ファクタリングはやばくもないし、違法でもない
ファクタリングは売掛債権(売掛金)をファクタリング会社に売却し、その債権を早めに現金化するサービスです。アメリカを始めとする海外では一般的な資金調達方法ですが、日本ではまだあまり浸透しておらず、「ファクタリングはやばい」というイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし、ファクタリングはやばくもなければ違法でもありません。債権の譲渡は民法第466条で、次のように認められています。
(債権の譲渡性)
出典:民法 | e-Gov法令検索
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があります。
2社間ファクタリングは、ファクタリングの利用者とファクタリング会社の2社間で結ぶ契約です。売掛金の請求先には通知せず、ファクタリング会社に売掛債権を売却します。請求先から自社にお金が振り込まれたら、ファクタリングで買い取ってもらった金額に手数料を足した額を、利用者からファクタリング会社に支払います。
3社間ファクタリングは、ここに売掛金の請求先(取引先)を加えた契約です。利用者は取引先にファクタリング利用の承諾を取り、利用者・取引先・ファクタリング会社の3社間でファクタリング契約を結びます。ファクタリング会社から利用者に債権買取分の金額が振り込まれるのは2社間と同じですが、ファクタリング会社への支払いは利用者ではなく、取引先がファクタリング会社へ直接行います。
ファクタリング会社にとっては、売掛金の請求先を加えた3社間ファクタリングの方が、「買い取った債権を回収できないリスク」が低いです。そのため、3社間ファクタリングの方が手数料が低くなることが多いです。
ファクタリングがやばいといわれる3つの理由
仕組みや実態を知れば、ファクタリングがやばくないこと、合法であることはわかるでしょう。
しかし、ファクタリングは日本ではまだあまり浸透していないサービスです。「ファクタリングはやばい」といわれる一番の原因は、ファクタリングに対する理解不足や誤解があることでしょう。
「ファクタリングはやばい」と誤解される理由を、3つ紹介します。
理由1.ファクタリングを装った違法業者がいるから
ファクタリングがやばいと誤解されている最大の理由は、「ファクタリングを装った違法業者がいるから」でしょう。
ファクタリングは売掛債権の買取であり、貸金ではありません。そのため、ファクタリングのサービスを提供するには貸金業登録も必要ありません。
これを逆手に取り、貸金業登録をしていない業者が「ファクタリング」を謳い、違法な貸金サービスを提供することもあります。実際、このような業者は過去に何度か摘発されています。
理由2.ファクタリングには登録や免許が必要ないから
ファクタリングは貸金ではないため、貸金業登録なしでサービスを提供できます。ファクタリングを規制する法律、サービス提供に必要な登録や免許も、2023年時点ではありません。
登録も免許もなしでサービスを提供できると聞くと、何となくやばいイメージがわかないでしょうか。
加えて、ファクタリングは3社間よりも2社間が一般的です。利用者は「資金繰りが悪いと思われるかもしれない」と、取引先にはファクタリングの利用を隠したいと思うものです。
ファクタリングそのものはやばくも違法でもありませんが、利用者はどこか後ろ暗い気持ちになることも多いでしょう。これが「ファクタリングはやばい」というイメージにつながっているのかもしれません。
理由3.金融庁が注意喚起をしているから
ファクタリングは違法ではありませんが、先述のとおり、ファクタリングを装ったやばい業者は存在します。
このようなやばい業者が後を絶たないこともあり、金融庁は「ファクタリングの利用に関する注意喚起」というWebページを公開し、「事業者の皆様におかれては、こうした偽装ファクタリングを利用することのないよう、十分注意してください」と呼びかけています。
この注意喚起のページをきちんと読めば、ファクタリング自体がやばいわけではないとわかるでしょう。
しかし、金融庁が注意喚起をしているという事実、「ファクタリングの利用に関する注意喚起」というページタイトルが、「ファクタリングはやばいもの」という誤解を生んでいる部分はあるかもしれません。
やばいファクタリングの例
ファクタリングそのものはやばくなくとも、ファクタリングを装ったやばい業者は存在します。そんなやばい業者はどんな業者なのか、3つの例を紹介します。このような業者・サービスは利用しないよう心がけてください。
給与ファクタリング
「給与ファクタリング」というサービスや、それを提供している業者を見かけたら、その業者はやばい業者だと思った方がいいかもしれません。
給与ファクタリングとは、賃金債権を買い取ることで、実質的に給与の前払いをするサービスです。
労働者の給与には「先に労働力を提供し、その対価を後からまとめて受け取る」という、売掛債権に近い性質があります。これが「賃金債権」です。
しかし、労働基準法第24条には「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」という定めがあります。賃金債権の買取をすると、間に買取業者を挟むことになり、「賃金は労働者に直接支払わなければならない」という決まりを破ることになるのです。
2023年現在、給与ファクタリングは貸金業としてなら行うことができます。
しかし、クリーンな業者なら給与ファクタリングなどと謳わず、消費者金融や融資と銘打ってサービスを提供すればいいでしょう。わざわざ給与ファクタリングを謳っている業者は、貸金業登録をしていないヤミ金業者である可能性が高いです。
償還請求権ありのファクタリング
ファクタリングは原則として償還請求権”なし”(ノンリコース)です。やばい業者・サービスとまではいいませんが、償還請求権”あり”のファクタリングは避けた方が無難でしょう。
