飲食店の集客において「場所」は命です。本記事では飲食店に適した7種類の立地について、それぞれのメリット・デメリット、適した業態や必要な戦略について解説。立地選びの際に集めるべきデータと、実地調査のコツも紹介します。
飲食店の集客では「場所」がとても大切
飲食店の成功において、場所は非常に重要な要素です。適切な場所を選ぶことは、集客や売上に大きな影響を与えます。この記事では、飲食店の立地について詳しく掘り下げ、成功のためのポイントを紹介します。
飲食店はどんな場所に出すべき?7種類の立地と適した業態
飲食店の成功は、立地と業態の組み合わせにかかっています。飲食店に適した7種類の立地について、それぞれのメリット・デメリット、どんな業態に適しているのかを解説します。
駅前
駅前の立地は集客力が高く、利便性が高い一方で、家賃が高く競争が激しいというデメリットも存在します。飲食店経営者は、これらの要因を考慮し、戦略的な立地選びを行う必要があります。
メリット
駅前は通行人の流れが非常に多く、毎日多くの人々が通ります。特に通勤客や観光客が多い場所では、ランチや夕食の需要が安定しています。
駅前のお店はお客さまにとっての利便も高いです。駅からのアクセスが良いため、仕事帰りやショッピングの途中に立ち寄る人も多いでしょう。特に仕事帰りに立ち寄る人はリピーターにもなりやすいです。
また、観光地や観光名所に隣接する駅前は、観光客向けの飲食店にとって魅力的な立地です。観光客は「地元ではできない新しい食事体験」を求めることが多く、その地域の特産品や料理を提供することで、彼らを引き寄せられるでしょう。
デメリット
先述のとおり、駅前の物件は好条件に恵まれており、そのため家賃が高い傾向にあります。競争が激しいため、家賃が高騰することもあるでしょう。飲食店経営において、高い家賃は利益を圧迫する要因となります。
好条件であるためライバル店も多いです。特に同じカテゴリーの競合店が多い場合、集客競争が激しく、かけたコストに対して思うように利益がでないこともあるでしょう。
繁華街
繁華街の立地は人通りが多く、周辺施設との相乗効果を享受できるメリットがありますが、高い家賃や競合店の多さといったデメリットも考えなければなりません。繁華街に進出するなら、戦略的な立地選びとライバル店との差別化が成功の鍵となります。
何より、繁華街は夜遊びや夜間のエンターテイメントが盛んな場所が多く、居酒屋やバーをはじめとする夜間営業に適しています。夜の需要をいかに取り込めるかが、売上に直結してくるでしょう。
メリット
繁華街は人通りが多く、目立つ看板を掲げているだけでも多くの人々にアピールできます。特に夜間や週末には多くの人々が飲食店を探しており、この時間帯に多い客層へのアピールを考え、のぼりや看板のデザイン・内容を考えることが重要です。
映画館やライブ会場などの周辺施設へのアクセスも良く、映画の上映やライブなどの待ち時間・終了後の語り場としてお店を探す人も多いです。これらのイベント前後の人たちをいかに集めるかが、繁華街での集客の要となるでしょう。
デメリット
駅前と同じく、繁華街の家賃は一般に高く、ライバル店も多いです。高い家賃は利益率を圧迫する可能性があり、コスト管理は難しくなるでしょう。同じカテゴリーの競合店が多い場合、競争が激しくなることもあり、ライバル店との差別化が求められます。
繁華街は混雑しやすく、特に休日は駐車場も埋まりやすいです。このような立地で店舗専用の大きな駐車場を用意するのも難しいでしょう。電車やバスでのアクセスはもちろん、車でのアクセスも考え、コインパーキングの多いエリアを狙うといいでしょう。
オフィス街
オフィス街の立地はランチ需要が高い、集客が安定しやすいなど多くのメリットがありますが、ライバル店の存在や家賃の高さといったデメリットも考えなければなりません。ターゲット層に合わせた戦略と、特需を活かす工夫が求められます。
メリット
多くのオフィスビルや会社が集まるエリアであり、ビジネスパーソンが多く訪れます。カフェや料亭などの飲食店は、仕事の合間やビジネスミーティングの際に便利な場所として選ばれやすいでしょう。
ランチ需要が高いのもオフィス街の特徴です。昼間に多くのビジネスパーソンが働いており、「安い」「美味い」「早い」にこだわりランチ営業に力を入れることで、彼らを惹きつけられるでしょう。
これらの理由から、オフィス街の飲食店にはリピーターがつきやすいです。仕事に関連する集客が中心なため、季節や曜日に左右されにくい傾向があります。
デメリット
