LTVとは?
LTVは「Life Time Value」の略取で、日本語にすると「顧客生涯価値」となります。顧客が自社と契約してから解約するまでにもたらす利益の総量のことで、LTVを高めることで、新規獲得に頼らない事業運営ができるでしょう。
LTVが重要な理由
LTVが重要な理由として、「少子高齢化」「価値観の多様化」「新規獲得にはコストがかかること」などが挙げられます。
少子高齢化による新規客の母数減少
日本では少子高齢化が続き、2070年には高齢化率は38.7%、15~64歳の労働人口は52.1%になると予測されています。
労働人口は経済の担い手であり、乱暴な言い方をすれば「お金を持っている層」です。彼らの数が少なくなるほど、ビジネスにおける新規獲得は難しくなるでしょう。
価値観の多様化による競争の激化
スマートフォンやSNSの普及による「価値観の多様化」も、LTVが重要な理由のひとつです。従来の社会では、商品やサービスを売るために大切なのは機能や価格でした。良いものを安く提供すれば売れていた時代です。
しかし今はそうではありません。もちろん機能や価格も大切ですが、テクノロジーの進歩によりこれらだけで商品やサービスを差別化するのは難しくなりました。良いものを安く、大量生産する中国や韓国の台頭も、日本企業にとっては向かい風でしょう。
機能や価格以外の部分、たとえば「サポート」や「認知→購入→利用→アフターフォローまでの顧客体験」、「顧客から企業・ブランドへの信頼感・愛着」などで差別化しなければなりません。
幸いなことに、現代社会ではこれらを軸に商品やサービスを選ぶ人が増えています。これらの要素を改善することは、そのままLTVの向上につながるでしょう。
新規獲得にはコストがかかる
マーケティングの世界には「1:5の法則」という考え方があります。同じ売上でも、それを新規顧客から上げるには、既存顧客の5倍のコストがかかるという法則です。
詳しくは後述しますが、LTVは「客単価アップ」「解約率低下」などにより向上します。つまり、既存顧客の維持・ロイヤル化がそのままLTV向上につながり、そのためにかかるコストは新規獲得よりも小さくなることが多いです。
「LTV>CAC」の図式は、特に事業初期のマーケティングで重要
LTVと併せて意識したい指標に「CAC」があります。「Customer Acquisition Cost」の略称で、日本語にすると「顧客獲得単価」となります。顧客1人を獲得するのにいくらコストがかかるのか、という指標です。
どんなビジネスでも顧客1人が自社にもたらす利益の総量が、顧客1人あたりの獲得単価を上回っている状態、つまり「LTV>CAC」が理想でしょう。
これは特に、事業初期において意識したいことです。資金が少ない事業初期で「LTV<CAC」の状態のままマーケティングを続けてしまうと、状況はどんどんジリ貧になっていきます。投資を回収する前に資金が足りなくなり、事業を継続できなくなるかもしれません。
LTVの計算方法
LTVは「1回あたりの購買価格(客単価)×購買頻度(購入回数)×契約期間」で計算できます。これらの指標を高めることでLTVは向上します。
CACの計算方法
CACは「新規獲得にかかった費用の合計/新規獲得数」で計算できます。新規獲得にかかる費用には広告費や販促費はもちろん、営業職・マーケティング職への給与や賞与、代理店への手数料なども含まれます。
LTVを高める3つの方法
LTVを高めるためには購買価格や購買頻度を増やすか、解約率を減らすかが必要です。そのためにできる3つの方法を紹介します。
クロスセルやアップセルを増やす(客単価アップ)
LTVを高める1つ目の方法は、「クロスセルやアップセルを増やす」ことです。これにより客単価アップが狙えます。
クロスセルは商品のセット購入のことです。単なる同時購入や、ある商品の購入後に「これもあるといいな」と思い出して購入してもらうことも含まれます。セット割引や商品の併用を提案するなどで、クロスセルの増加を狙えるでしょう。
アップセルはこれまで購入していた商品よりも高額の商品への買い換え、上位プランに乗り換えなどのことです。プランの内容や料金を見直したり、上位プランへの乗り換えキャンペーンを実施したりすることで、アップセルを狙えるでしょう。
