食材管理システムとは│管理の重要性/機能/導入方法/費用相場
食材管理システムとは、飲食店の在庫を管理するツールです。在庫数だけでなく、食材の消費期限やトレーサビリティまで把握できるため、衛生管理にもつながります。過剰在庫や食品ロスに悩む飲食店が導入すると、利益率も改善されるかもしれません。
今回は食材管理の重要性とシステムの機能、導入のメリット・デメリット、自店舗に合うシステムの選び方、おすすめサービスを紹介します。
食材管理の重要性
飲食店の食材購入費は店舗運営の大事な資金です。在庫過多の状況は食品ロスや廃棄につながり、最終的には資金繰りに悪影響が生じます。
また、食材の管理が雑だと賞味期限切れや品質の低下、食中毒の発生につながることもあります。スムーズな資金繰りのため、食品ロスや食中毒防止のために毎日の食材管理は重要です。
食材管理システムの導入方法/費用相場
食材管理システムには、クラウド型・オンプレミス型・パッケージ型と複数の種類があります。
<クラウド型>
インターネットを介してシステムを使用します。各種データはクラウド上に保管されるため、インターネット環境がある場所ならどこからでもアクセス可能です。自社サーバーが不要な分、初期費用を抑えられます。
<オンプレミス型>
自社サーバーを用意し、その中でシステムを使用するタイプです。強固なセキュリティ環境を構築できますが、サーバーの構築費は高価です。
<パッケージ型>
ソフトウェアを購入し、パソコンにインストールして使用します。インターネット環境がなくても使用できますが、システムを操作できるのはソフトをインストールしたパソコンのみです。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 費用 | セキュリティ |
クラウド型 | 自社サーバーが不要 | 導入スピードが速い/どこからでもアクセス可能 | オフラインでは利用できない/カスタマイズ性に欠けるものもある | 安価 | クラウドセキュリティが求められる |
オンプレミス型 | 自社サーバーが必要 | カスタマイズ性に優れている | サーバーの構築費が高い | 高価 | 強固なセキュリティ環境を構築できる |
パッケージ型 | 購入したソフトをインストールする | インターネット環境なしでも利用できる | 操作できるのはソフトをインストールしたパソコンのみ | 安価 | インターネットにつながないためリスクは低い |
この他に自作する方法もありますが、費用・手間がかかります。
食材管理システムの主な機能
食材管理システムの主な機能は、トレーサビリティ・セット品の管理・入出庫管理・適正在庫管理です。それぞれの特徴を見ていきましょう。
トレーサビリティ
トレーサビリティとは、生産段階から消費者まで食品の動きを把握する仕組みです。生産・加工・流通・小売と、各段階に携わる業者が記録を残すことで、問題が起こった時に原因を究明しやすくなります。
食材管理システムにトレーサビリティ機能があれば、仕入れ・売上・セット品への使用履歴まで、遡って確認できます。
セット品(アソート品)の在庫管理
複数の商品を1セットとして販売する際の管理ができる機能です。各商品をセット品として登録しておくと、現在の在庫で何セットまで作れるか把握できます。
入出庫管理
飲食店が扱う食材は数多く、仕入れ先も複数あるため管理は煩雑です。入出庫管理では「荷姿管理」「得意先・納品先管理」「預かり在庫の管理」機能を使用します。
<荷姿管理>
荷姿は、運搬される荷物の姿を表す物流用語です。主に段ボールや木箱、パレットなどがあり、単位はバラ・ボール・ケースに分かれています。運搬される食材の数は荷姿によって異なるため、荷姿管理で正確に把握する必要があります。
<得意先・納品先管理>
付き合いのある得意先や、納品先の情報登録・修正などを行う機能です。
<預かり在庫の管理>
預かり在庫とは、得意先の在庫を自店舗の倉庫で預かり、注文がきたら出荷することを指します。倉庫にあるうちは、あくまで先方の在庫を預かっている状態です。自社の在庫と混在しないよう、預かり在庫の管理機能で区別します。
適正在庫管理
過剰在庫や欠品を回避し、適正在庫の維持に役立つ機能です。在庫状況が表示される「在庫一覧機能」や、発注点を下回った在庫を確認できる「補充発注検討表」などが主に使用されます。
飲食店│食材管理の主な業務内容/作業の流れ
食材管理システムを導入しても、業務内容が伴っていないと期待通りの効果を得られないかもしれません。ここでは食材管理の業務内容を作業の流れに沿って紹介します。
1. 在庫状況の確認/把握
食材管理の基本は、在庫状況の確認と把握です。この時に大事なのは、単純に数をカウントするのではなく、各食材のシェルフライフ(消費期限)と、ホールディングタイム(賞味期限)を確認することです。