繁華街が隣接したオフィス街は別として、周辺の会社がやっていない夜間や週末には閑散とすることがあります。夏や年末年始など、オフィスでの出勤が少ない時期には集客が減少することも考えられます。
経費削減のために営業時間を調整したり、休日に人を集めるためのプロモーションをしたりといった工夫が必要です。
ただ、オフィス街は基本的に好立地であり、そのため多くの飲食店が集まります。ライバル店が多いうえ、ランチ需要が高いがゆえに価格競争も激しくなりやすいでしょう。価格だけではない差別化戦略や質の高いサービスが求められます。
オフィス街の物件は企業の入居を前提としているため、もちろん家賃も高いです。
商店街
商店街の立地には地域住民にアピールしやすいこと、コミュニティ感がありリピーターを獲得しやすいことなど多くのメリットがありますが、客数の限界やアクセスの不便さといったデメリットもあります。
商店街に進出する場合は、地域との連携や共同プロモーションを活かし、地域密着型の店舗展開をすることが成功のカギです。
メリット
商店街は地域社会に根ざした存在であり、地元の人々からの支持を受けやすい場所です。地域住民に親しまれることで、リピーターを着実に増やしていけるでしょう。
そのためには「コミュニティ感」が重要です。商店街は地元コミュニティの一部として位置づけられるため、コミュニティ感を大切にする飲食店が好意的に受け入れられます。
商店街内の店舗は共同でプロモーションやイベントを行う機会も多いです。協力して行うことで、新たな顧客を引き寄せるチャンスが広がります。
普段からコミュニティ感を大切にし、周辺店舗との協力を意識することで、地域イベントやフェスティバルなどによるイベント需要が期待できます。
デメリット
商店街のデメリットといえば、やはり「客数に限界があること」でしょう。地域密着型であることは商店街のメリットですが、限られた地域の住民や訪問者しか集客できません。最近はシャッター街となる商店街も多く、「商店街自体が寂れる」というリスクもあります。
商店街が市街地から離れている場合、アクセスの不便さも懸念材料です。商店街は道幅が狭く駐車場も少ないのが一般的で、徒歩や公共交通機関でのアクセスしやすさが集客力に直結するでしょう。
住宅街
住宅街に飲食店を出店する場合、地域住民からの安定した需要や口コミによる集客などのメリットがあります。しかし、来客数の限界や周辺住宅への配慮が必要なことなど、気をつけるべきことも多いです。住宅街の飲食店では、地域社会との協調を大切にすることが成功のカギといえます。
メリット
住宅街に位置する飲食店は、周辺住民からの安定した需要が期待できます。お店が気に入った地域住民は日常的に訪れてくれるだけでなく、友人・知人を連れてきたり、いい口コミを広めたりしてくれるでしょう。
地域社会に密着したお店として受け入れられれば、地域のイベントやコミュニティ活動への参加が期待できます。イベントによる特需が見込まれるのはもちろん、地域への貢献が評価され、さらなるイメージアップ・集客ができるでしょう。
住宅街の飲食店はアットホームな雰囲気を持つことが多く、家庭的な雰囲気を好む顧客に支持されます。子育て世帯や高齢者のいる世帯が多いエリアでは、座敷や個室の席を多めに作ることで、彼らをリピーターにできるでしょう。
競争の少なさも住宅街の魅力です。リピーター確保の工夫は必要ですが、一度お店が地域に受け入れられれば、安定した集客が期待できるでしょう。
デメリット
住宅街の飲食店は周辺住民を主な顧客とするため、来客数には限界があります。集客範囲が狭いため、急成長を望む場合には適していないでしょう。コツコツとした経営努力で、少しずつ常連客を増やしていくことになります。
集客範囲を少しでも広げるために、出入りしやすくなるべく広い駐車場を用意しておきたいです。ただ、広い駐車場を確保するには大きな土地を確保するか、店舗のスペースを小さくするかしなければなりません。
また、騒音や酔客のトラブルなどによるダメージも懸念されます。トラブルをを最小限に抑え、地域社会と良好な関係を築くことは、リピーター確保が特に重要である住宅街では欠かせません。
ロードサイド
ロードサイドに飲食店を出店する場合、通行料の多さとアクセスしやすさを活かして、広い範囲からの集客が期待できます。
しかし、高い家賃や競争の激しさ、駐車スペースの確保、交通騒音といった課題もあります。これらを踏まえ、ライバル店との差別化を図ることが成功のカギです。
メリット
