古物商許可とは?まず知っておきたい基本知識
古物商とはどんな資格?取得が必要なケースとは
古物商とは、中古品を「買い取って販売する」ビジネスを行う際に必要な公安委員会の許可資格です。たとえば、中古ブランド品、古着、家電製品などをリサイクルショップやフリマアプリなどで仕入れて販売する場合、「古物営業法」に基づいて古物商許可を取得しなければなりません。
特に注意すべき点は、「反復継続して古物を取り扱う意思があるかどうか」で、1回限りの売買であっても、営利性が認められれば対象となります。また、個人だけでなく法人も対象であり、ネットショップや副業でも販売活動を行う場合は許可が必要です。
許可を取らずに古物を扱うとどうなる?罰則とリスク
古物商許可を取得せずに中古品の売買を行った場合、「無許可営業」として3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります(古物営業法第31条)。また、違法取引とみなされると、信頼を損ねたり営業停止などの行政処分を受けたりする可能性もあります。
とくに注意したいのが、フリマアプリやネットオークションを使った転売です。営利目的で中古品を継続的に売買する行為も対象になるため、副業であっても「自分には関係ない」と判断せず、しっかりと許可を取得することが重要です。
個人・法人どちらでも取得できる?申請の違いを解説
古物商許可は、個人でも法人でも申請可能です。ただし、申請に必要な書類や審査の内容には違いがあります。
- 個人の場合:申請者本人の住民票、身分証明書、略歴書、誓約書などを提出します。
- 法人の場合:法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、定款のコピー、役員全員の住民票や身分証明書などが必要です。
また、法人申請では代表者だけでなく、役員全員が欠格要件を満たしていないか審査されるため、個人に比べて少し準備に時間がかかる傾向にあります。いずれにしても、営業所がある都道府県の警察署を通じて、公安委員会に申請します。
古物商の許可を取るための流れを解説
取得に必要な5つのステップ
古物商許可を取得するには、以下の5つのステップを順番に進めていく必要があります。
- 営業所の確保
まず古物商として活動する場所(営業所)を用意します。自宅でも構いませんが、賃貸物件の場合は大家の使用承諾書が必要になることがあります。 - 必要書類の準備
個人・法人によって異なる必要書類を揃えます。書類には、住民票、身分証明書、誓約書、略歴書、登記事項証明書などがあります。 - 申請書の記入と提出
主たる営業所の所在地を管轄する警察署(防犯係)で申請書を記入し、必要書類と共に提出します。申請時には手数料19,000円(現金または収入証紙)を納付します。 - 審査(約40日)
申請書の内容と欠格要件に該当しないかの確認が行われます。営業所の実地調査がある場合もあります。 - 許可証の交付とプレート作成
審査に通ると許可証が交付されます。その後、古物商プレートを作成し、営業所に掲示して営業を開始します。
申請から許可が下りるまでの期間と費用
古物商許可の申請から交付までの期間は、約40日(土日祝除く)が一般的です。これは各都道府県公安委員会での審査期間で、混雑具合によって若干前後します。
また、申請には以下の費用がかかります。
- 申請手数料:19,000円(都道府県によって納付方法は異なる)
- プレート作成費用:1,000円〜3,000円程度
行政書士に申請代行を依頼する場合は、別途3万円〜5万円程度の報酬がかかるのが一般的です。
どこに申請する?管轄警察署の確認方法
古物商許可の申請は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署(防犯係)を通じて、都道府県の公安委員会に行います。たとえば、東京都内に営業所がある場合は、その区を管轄する警察署が申請窓口となります。
申請先の警察署は、以下の方法で確認できます:
- お住まいまたは営業所住所の最寄り警察署に電話で確認
- 都道府県警察の公式サイトで案内ページを確認
なお、事前相談を受け付けている警察署も多く、申請前に相談しておくと手続きがスムーズになります。
申請に必要な書類と書き方のポイント
個人・法人それぞれに必要な書類一覧
古物商許可の申請時には、個人と法人で提出すべき書類が異なります。以下に、それぞれの必要書類を整理します。
個人で申請する場合の必要書類
- 住民票(本籍記載・マイナンバー記載なしのもの)
- 身分証明書(本籍地の市区町村で取得する、破産・禁治産等の記録を証明するもの)
- 略歴書(過去5年の職歴を記載)
- 誓約書(欠格要件に該当しない旨の誓約)
- 営業所が賃貸の場合は、使用承諾書や賃貸契約書の写し
- 営業所の周辺地図、配置図
法人で申請する場合の追加書類