タイムリミットを正確に把握できるよう、食材の入荷後は納品日・開封日に加え、賞味期限と消費期限を明記しておきましょう。そのうえで、1日1回は生鮮食品のシェルフライフとホールディングタイムを確認し、期限が切れたものや品質が低下しているものは廃棄します。
2. 適正在庫の把握/仕入れ量の決定
食材の仕入れ数は日々変動します。予約状況や周辺のイベントに加え、過去のデータから客数を予想し、見合う仕入れ量を決定します。
3. 定期的な棚卸の実施
飲食店の経営では、食材管理の他に衛生管理も重要です。週に1回、または月に数回ほど棚卸を行い、適正在庫を保てているか、シェルフライフとホールディングタイムは過ぎていないか、衛生状態は適切か確認しましょう。
なお、この時の在庫数は月次の原価率・利益率の計算に活用できるため、必ず記録として残しておきます。
食材管理における3つの課題
飲食店の食材管理は、食材費・人手不足・ヒューマンエラーが主な課題です。多くの店舗が抱える3つの課題を、飲食店向けのアンケート結果を交えつつ紹介します。
1. 食材費の削減 – 無駄のない発注が求められる
飲食店リサーチが行った「飲食店経営の実態に関するアンケート調査」では、飲食店経営における悩みや課題について質問しています。回答数1位は集客ですが、31.8%の経営者が「食材費の削減」と回答しています。
材料費の上昇も問題(※)として挙げられているため、適正在庫の保持が重要です。
※出典:厚生労働省「飲食店営業(料理店)の実態と経営改善の方策」
2. 人手不足 – 食材管理の効率化が鍵を握る
飲食店リサーチの「従業員への給与など賃金にまつわる実情についてアンケート調査」を見ていきましょう。従業員数の充足状況に関する設問では、以下のような結果が出ています。
- やや不足している:48.9%
- 不足している:13.3%
- かなり不足している:5.2%
合計すると67.4%、つまり飲食店の約7割が人材不足を実感しています。
また、雇用者に支払う賃金の変化に関する設問では、40.8%の飲食店が「この1年間で賃金を引き上げた」と回答しました。
食材・材料費の高騰、人手不足、さらには賃金アップと、現在の飲食店は少ない人数でいかに食材管理を効率化するかが鍵といえます。
3. ヒューマンエラー – 手作業によってミスが発生する
人手不足のまま運営していると、在庫管理が行き届かないだけでなく、発注ミスや会計ミス、伝票の書き間違いといったヒューマンエラーが発生します。発注ミスによって在庫過多に陥ると、食品ロスにつながり利益まで損なわれます。
食材管理システム導入のメリット
多くの飲食店が抱えている課題は、食材管理システムの導入によって解決できるかもしれません。ここではシステム導入のメリットを5つ紹介します。
食材の賞味期限を正しく管理できる
飲食店において、食材の賞味期限やトレーサビリティの管理は極めて重要な要素です。期限切れの食材を提供してしまい、食中毒が発生すると社会的な問題に発展します。
賞味期限管理機能やトレーサビリティ機能がある食材管理システムなら、期限を正しく管理できます。
過剰在庫の削減で食品ロスを軽減できる
食材管理システムを使うと、店舗内の在庫を正確に把握できます。今まで過剰在庫だった食材の発注数を調整することで、適正在庫に近づけるでしょう。過剰在庫を廃棄していた場合、在庫の適正化によって食品ロスの軽減につながります。
欠品の防止で機会損失を抑えられる
資金繰りに悩み、在庫数を抑えすぎると欠品のリスクが高まります。例えば、看板メニューの食材が欠品してしまうと、顧客の足が遠のいてしまうかもしれません。食材管理システムで適正在庫を保てれば欠品を回避でき、機会損失を防げます。
ヒューマンエラーを防止できる
食材管理を手作業でしていると、数え間違いや見間違い、発注ミスが起こりがちです。システムを導入すると在庫数は自動カウントされるため、ヒューマンエラーの防止が期待できます。
作業効率が改善される
飲食店は扱う食材が多いため、賞味期限管理や入出庫管理、棚卸などを手作業で行うとスタッフに多大な負担がかかります。その点、食材管理システムなら各管理が自動化されるため、作業効率が格段に向上するでしょう。
食材管理システム導入のデメリット
食材管理システムは魅力とメリットが豊富ですが、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、費用・研修・エラーの発生リスクの3つを紹介します。
システムによっては導入/月額費用が発生する
食材管理システムの導入・運用では、初期費用と月額費用が発生します。クラウド型とパッケージ型は比較的安価ですが、料金はシステムによって異なります。
また、サポートが有料の場合は+αの料金が発生するので、システムを選ぶ際はランニングコストも念頭に置きましょう。
スタッフの研修が必要
システムには食材管理を担当するスタッフも触れます。いざ運用を始めて困らないよう事前研修が必要です。運用開始後も慣れないスタッフのフォローや、マニュアルの作成が必要になる場面も考えられます。