交通量が多いロードサイドに位置する飲食店は、多くの人から認知してもらえます。通行する人々に目に留まりやすく、新規顧客を引き込みやすい環境です。車や公共交通機関でのアクセスもしやすく、広いエリアからたくさんのお客さまを呼び込めるポテンシャルもあります。
周辺の店舗や商業施設から、買い物客や観光客を引き込む機会も多いです。ショッピングモールや観光名所に近接することで、より多くのお客さまが来店してくれるでしょう。
デメリット
ロードサイドは好条件の立地であり、そのため家賃も高いです。ライバル店も多く、競争力を維持するためには、高いクオリティや独自性が求められます。集客や差別化のためのコストもかさむでしょう。
ロードサイドには多くの車が通行するため、駐車スペースの確保が必要です。駐車場不足はお客さまにとっての利便性、言い換えれば集客力に直結するとすらいえます。
車の通行量が多いため、騒音や排気ガスの影響も受けやすいです。環境への配慮や快適な食事環境の提供など、考えることは多いです。
商業施設
商業施設内の飲食店は、固定客(テナントスタッフ)の獲得やショッピング客へのアピールに優れた立地ですが、高い家賃や激しい競争、施設のルールによる縛りなど課題も多いです。成功のためには、差別化したサービスや集客力の向上、適切な営業戦略が必要です。
メリット
商業施設はショッピング客が多く訪れる場所です。買い物客を引き込む機会が多く、新規顧客を獲得しやすいです。
ショッピング客だけでなく、施設内の店舗やオフィスなどのスタッフからの需要も期待できます。スタッフ向けの割引や特典を工夫することで、高頻度で来店してくれるリピーターを確保できるでしょう。
商業施設には共用の施設や広告媒体が充実しているところも多く、これらを活用した集客もしやすいです。
施設内は屋内環境で、基本的に車や公共交通機関でのアクセスもしやすいです。季節や天気の影響を受けにくく、安定して営業できるでしょう。
デメリット
商業施設内の家賃はほかの立地に比べて高いことが一般的です。ライバル店との競争も激しく、ユニークなメニューやサービスを提供するなど差別化が求められます。高い家賃と激しい競争に対処するためには、高い集客力と売上が必要なのです。
また、商業施設内では施設のルールに従わなければなりません。これに縛られることがあるため、経営の柔軟性はほかの立地に比べて低いでしょう。
飲食店の場所選びでは「データ」を集めよう
データは場所選びの際に非常に役立つ情報源です。次のポイントを参考に、出展候補地のデータを集めてみましょう。
地域特性
選んだ場所の地域特性や文化を理解しましょう。ターゲット層の好みや需要に合わせたメニューやサービスを提供できます。
人口構成
人口構成データはターゲット層を特定するのに役立ちます。たとえば若年層が多い地域ならカジュアルなレストランが、ビジネスパーソンが多いならランチ営業に強い業態が適しています。
昼間・夜間人口
昼夜の人口変動を考慮し、営業時間やメニューを調整しましょう。たとえば若年層向けの単価高めでおしゃれなカフェでは、平日夜間の若年層の人口が重要です。ターゲット層である若年層は日中働いていること、仕事の休憩中には安価で利用しやすいカフェを選ぶことが理由です。
データだけで立地を決めてはいけない!実際にその場所に行ってみよう
データ分析は重要ですが、実地調査も欠かせません。次のポイントを意識して、出店候補地に出向き、観察してみましょう。
人通りの量や様子
実際にその場所に行き、人通りを確認しましょう。ピーク時やオフピーク時の様子も観察しましょう。
どんな人が多いか
通行人の年齢や性別などの属性を観察し、ターゲット層と一致しているか確認しましょう。
周辺店舗の種類や入れ替わり
競合店舗や新規出店情報をリサーチし、競争状況を理解しましょう。出店から撤退までの期間、入れ替わりの激しさも重要です。「どんなお店が立ってもすぐにつぶれてしまう」という立地はリスキーです。
このあたりはデータを集めつつ、地域住民から詳しい話を聞けるとより良いでしょう。
飲食店は場所が命!条件と家賃のバランスを考えて立地・物件を決めよう
立地は飲食店の集客力に直結します。どんなお店を出したいのか、業態やコンセプトを踏まえ、それに適した立地を考えてみましょう。どんなに条件が良くても、家賃が高すぎたり競争が激しすぎたりといった場所はリスキーです。条件と家賃・リスクのバランスを考え、お店を出す場所を決めましょう。
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