アプリ課金とは、アプリのダウンロード後に発生する課金のことです。アプリ内とアプリ外のどちらで課金するのかにより、利益率や事業の運営方針も変わってきます。アプリ課金の種類やアプリ内外のどちらの課金方式を取るべきかなどを解説します。
アプリ課金とは?
アプリ課金とはアプリダウンロード後に発生する課金のことです。ソーシャルゲームのガチャを回すためのゲーム内通貨、ビデオオンデマンドなどのコンテンツ系アプリの利用料などがアプリ課金にあたります。
なお、アプリ課金は有料アプリとは異なります。有料アプリとは、アプリのダウンロードそのものに課金が必要なアプリです。アプリのダウンロード後に課金するのがアプリ課金であり、有料アプリのダウンロード後にアプリ課金も発生するサービスもあります。
4種類のアプリ課金
アプリ課金は大きく4種類に分けられます。それぞれどんな課金形式なのか、具体例と併せて紹介します。
消耗型(例:ゲームの課金石やレンタル型のデジタルコンテンツ)
消耗型は課金により使い切り制のものを購入するタイプです。使い切り制のため再び必要になった際は再購入しなければなりません。
消耗型のもっともわかりやすい例がゲームの課金石でしょう。課金石とは、ゲームを有利に進めるためのオプションを購入したり、強力なアイテムが出るかもしれないガチャを回したりするのに使うゲーム内通貨です。パズル&ドラゴンズの魔法石に由来し、「石」と呼ばれるようになりました。
ほかにもビデオオンデマンドサービスでの有料作品や、コミックアプリの読みたい話をレンタルするといった場合も、消耗型にあたります。
非消耗型(例:ゲームのロック解除や購入型のデジタルコンテンツ)
非消耗型はずっと使用できる機能やコンテンツを購入するタイプです。消耗型と異なり、一度購入したら再購入は不要です。
非消耗型の例としてはゲームのロック解除や購入型のデジタルコンテンツなどが挙げられます。
たとえばゲームでは特定のキャラや武器といったゲーム内アイテム、広告なしオプション(主に個人が作る、プレイ途中で広告が流れるゲーム)などを購入できます。より快適に、より楽しみながらゲームを進められるようになるでしょう。
デジタルコンテンツでは、たとえばコミックアプリでレンタルよりも高額の料金を支払い、話や巻を購入することもできます。一度購入したらずっと読めるため、何度も読みたい作品は購入、一度読めればいいものはレンタルと使い分ける人もいます。
自動更新継続(例:有料ゲームやコンテンツの見放題サービス)
自動更新継続は月額制や継続課金など、一定期間ごとに料金を支払うことで利用できるサービスです。簡単にいえば、毎月(あるいは数ヵ月ごと)に自動更新される月額制のアプリ・プランです。
自動更新継続の例としては、ビデオオンデマンドやYouTubeプレミアムなどが挙げられます。ビデオオンデマンドでプランごとに観られる作品が異なっていたり、基本無料のYouTubeに月額料金を支払うことで広告が流れなくなったりします。
ちなみに、アプリゲーム(ソーシャルゲーム)ではあまりない方式ですが、昔のオンラインゲーム(PCゲーム)では自動更新継続のものも多かったです。それが「基本無料+課金」のゲームが増え、課金内容にもガチャ要素が増え、今のソーシャルゲームに近いスタイルが主流になっていきました。
非自動更新継続(例:期間限定配信のデジタルコンテンツ)
非自動更新継続は期間限定でサービスを利用できるタイプです。
自動更新継続と異なり、決められた期間を過ぎるとサービスを利用できなくなります。自動更新はされないため、使い続けたい場合は自分で再契約をしなければなりません。ユーザーにとっては再契約の手間はあるものの、解約を忘れて意思に反して課金が続くリスクを避けられます。
非自動更新継続の例としては、期間限定配信のデジタルコンテンツや、ゲームの期限付きアイテムなどが挙げられます。購入から1ヵ月間はコンテンツを閲覧したりアイテムの効果を受けたりできるが、期間終了後に閲覧権限やアイテムが消失するようなタイプです。
アプリ内課金とアプリ外課金の違い
アプリ課金には「アプリ内課金」と「アプリ外課金」があります。どちらもアプリ内のコンテンツや機能を利用するための課金ですが、どのプラットフォームを通して課金するかが異なります。
