jp/service/market-planner/

Market Anlyzer

Market Anlyzer

●特徴

  • 直感的に使える操作性
  • 高い機能の拡張性
  • 豊富なデータラインナップ

「Market Anlyzer」では、直感的なインターフェースによって多様なデータを扱うことが可能です。

「出店余地エリアランキング機能」といった、営業戦略に活かせる機能が多くそろえられている他、スタンダードな導入版から必要に応じて追加の機能を購入して行けるシステムのため、最適なコストで運用可能。

価格初期費用無料トライアル
15000円(月額)550000円なし

詳細はこちら:https://www.giken.co.jp/products/marketanalyzer/

MAP-STAR LTⅡ

MAP-STAR LTⅡ

●特徴

  • 幅広いデータに対応
  • 自由度の高い四則演算機能
  • 追加オプションアリ

「MAP-STAR LTⅡ」では、国勢データやコンビニ、スーパー、学校などといったポイントのデータといった幅広いデータに対応。

システム上に四則演算を入力するだけで様々な比較を手軽に行う事も可能です。

価格初期費用無料トライアル
変動(要問合せ)変動(要問合せ)なし

詳細はこちら:http://www.ybco.co.jp/product_lt2.html

楽商地図

楽商地図

●特徴

  • 国勢データ標準搭載
  • 自社データも簡単に導入可能
  • 簡単な基本操作

「楽商地図」でも、国勢データは標準搭載。

自社データの活用なども簡単な操作で実行可能なので、扱いやすいソフトです。

費用に関しても通常ライセンス版、期間限定ライセンス版とどちらも低価格なので、他に比べ気軽に導入することが可能です。

価格初期費用無料トライアル
41040円(3か月限定ライセンス)162000円(通常ライセンス)なし

詳細はこちら:https://www.mapquest.co.jp/rakushochizu

商圏分析で戦略的な新規出店・販促活動を実践しよう

商圏をきちんと分析することで、感覚や場当たり的でない具体的な戦略を練ることが可能になります。

それらをきちんと生かし、より効果的な新規出店や活動を行えば、会社はより大きく成長できるかもしれません。