オンライン診療システムとは|トレンド/市場規模
オンライン診療システムとは、医院にあるパソコンやスマホ・タブレットを使い、離れた場所にいる患者を遠隔で診察するシステムのこと。予約受付から診察・決済・処方箋の発行まで、すべてオンライン上で完結します。オンライン診療はダウンロードしたアプリか、SkypeやZoomといったWeb会議システムを使って行います。
今回はオンライン診療システムの導入を検討している病院・クリニックに向けて、トレンドや基本機能、導入メリット・事例、導入前に知っておきたい注意点などを紹介します。
コロナ禍で脚光を浴びたオンライン診療システム
日本におけるオンライン診療の歴史は古く、1997年に厚生労働省から遠隔診療に関する通知が出されています。遠隔診療に関するガイドラインが策定されたものの、初診患者は原則対面、かつ対象となるのは離島や僻地に住む患者など複数の条件がありました。
また、当時は今ほどインターネットや各種デバイスが普及していなかったため、遠隔診療はあまり一般的なものではなかったようです。
その後、遠隔診療のあり方に関する議論は続きました。2015年に「遠隔診療の対象者は1997年の通知に示した患者に限定されない」旨が厚生労働省から通達されたのを機に、遠隔診療の普及は加速。2018年には“オンライン診療”と名称を変え、一部の診察が保険適用の対象になります。
そして訪れたのがコロナ禍です。オンライン(遠隔)診療が始まって20年以上が経過した2020年、政府は院内感染や感染拡大防止策として、オンライン診療に関するルールの緩和を発表。医師によってオンライン診療が可能だと判断された場合に限り、初診でもオンライン診療や処方が可能となりました。
これを機に、多くの病院・クリニックがオンライン診療システムを導入しています。患者からしても病院外で受診できるメリットは大きく、利用率は高まっていくものと推測できます。
市場規模は292億円まで成長予定
2020年に調査会社シード・プランニングが行った調査では、2018年に123億円だったオンライン診療の市場規模は、2030年に292億円まで成長するものと見られています。オンライン診療はコロナ禍をきっかけに注目を集めましたが、収束後も需要は続くだろうと推測されています。
オンライン診療システムの5つの基本機能
オンライン診療システムには、予約管理・問診・ビデオチャット診療・クレジットカード決済・処方箋の発行といった5つの基本機能があります。それぞれ見ていきましょう。
1. オンライン予約/受付管理
オンライン診療システムには、予約・受付管理が搭載されています。患者はWebサイトもしくはアプリから24時間好きなタイミングで予約でき、病院側は管理画面で予約状況を確認可能です。電話や対面の受付が不要のため、スタッフにかかる作業の負担を軽減できます。
2. オンライン問診
多くのオンライン診療システムには、オンライン問診機能が備わっています。患者が診察前に問診内容を入力することで、どのような理由で受診するのか分かるため、院内の感染対策や診察の準備に役立ちます。
また、電子カルテと連携できるものであれば、医師やスタッフの入力の手間も省けるでしょう。
3. ビデオチャット診療
診察時間になったら、パソコンやスマホ・タブレットのビデオチャット機能を通して診察を行います。診察や説明、電子カルテへの入力など、作業自体は通常の診療と大差ありませんが、非対面なので発熱している患者であっても安心して診察できます。
4. クレジットカード決済
オンライン診療はクレジットカード決済が主流です。決済手数料はシステムによりますが、決済額の3.45%~4%程度が目安です。
なお、なかにはコンビニ後払いに対応しているオンライン診療システムもあります。そのようなシステムであれば、クレジットカードを持っていない患者でも利用可能です。
5. 処方箋の発行/送信
処方箋の発行・送信機能を利用することで、薬の処方もオンライン上で可能です。処方箋のデータは、オンライン診療後に患者が希望する薬局へ送信されます。なお、処方箋の原本は患者には渡さず、データを送信した薬局へ送付する必要があります。
オンライン診療を受けた患者は、電話・ビデオ通話にて薬剤師から服薬指導を受け、宅配もしくは薬局にて薬を受け取ります。
オンライン診療システムで解決できる課題/導入メリット
オンライン診療システムはコロナ禍ならではの「密集への不安」や、「待ち時間」「アクセス」といった多くの病院・クリニックが抱える課題解決に役立ちます。ここではオンライン診療システムが解決に導く課題と、導入メリットを紹介します。
院内感染 – 約7割の患者が不安に感じる密集の解消
2020年7月、⽇本医師会は「第7回 日本の医療に関する意識調査」を行っています。その中の「医療機関の待合室などで感染症に感染する不安」という項目では、33.2%が「不安」と、36.1%が「やや不安」と回答しており、実に7割近くの人が待合室で不安を抱いていることが分かりました。感染への不安は、受診控えの要因になっているものと考えられます。
この点、オンライン診療が導入されている病院・クリニックでは、基本的に患者が来院する必要はありません。他の患者や医療従事者と対面しないため、感染症への不安は解消されます。導入すれば、受診を控えていた患者の再来院だけでなく、新規の患者も見込めるでしょう。
待ち時間 – 約4割の患者が抱える不満の解消
過去に株式会社メディネットが行った調査結果から、外来患者が抱える不満トップ10の1位が「診察待ち時間(22.2%)」であることが分かっています。