アプリ内課金は文字通り、アプリの中で課金する方式です。課金の手続き(操作)はアプリ内ででき、料金支払いはアプリを管理するプラットフォーム(ストア)を通して行われます。ストアで「アプリ内課金あり」と表示されているのがこのタイプです。
アプリ外課金は自社Webサイトなどの決済ページを通して課金する方式です。アプリ内に決済ページへのリンクや決済案内などを設置しておき、ユーザーをアプリ外の決済ページに誘導します。
Appleがアプリ外課金の規制緩和
App Storeを運営するAppleはアプリ外課金を厳しく規制していました。アプリ外課金では手数料が発生せず、自社の利益にならないためです。
従来、アプリ内にリンクを設置し決済ページに誘導するような方法は許可されていませんでした。アプリ外課金をする場合、Appleの規制に抵触しない方法でユーザーを誘導するしかなかったのです。
この規制が2022年から緩和されました。2023年4月現在では、デジタルコンテンツの購入やレンタル形のアプリでのみ、アプリ外課金が許可されています。
アプリ外課金ではAppleに手数料を支払わなくて良くなるため、収益性の向上が見込めるでしょう。次からはアプリ内課金とアプリ外課金のメリット・デメリットを、ユーザー側・事業者側の双方から紹介します。
アプリ内課金のメリット・デメリット
アプリ内課金のメリット・デメリットを、事業者側とユーザー側に分けて紹介します。
事業者にとってのメリット
アプリ内課金の事業者にとっての主なメリットは、「課金のためのシステムを自社で構築しなくて済む」「課金するユーザーや回数が増えやすい」ことです。
アプリ内課金ではApp StoreやGoogle Playなどのプラットフォームを介して課金が行われます。プラットフォームのシステムをそのまま使えるため、自社で決済のためのシステムやページを作らなくても済みます。導入のハードルが低く、運用・保守もしやすいでしょう。
また、課金の手続きはアプリ内で完結するため、ユーザーにとって手軽です。外部サイトへの誘導により「怪しい」と感じられるリスクもありません。手数料はかかるものの、手軽であることと怪しまれないことから、課金するユーザーや回数を増やしやすいです。
事業者にとってのデメリット
アプリ内課金の事業者にとっての主なデメリットは、「手数料がかかる」「金額を自由に設定できない」ことです。
アプリ内課金の場合、App StoreやGoogle Playなどのプラットフォームに手数料を支払わなければなりません。課金額の設定もこれらのプラットフォームが定めるテーブルに合わせなければならず、自由度が低いです。
ユーザーにとってのメリット
アプリ内課金のユーザーにとっての主なメリットは、「手軽なこと」です。
課金のための手続きはアプリ内で完結するため、わかりやすく手軽です。外部サイトに移動したり、複雑な手順を踏んだりする必要はありません。このユーザーにとっての手軽さが、事業者の「課金するユーザーや回数を増やしやすい」というメリットにもつながっています。
ユーザーにとってのデメリット
アプリ内課金のユーザーにとっての主なデメリットは、「支払い方法が限られる」ことです。
アプリ内課金ではApp StoreやGoogle Playなどのプラットフォームが定めた方法でしか支払いができません。この場合の主な支払い方法は「クレジットカード」「デビットカード」「キャリア決済」「ギフトカードによるチャージ」などです。口座振込やコンビニ払いのような支払い方法は利用できません。
また、アプリ内課金では事業者からプラットフォームへの手数料が発生します。この手数料を加味して課金額の設定が行われているとすれば、その分ユーザーの支払い料金も高くなるといえます。
アプリ外課金のメリット・デメリット
アプリ外課金のメリット・デメリットを、事業者側とユーザー側に分けて紹介します。
事業者にとってのメリット
アプリ外課金の事業者にとっての主なメリットは、「プラットフォームへの手数料がかからない」「課金額を自由に設定できる」ことです。
アプリ外での課金にはプラットフォームへの手数料が発生せず、利益率も高くなるでしょう。プラットフォームの価格テーブルに従う必要もないため、価格設定も自由にできます。
事業者にとってのデメリット