システムのエラーが発生するリスクもある
食材管理システムに限らず、ITツールの導入はシステムエラーのリスクを抱えます。基本的に、サポート窓口に相談すると復旧の糸口が見えますが、大規模なシステム障害や災害による停電、ネットワーク環境の異常が原因の場合は長期間使えなくなる恐れがあります。
食材管理システムを選ぶ際に確認したいポイント
自店舗に合う食材管理システムを選ぶには、飲食店向け機能だけでなく、他システムとの連携やサポート体制、費用面などの確認も大切です。ここではシステムを選ぶ際に確認したい4つのポイントを紹介します。
飲食店向け機能の有無
食材管理システムを選ぶ際に必ず確認したいのは、飲食店向け機能の有無です。主に次の機能があるか確認してみましょう。
- ロット別管理
- 消費期限管理
- トレーサビリティ機能
- 荷姿管理
- セット品(アソート品)の在庫管理 など
飲食業界に特化したシステムであれば、これらの機能が標準装備されていることが多いです。
他のシステムとの連携
食材管理システムは他のシステムと連携して使用すると、作業全体の効率が向上します。
<よく連携されるもの>
- 生産管理システム
- 販売管理システム
- POSシステム
- 会計システム
サポート体制
システムの導入直後は操作に不慣れで、エラーの発生が考えられます。また、システムトラブルや災害が発生するとシステムが使えず、困ってしまうでしょう。万が一に備えて、サポート体制が万全か確認しておくと安心です。
費用
食材管理システムの導入時は、機能の過不足がなく、費用と見合っているか確認しましょう。高額で機能が豊富だったとしても、使わないものばかりでは意味がありません。費用対効果も考えつつ、複数のシステムを比較していきましょう。
食材管理システムおすすめ5選│特徴/費用
最後に、食材管理業務を効率化できるおすすめシステムを紹介します。各サービスの特徴や費用を比較して、システム選びの参考にしてみてください。
1. アラジンオフィス for foods
【特徴】
- 食品業界向け販売・購買・在庫・生産管理システム
- 納入期限管理(1/3ルール、1/2ルール)に対応
- 荷姿管理(バラ・ボール・ケース)に対応
- 帳合取引・預かり在庫管理にも対応
- トレーサビリティ機能
種類 | パッケージ型 |
料金 | 要問い合わせ |
提供企業 | 株式会社 アイル |
ホームページ | https://aladdin-office.com/food/ |
2. スマートマットクラウド
【特徴】
- 契約件数1,200件以上、累計出荷台数30,000台以上
- 重量の計測により在庫数を管理
- 在庫とデータのズレ解消により棚卸が不要
- 用途に合わせたタイミングで自動発注が可能
- 冷凍庫・冷蔵庫でも利用可能
種類 | クラウド型 |
料金 | 要問い合わせ |
提供企業 | (株)スマートショッピング |
ホームページ | https://www.smartmat.io/ |
3. クラウドトーマス Pro For foods
【特徴】
- 食品業界向け
- 賞味期限・入り数別・バラピース管理が可能
- Eコマースに対応
- 複雑なカスタマイズにも柔軟に対応
種類 | クラウド型 |
料金 | 150,000円~/月 |
提供企業 | 株式会社関通 |
ホームページ | https://xn--gckr5a9ce1k1c3h.jp/pro/foods/ |
4. 豪商
【特徴】
- 中堅・中小食品企業、約5,000社を対象としたアンケートから誕生
- 全国食品業450社以上への導入実績あり
- 在庫管理の一元化
- トレーサビリティ機能、賞味期限・産地の管理機能が標準装備
- パートナー企業による地域密着型の安心サポート
種類 | パッケージ型 |
料金 | 要問い合わせ |
提供企業 | 株式会社プラネックス |
ホームページ | https://www.goushou.com/ |
5. Fooding Journal
【特徴】
- 飲食店に特化した業務システム
- 廃棄・店舗間移動の管理機能
- スマホ・タブレット対応
- 24時間365日のサポート体制
種類 | クラウド型 |
料金 | 要問い合わせ |
提供企業 | 株式会社プロス |
ホームページ | https://foodingjournal.com/ |
食材管理システムの導入で食材費やロスの軽減を
食材管理システムは在庫管理や人手不足、食品ロスといった課題を抱えやすい飲食店の強い味方です。適正在庫の把握により、無駄のない発注と食品ロスの軽減に期待できます。機能や費用はシステムによって異なるため、この機会に比較検討してみてはいかがでしょうか。
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