診察待ち時間に対する不満は次の通りです。
- 10分未満:3.7%
- 10~20分:6.0%
- 20~30分:11.7%
- 30~40分:19.5%
20分までは1桁台ですが、30分を超えると不満度は一気に上がっています。
オンライン診療であれば、待ち時間と会計時間のいずれも不要です。待ち時間に関するスタッフへのクレーム減少や、顧客満足度の向上に期待ができます。
アクセス – 約4割の患者が重視する「通いやすさ」をクリア
※出典:医療法人社団SEC新宿駅前クリニック「病院選びと診察についての意識調査」
遠方に住んでいる患者にとって、来院にかかる時間と手間は負担です。それを裏付けるのが、2020年に医療法人社団SEC新宿駅前クリニックが行った「病院選びと診察についての意識調査」の結果です。
同調査にある「何を基準に病院を選びますか?」という質問に対する回答の1位は「通いやすさ・アクセス」で、全体の41%を占めました。この結果から、多くの人が病院を探す基準としてアクセスを重視していることが分かります。
オンライン診療システムは、この課題も解決に導きます。紹介してきたように、オンライン診療は患者の受診場所を問いません。病院から離れた位置に住んでいる患者はもちろん、就職・転勤・結婚などによって遠方に引っ越した患者も、今まで通り受診が可能です。薬も配達されるため、患者の利便性は著しく向上するでしょう。
おすすめオンライン診療システム・サービス比較7選
CLINICS(クリニクス)
CLINICS(クリニクス)は2023年の富士キメラ総研社が実施した調査で導入実績No.1を誇る、国内でも実績が豊富なオンライン診療システムです。
医療機関への導入も多く患者の認知度も高いシステムで、病院予約や問診システムとも連動しています。また予約受付から会計までを1つのシステムで行えるため、キャッシュレス対応を検討のクリニックや病院にもおすすめです。
詳細はこちら:https://clinics-cloud.com/online
YADOC(ヤードック)
YADOC(ヤードック)は3,000以上の医療機関で活用されているオンライン診療システムで、医師と患者の双方向のコミュニケーションをサポートしそれぞれに異なる病気や症状の管理ができます。
ヤードックは小児科での導入や、クリニック通院が困難な患者や自宅療養にもオンライン診療を活用することで病院や患者をサポートができます。
また主要14社の電子カルテとも連携しているため、同じPCでカルテを見ながらオンライン診療を行うことができます。
詳細はこちら:https://online.yadoc.jp/
SOKUYAKU(ソクヤク)
SOKUYAKU(ソクヤク)は初期・月額費用0円から利用ができるオンライン診療システムで、提携している薬局・医療機関の数は1,800件以上もあります。
2021年度の日本コンシューマーリサーチの調査ではブランドイメージ調査でNo.1を獲得しています。ソクヤクはスマホアプリで操作ができるため患者側も簡単に操作ができ、オンライン診療・オンライン服薬指導・くすりの当日手配まで全て対応ができます。
また支払い方法もクレジットに対応しているため、アプリに登録されているクレジット情報から簡単にオンライン決済ができます。
詳細はこちら:https://sokuyaku.jp/sokuyaku_for_clinic/
CURON(クロン)
CURON(クロン)は初期・月額0円から利用ができ決済手数料のみで導入が可能な、オンライン診療サービスです。導入実績は全国6,000件以上・オンライン診療と処方に必要な機能が備わっているため、予約から配送までを完結ができます。
CURONもカレンダー予約からオンライン診療・クレジット決済・薬局への処方箋連携などシステム1つで、一連のフローを完結させることができます。
詳細はこちら:https://curon.co/
ポケットドクター
ポケットドクターはヘルスケア機器との連携が可能で、患者の日々のヘルスデータを診療しながら確認ができるオンライン診療システムです。
医療機関の診療時間・医師の空き時間に合わせて予約枠の登録が可能で、ポケットドクターもオンライン決済に対応しているためクレジットカードによる支払が可能です。
また無料お試しプランも用意がされており、2か月間無料トライアルで利用することもできます。
詳細はこちら:https://www.pocketdoctor.jp/med/
CARADAオンライン診療
CARADAオンライン診療は予約から薬・処方箋の配送までオンライン診療に必要な機能が充実した診療システムです。
システムは誰でも直感的に使えるシンプルな操作性で、システム導入後も定期訪問・電話・メールなどサポート体制も整っています。
また導入までの期間も短く最短7日でシステム導入ができ、すぐにオンライン診療の開始を検討している医療機関にはおすすめです。
詳細はこちら:https://lp.telemedicine.carada.jp/
LINEドクター
LINEドクターは初期・月額0円から利用ができ予約管理から決済までを1つのアプリ上で完結ができるオンライン診療予約システムです。
ビデオ通話による診療・費用の請求といった一連の診察に必要な業務がシステム上で完結できます。ステッカーやポスターなどのスターターキットも無料提供。
またオンライン診療で必要となるヘッドセット&Webカメラも数量限定ではありますが、郵送をしてくれます。