償還請求権とは、債権の移動をさかのぼって金銭を請求する権利のことです。ファクタリングで売掛債権を売却すると、自社が持っていた取引先に売掛金を請求する権利が、ファクタリング会社に移ります。2社間ファクタリングではファクタリング会社への支払いをするのは自社かもしれませんが、実際には債権は移動しているのです。
では、取引先が自社に売掛金を支払ってくれなかったらどうなるでしょう。償還請求権なしのサービスなら、ファクタリング会社は取引先に請求をし、利用者である自社に請求がくることはありません。
しかし、償還請求権ありのサービスでは、ファクタリング会社は債権の移動をさかのぼり利用者(自社)に請求ができます。
なお、売掛債権の買取を行うファクタリングは原則として償還請求権なしです。償還請求権ありのサービスは、「売掛債権を担保に融資を行うサービス」である可能性が高いです。このようなサービスを「債権の買取のように見せている業者」「貸金業登録をしていない業者」が提供しようとしていたら、その業者はやばい業者だと思った方がいいでしょう。
分割払いや支払い延期ができるファクタリング
ファクタリングは融資ではなく債権の買取であるため、分割払いや支払いの延期は原則としてできません。
分割払いを認めてしまうと金利が発生することになり、債権の譲渡を行うファクタリングではなく、融資になってしまいます。
ファクタリング会社への支払いは譲渡した債権で行わなければなりません。そのため、譲渡した債権の支払期日と、利用者がファクタリング会社に買い取ってもらった分の現金を支払う期日は、原則として同日です。売掛先から自社への支払いが遅れている場合は別として、ファクタリング会社への支払い延期はできません。
「手数料を追加で支払ってくれれば、分割払いや支払日の延期に応じます」のというような業者は、やばい業者と思った方がいいでしょう。
安全なファクタリング会社を見極める5つのポイント
ファクタリングはやばいサービスではありませんが、ファクタリング会社を装ったやばい業者がいるのは事実です。このようなやばい業者のせいで、ファクタリングの利用を躊躇っている人もいるでしょう。
そこで、安全なファクタリング会社を見極める5つのポイントを紹介します。
ポイント1.「NGワード」の有無
その業者がやばい業者か安全なファクタリング会社を見極めるには公式HPや契約書、担当者からの説明などに、下記の「NGワード」がないかをチェックしてみてください。
- 返済
- 金利
- 利息
- 分割 など
ファクタリングは融資ではないため、返済・金利・利息などの言葉が出てくるのはおかしいです。先述のとおり、分割払いもできません。
業務にまだ慣れていない担当者はこれらの単語を誤って口にしてしまうこともあるかもしれませんが、少なくとも公式HPや契約書にこれらのワードがあるサービスは避けた方がいいでしょう。
ポイント2.契約の内容
ファクタリングの契約は「債権譲渡契約」にあたります。契約書にサインする前に、その表題と内容が債権譲渡契約のものかチェックしましょう。
ただ、「契約書の表題は債権譲渡契約だが、内容は全くの別物」というやばい業者もいます。このような業者に騙されないために、契約書に次のような内容がないことを確認してください。
- 償還請求権”あり”
- 分割払いができる
- 支払い日の延期ができる
- 買い取った債権の買戻しを要求することがある など
ポイント3.手数料
ファクタリングの手数料は高くて18%が目安といわれています。これを大きく超えるようなサービスは、やばいサービスだと思った方がいいでしょう。
ちなみに、ファクタリングでは手数料のほかにも事務手数料や印紙代などのコストがかかることもあります。これらのコストの内訳が明示されているかどうかもチェックした方がいいでしょう。
ポイント4.会社情報
ファクタリングに限らず、相手がやばい業者か安全な会社を見極めるために、会社情報は必ずチェックしましょう。具体的には、次のような観点から情報チェックをします。
- サービスの運営元の会社名
- 会社所在地は実在する住所か
- 会社所在地に本当に会社があるか など
「国税庁法人番号公表サイト」で登記を確認したり、会社概要の記載と照らし合わせたりするといいでしょう。会社所在地に本当に会社があるかどうか確かめるには、そこまで実際に足を運んでみるほかにも、建物に問い合わせをする方法もあります。
ポイント5.口コミ・評判
利用を迷っているファクタリング会社があるなら、その会社の名前で検索をしてみましょう。ある程度の実績がある会社なら、検索エンジンやSNSで、会社HP以外にも何かしらの情報が出てくるはずです。
このとき、口コミや評判も併せてチェックしておきましょう。実際の手数料が公式HPに書かれている範囲を超えていないか、担当者の対応はどうなのか、審査や入金は早いのかなど、さまざまなことが見えてくるはずです。
ファクタリングはやばくないが、利用が原因で「やばい事態」に陥ることも
ファクタリングは売掛債権の譲渡であり、債権の譲渡は民法466条で認められています。ファクタリングを装った違法業者がいるのは事実ですが、ファクタリングそのものは、違法でもやばくもありません。
ただ、ファクタリングの利用が原因で「やばい事態」に陥ることはありえます。特に、売上のほぼすべてが売掛金となる事業では気をつけた方がいいでしょう。
たとえばシステム開発を行う会社では、システムを開発し、納品してからその対価を受け取ります。フリーのデザイナーやライターなども、デザインや記事を納品し、その対価を翌月末などにまとめて受け取ります。
このような事業で売掛金の大部分をファクタリングしてしまうと、ファクタリング会社への支払い後に資金が残らず、再びファクタリングをせざる得なくなるかもしれません。会社なら従業員の給与や経費の支払いのために、フリーランスなら生活のために、「ファクタリングのループ」に陥ってしまうかもしれません。
このような事態を避けるためには計画的な利用を心がけること、手数料のなるべく低いファクタリング会社を選ぶことが大切です。手数料の低いファクタリング会社はこちらの記事で紹介しています。
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