アプリ外課金の事業者にとっての主なデメリットは、「導入のハードルが高い」「機会損失が起こりやすい」ことです。
アプリ外課金では、決済ページにユーザーを誘導する方法や決済システムなどは自社で用意しなくてはなりません。システムの運用・保守にもコストと手間がかかります。導入・運用のハードルはアプリ内課金よりも高いでしょう。
また、アプリ外への誘導を怪しいと感じるユーザー、画面遷移を面倒に感じるユーザーもいます。アプリ外課金ではこのようなユーザーの購買意欲が削がれやすく、機会損失も起こりやすくなるでしょう。
ユーザーにとってのメリット
アプリ外課金のユーザーにとっての主なメリットは、「決済手段が充実していること」です。
アプリ外課金ではプラットフォームが定めるもの以外の決済手段も導入できます。事業者次第ではありますが、銀行振込やコンビニ決済などでの支払いも可能です。
ユーザーにとってのデメリット
アプリ外課金のユーザーにとっての主なデメリットは、「面倒なこと」です。
アプリ外課金ではアプリ内から外部の決済ページに移動する手間、決済ページで支払いに必要な情報を入力する手間がかかります。アプリ内課金では課金ボタンを押してパスワードを入力すれば支払いが完了することを考えると、やや面倒でしょう。
どんなビジネスに、アプリ内外どちらの課金が適している?
アプリ外課金は手数料こそかかりませんが、「導入のハードルが高い」「機会損失が起こりやすい」などのデメリットもあります。どのようなビジネスにどちらの課金方式が適しているのか、一例を紹介します。
アプリ内課金が適しているケース
アプリ内課金は「薄利多売のビジネス」「課金額より課金率を重視したい場合」に適しているでしょう。
薄利多売のビジネスでは課金してくれるユーザーと回数を増やすことが重要です。課金に手間がかかったり、外部への誘導を怪しいと思われたりするのは避けたいです。同じ理由で、課金額よりも課金率を重視したいケースにもアプリ内課金が適しています。
アプリ外課金が適しているケース
アプリ外課金は「一度の課金が高額なビジネス」「未成年や高齢者などをターゲットとするビジネス」などに適しているでしょう。
アプリ内課金の手数料は非常に高額で、15%もしくは30%もの手数料がかかります。対して、決済代行サービスを活用してアプリ外課金を導入する場合、一度の手数料は4%ほどで済みます。
課金額が高くなるほど手数料も高くなること、高額サービスはユーザーが熟考するためアプリ外課金を理由にした機会損失が起こりにくいことから、アプリ外課金で利益率を高めた方がいいでしょう。
未成年や高齢者などをターゲットにするビジネスでは、決済手段の充実も重要になります。クレジットカードを持っていない未成年がアプリ内課金をするにはギフトカードを使うしかなく、高齢者には口座振込のような決済手段を好む人も多いでしょう。
ただ、アプリ外課金は課金までの操作がやや煩雑です。高齢者をターゲットとし、アプリ外課金を取り入れる場合、操作のわかりやすさや不信感を抱かせないための工夫が必要です。
アプリ外課金の導入で収益性を高めるなら、スムーズな誘導と決済手段の充実が欠かせない
アプリ外課金を導入することで、App StoreやGoogle Playなどへの高額な手数料を支払わなくて良くなり、事業の利益率を高められるでしょう。
しかし、「アプリ外課金を導入することで収益性が高まる」と一概にいえるわけではありません。アプリ外課金ではユーザーの離脱が起こりやすいです。一度の課金による利益は増えても、課金するユーザーや回数が減ってしまい、トータルの利益が下がることもあり得ます。
アプリ外課金を導入するなら、決済画面へのスムーズな誘導と、ユーザーの利便性を高めるための「決済手段の充実」が欠かせません。
決済手段を充実させるために役立つのが「決済代行サービス」です。自社とクレジット会社や銀行などの決済機関との間に入り、契約や手続きを代行してくれます。サービスによっては、決済システムの構築もしてくれるでしょう。
決済代行サービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みください。決済代行サービスの仕組みや選び方、ケース別のおすすめサービスを紹介しています。
この記事にはタグがありません。