詳細はこちら:https://doctor.line.me/clinic
オンライン診療予約システムの導入事例
オンライン診療システムの導入を迷っている場合は、導入事例が参考になります。ここでは、実際に診療予約システムを活用している医院の事例を2つ紹介します。
導入事例 – 患者の約8割がオンライン診療を選択
医療法人社団若葉の会『新橋メディカルアートクリニック』は、「AGA(男性型脱毛症)」におけるオンライン診療を導入しています。
こちらのクリニックでは遠方に住む患者に対し、オンライン診療システム導入前は電話で対応していたそうです。しかし、電話での診察を続けるうちに、相手の顔が見えるビデオ通話の方がお互いに安心できると考えるように。そして、オンライン診療システムの導入を決めています。
システムの導入後は、患者の約8割がオンライン診療を選ぶようになったそうです。初診は来院する患者が多く、2回目以降にオンライン診療を利用する患者が多いとのこと。窓口ではスマホアプリの使い方を教えることもあるそうです。
なお、同クリニックがオンライン診療システムを導入する際は4社を比較し、使いやすさで選んでいます。
※出典:CLINICSオンライン診療 – 導入事例
導入事例 – 月に1,500人が利用、薬だけの処方に活躍
『いしべ耳鼻咽喉科』は、コロナ禍前の2017年にオンライン診療システムを導入しています。2015年にオンライン診療が離島や僻地に住む患者以外にも適用されたことで、システムの導入に興味を持ったそうです。
その後、耳鼻咽喉科にてオンライン診療が必要なのか考えた結果、薬の連続服用が必要な花粉症などに悩む患者の利便性を向上できると思い、導入を決定しています。システムを選ぶ際は、初期費用や月額費用を比較したそうです。
システムの導入後は、月に1,500人ほどの患者がオンライン診療を利用しているとのこと。テレビ通話での診察や操作方法に関して、特に不自由を感じたことはないと語っています。患者からも「便利になった」と好評で、導入に満足しているようです。
※出典:curon – クロン導入インタビュー007
オンライン診療システム導入のデメリット/注意点
ここまで見てきたように、オンライン診療システムは病院・クリニックと患者、双方にメリットがありますが、事前に知っておきたい注意点もあります。ここでは3つの注意点を見ていきましょう。
検査/触診などができない
オンライン診療は普及が進んでいますが、ルール上対応できない病気もあります。
また、対面と違って検査や触診などもできません。血液やレントゲンなどの各種検査が必要と思われる場合や、緊急性の高い状態であると考えられる場合は、来院を勧める必要があります。
対面診療よりも報酬が低い
対面治療と比較して、オンライン診療は報酬が低いため収益性で劣ります。厚生労働省が発表している令和4年度の初診の点数は、対面治療が288点、オンライン診療が251点です。各種点数は毎年度見直されていますが、報酬の差は依然あるのが実情です。詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。
オンライン診療では処方できない薬がある
オンライン診療では対応できない病気の他に、処方が禁じられている薬があります。例を挙げると、睡眠剤や抗不安薬などの向精神薬、抗がん剤、免疫抑制剤など、特に安全管理が必要な医薬品やハイリスク医薬品です。
オンライン診療システムの導入を検討する際は、自院が扱う病気・薬が対応可能か確認しましょう。
オンライン診療システム導入時の費用/大手メーカー比較一覧表
オンライン診療システムの導入を検討する際は、機能面に加え初期費用や月額費用なども考えましょう。初期費用と利用料金の相場と、大手メーカーの費用比較表を紹介します。
初期費用/利用料金 – 無料~数十万円まで
オンライン診療システムは、初期費用と利用料金が無料で使えるサービスも多くありますが、なかには数万~数十万円する場合もあります。長く利用することを考え、導入時は複数のサービスを比較検討することをおすすめします。
大手/おすすめオンライン診療システム – 初期/月額費用/機能比較6選
高いシェア率を誇る、大手オンライン診療システムの費用比較表を紹介します。
サービス名 | 初期費用 | 月額費用 | サービス利用料/決済手数料 |
CLINICSオンライン | 要問い合わせ | 10,000円 | 3.45% |
curon | 0円※無料 | 0円※無料 | 4% |
YaDoc | 0円※無料 | 33,000円 | 要問い合わせ |
CARADAオンライン診療 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
LINEドクター | 0円※無料 | 0円※無料 | 3.5% |
ポケットドクター | 要問い合わせ | トライアルプラン/0円 (2ヵ月) ゴールドプラン/33,000円 | 要問い合わせ |
オンライン診療システムの導入で患者に選択肢を
コロナ禍で導入が進む、オンライン診療システム。導入すると患者は自宅から診察を受けられるため、感染症や待ち時間への不安が解消されます。
また、直接診てもらいたい時は対面治療、感染症が不安な時はオンライン診療など、選択肢が広がることで患者の利便性が向上するでしょう。自院の利用者増加に期待しつつ、オンライン診療システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。