アフターフォローやリテンション、顧客育成(購買頻度アップ)
LTVを高める2つ目の方法は、「アフターフォローやリテンション、顧客育成」です。これにより、購買頻度アップが狙えます。
顧客に対して定期的にアフターフォローをすることで、顧客との関係を強化できるでしょう。顧客が自社やブランドに対して愛着や信頼感、安心感を抱いている状態になれば、リテンションの効果も出やすいです。
メルマガやオウンドメディアなどでの顧客育成も大切です。
たとえば工務店が外壁の塗り替えや屋根の張り替えなどの定期メンテナンスの必要性や頻度、メンテナンスを怠ることのリスクなどをメルマガ・オウンドメディアで説いたとします。
これにより顧客が「住宅は定期的にメンテナンスするものだ」「こまめなメンテナンスにより長く安心して暮らせる家ができる」という意識を持てば、住宅販売だけでなく、メンテナンスの受注も増やせるでしょう。
なお、アフターフォローや顧客育成は、客単価アップや解約抑止にもつながります。
サポート体制や関係構築の強化(契約期間を延ばす)
LTVを高める3つ目の方法は、「サポート体制や関係構築の強化」です。これらは解約抑止になり、契約期間を延ばすことにつながるでしょう。
「問い合わせ窓口の対応が丁寧」「電話だけでなくチャットで気軽に問い合わせることもできる」というサービスは安心して使えます。コストや機能の面で多少競合に劣るとしても、「安心して使える方が良い」と、自社サービスを使い続けてもらえる確率が上がるでしょう。
そのためにはサポート窓口の人員増加や業務効率化、スタッフの教育強化などが必要です。FAQやチャットボットを活用し、顧客が自己解決できる仕組みを整えるのもいいでしょう。
顧客との関係構築も大切です。顧客との接点を増やしたり、先述のようにサポート体制を強化したりすることで、顧客から自社やブランドに対する信頼は高まります。
新しい商品やサービスを購入するときも、「この会社のサービスなら安心」「好きな会社だから応援したい」と、特に比較・検討されることなく自社を選んでもらえるようになるでしょう。
ITツールとデータを活用し、マーケティング施策の改善・LTV向上を目指そう
LTVは「1回あたりの購買価格(客単価)×購買頻度(購入回数)×契約期間」の計算式で求められます。これらの指標を高めることはそのままLTVアップにつながり、各指標を高めるには次のような方法があります。
指標 | 高めるためのアイデア |
購買価格(客単価) | ・アップセルやクロスセルの訴求 ・提案力の強化 ・プランの内容や価格の改善 など |
購買頻度(購入回数) | ・顧客との接点の増加 ・リテンション ・顧客育成により、 メンテナンスや継続購入の必要性を理解してもらう など |
契約期間 | ・FAQの設置、改善による自己解決の促進 ・問い合わせ対応の強化による解約抑止 ・アフターフォローやサポートによる顧客のロイヤル化 など |
どのような方法を取るとしても、大切なのは顧客について理解すること、そのうえで適切なアプローチを取ることです。
顧客は「この企業は自分を理解してくれている」と感じたときに、安心感や信頼感を抱きます。「この企業・ブランドには共感できる」と感じると企業やブランドに愛着がわき、応援しようという気持ちになるでしょう。
顧客にこのような気持ちを持ってもらうためには、まずは顧客のことを理解しなければなりません。顧客のニーズや悩み・不満などを理解できれば、マーケティング施策やサポート体制の改善もしやすくなります。
そのために役立つのがCRMをはじめとするITツールです。CRMでは顧客について分析したり、顧客一人ひとりの情報を共有したりでき、リテンションやアフターフォロー・問い合わせ対応に役立ちます。
ナレッジマネジメントシステムやチャットボットなどを活用すれば、FAQや24時間体制の問い合わせチャットの設置など、サポート体制の強化ができるでしょう。MAを使って顧客をセグメンテーションし、それぞれに合ったステップメールを配信するのも有効です。
問い合わせ対応の強化・業務効率化に役立つツールは、こちらの記事で紹介しています。
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