【発行側】領収書を電子化するメリット
領収書を発行する側は電子化により業務効率化やコスト削減などの効果を受けられます。発行側が領収書を電子化する3つのメリットを紹介します。
業務の効率化
発行側が領収書を電子化する1つ目のメリットは、「業務の効率化」です。
電子化により、作成した領収書を印刷したり郵送したりする手間がなくなります。これらの手間がなくなることで従業員の負荷が減り、ほかの業務に充てられる時間も増えるでしょう。人的ミスも起こりづらくなります。
紙資源やコストの削減
発行側が領収書を電子化する2つ目のメリットは、「紙資源やコストの削減」です。
先述の通り、領収書を電子化することで印刷や郵送が不要になり、その分のコストを削減できます。業務効率化による人件費の削減も可能です。電子化システムの利用料はかかるかもしれませんが、全体で見るとコスト削減になるでしょう。
収入印紙が不要
発行側が領収書を電子化する3つ目のメリットは、「収入印紙が不要」なことです。
紙の請求書を発行する場合、取引金額が5万円以上になると収入印紙を貼らなければなりません。電子領収書の場合は金額にかかわらず収入印紙が不要であり、印紙代もかからなくなります。
一度の取引額が5万円以上になることもある事業者にとっては、電子化によるコスト削減効果はさらに大きくなるでしょう。
【受領側】領収書を電子化するメリット
紙ではなく電子データの領収書を受領したり、紙受領した領収書を電子化し保存することには効率化やコスト削減のメリットがあります。領収書を電子化するメリットを、受領側の視点から3つ紹介します。
保管スペースの削減
受領側の領収書を電子化する1つ目のメリットは、「保管スペースの削減」です。
領収書を電子化することで、紙の原本を保管する必要がなくなります。領収書の保管に使っていたスペースが不要になればオフィスが広くなり、広いオフィスが不要なら引越すことで家賃を抑えることもできるでしょう。
管理の効率化
受領側の領収書を電子化する2つ目のメリットは、「管理の効率化」です。
紙の領収書を探すとなると、保管されているであろうキャビネットやファイルを見つけ、ファイル内のどこに領収書があるのか1枚1枚めくっていかなければなりません。
一方、電子請求書は検索により必要な領収書をすぐに見つけられます。紛失や劣化の心配もなく、管理しやすくなるでしょう。
経理の負担軽減
受領側の領収書を電子化する3つ目のメリットは、「経理の負担軽減」です。
領収書の電子化を進めると、外出先でスマホを使って領収書を撮影し、そのまま経理に提出したり経費精算を申請したりできるようになります。紙の領収書を社内に持ち帰り提出・保管する必要はありません。
現場従業員にとっての手間も軽くなるため経費精算を月末に溜め込むことも少なくなります。月末に精算業務が集中し、経理担当者のリソースを圧迫することもなくなるでしょう。
領収書の電子化にかかわる「電子帳簿保存法」とは?
領収書の電子化にかかわる法律に「電子帳簿保存法」があります。電子帳票の保存や管理について定める法律で、「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件があります。
真実性の確保
真実性の確保では「改ざんを防止できること」「訂正や削除の履歴が確認できること」などの条件を満たしたシステムを活用し、その帳票が改ざんされていない正しい内容であることを確認できなければなりません。
具体的には次の3つの要件を満たさなければなりません。
要件1 訂正・削除履歴の確保(帳簿) 施行規則第3条第1項第1号
帳簿に係る電子計算機処理に、次の要件を満たす電子計算機処理システムを使用すること。
(イ) 帳簿に係る電磁的記録に係る記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること
(ロ) 帳簿に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認することができること
要件2 相互関連性の確保(帳簿) 施行規則第3条第1項第2号
帳簿に係る電磁的記録の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できるようにしておくこと
要件3 関係書類等の備付け 施行規則第3条第1項第3号
帳簿に係る電磁的記録の保存等に併せて、システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備付けを行うこと
出典:電子帳簿保存時の要件 │ 国税庁
可視性の確保
可視性の確保では「開発関係書類などを備え付け、システムを誰でも扱える環境を整えておくこと」「取引の年月日や金額などを検索できること」などの要件を満たし、電子領収書の内容を確認できるようにしておかなければなりません。
具体的な要件は次の通りです。
要件1 訂正・削除履歴の確保(帳簿) 施行規則第3条第1項第1号
帳簿に係る電子計算機処理に、次の要件を満たす電子計算機処理システムを使用すること。
(イ) 帳簿に係る電磁的記録に係る記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること
(ロ) 帳簿に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認することができること
要件2 相互関連性の確保(帳簿) 施行規則第3条第1項第2号
帳簿に係る電磁的記録の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できるようにしておくこと
要件3 関係書類等の備付け 施行規則第3条第1項第3号
帳簿に係る電磁的記録の保存等に併せて、システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備付けを行うこと
出典:電子帳簿保存時の要件 │ 国税庁
電子で領収書を発行する方法
電子領収書を発行する方法にはWordやExcelなどで作った領収書をPDF化する方法と、電子領収書発行システムを利用する方法があります。どちらの方法で作っても法的に問題はありませんが、作成の手間や見栄えを考えると電子領収書発行システムを使う方法がおすすめです。
紙の領収書を電子化し保存する方法
紙の領収書の電子化・電子保存では「真実性の確保」と「可視性の確保」が必要です。次の手順で領収書をスキャン・データ化することで、領収書の電子保存が可能になります。
200dpi以上または388万画素で領収書を読み取る
紙の請求書を電子化する際にはスキャンや撮影が必要になります。このときスキャナなら200dpi以上でスキャン、スマホ撮影なら約388万画素以上の解像度で撮影しなければなりません。
一般的なスキャナやシステムを使う場合はこの解像度を下回ることはまずありません。しかし、スマホの標準カメラで撮影したりデータをメールやチャットツール、ファイル共有サービスなどを経由してPCに送ったりすると解像度が下がることもあります。
おおむね3営業日以内に電子化する
紙の領収書を受領したら、おおむね3営業日以内に電子化しなければなりません。3営業日であるため土日祝日などの休業日は計算に含まれず、「おおむね」とあるように、3営業日以内のルールを厳密に守れなくとも罰則はありません。
ただし、領収書の電子保存は特に速やかに行うよう電子帳簿保存法で定められています。電子化を忘れてしまうことも考えられるため、「受領したらすぐに電子化する」くらいの認識でいた方がいいでしょう。
また、領収書を受領した本人以外が電子化をする場合、その領収書の電子化を確認したうえで2ヵ月とおおむね7営業日以内にデータ化するよう定められています。3営業日を大きく超えてしまった場合は、冗長や経理担当などにデータ化してもらうってもいいでしょう。
おおむね2ヵ月と7営業日以内にタイムスタンプを付与する
領収書を電子保存する場合、受領日から2ヵ月と7営業日以内にタイムスタンプを付与しましょう。
タイムスタンプは電子データに「その時点で、そのデータがたしかに存在していたこと」「その時点からデータが改ざんされていないこと」を証明するためのデジタル技術です。
なお、2022年1月の電子帳簿保存法の改正により「訂正や削除の履歴が残るシステム」「そもそも訂正や削除ができないシステム」を使っている場合はタイムスタンプの付与が不要になることになりました。
ただし、このシステムが自社システムである場合はタイムスタンプが必要です。自社システムでは訂正や削除がされていないことを完全には証明できないためです。
タイムスタンプの導入にはコストがかかるため、やはり他社制作の電子化システムを使うのがいいでしょう。
紙の原本を破棄する
領収書の電子データ化が完了したら、紙の原本は破棄してしまいましょう。以前は原本の破棄に制限がありましたが、2022年1月の電子帳簿保存法の改正により、最低限の確認を行えば原本をすぐに破棄できるようになりました。
紙の原本も保存するとなると、そもそも電子化する意味がなくなってしまいます。保管スペースも必要になり、本当に必要な書類も見つけづらくなるため、確認をしたら破棄してしまいましょう。
領収書を電子化する際の注意点
領収書を電子化・電子保存する際の注意点は次の通りです。
保存期間は7年間
紙でも電子データでも、領収書の保存期間は法人・個人事業主問わず原則として7年間です。ただし、法人で繰越欠損金の控除を受ける場合は10年保存が必要になります。
電子受領した領収書は紙で保存できない
取引先から電子データの状態で領収書を受領すると「電子取引」となり、電子取引で受け取った帳票は紙に印刷して保存することができません。電子データで受領したら帳票は、電子データのまま保存しましょう。
過去の領収書をスキャナ保存する場合は申請が必要
真実性と可視性を確保したうえで領収書を電子保存(スキャナ保存)する場合、原則として税務署への届出はいりません。
しかし、過去に遡り領収書をスキャナ保存する場合は届出が必要になります。
領収書の電子保存におすすめのシステム6選
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法人から個人事業主まで、領収書の電子化の要件は同じ
法人も個人事業主も、領収書を電子化するための要件は同じです。原則7年保存なのも同様ですが、法人の場合は繰越欠損金の控除を適用するなら10年保存が必要になります。
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