- 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 定款のコピー
- 法人の役員全員分の住民票、身分証明書、略歴書、誓約書
※法人申請では、代表者だけでなく役員全員の審査が行われます。
略歴書・誓約書・身分証明書の記入例と注意点
略歴書の書き方
略歴書には、過去5年間の職歴・学歴・無職期間を時系列で記入します。空白期間がある場合も、明確に「求職活動中」「無職」などと記載しましょう。虚偽の記載は審査落ちの原因になります。
誓約書の注意点
誓約書は、欠格要件(暴力団関係者でない、破産していない、成年被後見人でない等)に該当しないことを誓う文書です。指定された様式があるため、警察署で配布される書式を使用してください。
身分証明書について
住民票とは別の書類であり、本籍地のある市区町村役場で取得します。「破産者ではない」などの法的効力を証明するためのものです。住民票と混同しやすいので注意が必要です。
書類不備で落ちるのを防ぐチェックリスト
申請が却下される主な原因は、「書類の不備」や「記載ミス」です。以下のチェックリストを参考に、提出前に必ず確認しましょう。
- ✅ 住民票にマイナンバーが記載されていないか
- ✅ 身分証明書は本籍地の役所で発行されたものか
- ✅ 略歴書に空白期間や不明瞭な記述がないか
- ✅ 使用承諾書が必要な物件で、許可が取れているか
- ✅ 提出書類に押印や署名漏れがないか
- ✅ 警察署指定の様式で記入しているか
上記のポイントを押さえることで、スムーズな審査通過が期待できます。
どんな人が許可を取れない?欠格要件を確認
過去の経歴やトラブルが影響するケース
古物商許可の申請には、「欠格要件」と呼ばれる取得制限があります。以下に該当する場合、許可を得ることはできません。
- 過去に古物営業の許可を取り消されたことがある人(取り消しから5年以内)
- 古物営業法違反や窃盗、詐欺、横領などの罪で罰金以上の刑を受け、5年を経過していない人
- 暴力団員またはその関係者と認定される人
これらに該当するかどうかは、住民票や身分証明書、略歴書などをもとに公安委員会が審査します。特に過去のトラブル歴がある場合、申請前に行政書士や警察署に相談するのが望ましいです。
未成年・破産歴・住居不定など注意が必要な条件
以下のような状況にある人も、古物商許可を取得できません。
- 未成年者(ただし親権者等の代理申請で取得可能なケースも)
- 成年被後見人・被保佐人(判断能力に制限があると認定された人)
- 破産手続中の人(復権していない限り不可)
- 住居不定の人(住民票上の住所が存在しない場合)
また、法人で申請する場合は、これらの欠格要件が代表者だけでなく、役員全員に適用されるため、構成員全員が条件を満たしている必要があります。
欠格要件に該当するか不安な場合は、申請前に警察署にて事前相談を受けることができます。事前に状況を説明し、審査に通る可能性を確認しておくと安心です。
取り扱う品目の選び方と注意点
古物商13品目の一覧と具体的な例
古物商許可を申請する際には、扱う予定の品目を選んで申告する必要があります。古物営業法では、中古品を以下の13品目に分類しています。
分類 | 内容例 |
1. 美術品類 | 絵画、彫刻、工芸品など |
2. 衣類 | 古着、和服、バッグ、靴など |
3. 時計・宝飾品類 | 腕時計、ネックレス、指輪など |
4. 自動車 | 乗用車、トラックなど |
5. 自動二輪車・原付 | バイク、原付 |
6. 自転車類 | 自転車、電動アシスト自転車など |
7. 写真機類 | カメラ、レンズ、ビデオカメラなど |
8. 事務機器類 | パソコン、プリンター、コピー機など |
9. 機械工具類 | 工具、農業機械、建設機械など |
10. 道具類 | 家電製品、楽器、家具、おもちゃなど |
11. 皮革・ゴム製品 | 鞄、バッグ、靴、毛皮類、化学製品 |
12. 書籍 | 文庫、コミック、雑誌 |
13. 金券類 | 商品券、切手、株主優待券など |
複数の品目を選択することも可能ですが、審査の手間や運用管理の観点から、初回は必要最低限にとどめるのが望ましいです。
初めてでも安心!品目は少なめに選ぶべき理由
古物商許可の申請時に多くの品目を申告すると、審査が複雑化し、許可取得までの期間が延びる可能性があります。また、営業開始後は、選択したすべての品目について帳簿管理や取引記録の保存義務が発生します。
そのため、初めて申請する方には、以下のような考え方がおすすめです:
- 実際に扱う予定のある品目だけに絞る
- 業務を始めた後に、必要に応じて追加申請をする
このようにすることで、申請時の負担も軽くなり、許可取得後の運用もスムーズになります。
許可取得後に品目を追加する方法
許可取得後に新たな品目を扱いたくなった場合は、「変更届出書」を提出することで品目を追加できます。手続きは営業所を管轄する警察署で行います。
【品目追加の基本手順】
- 変更届出書の記入(警察署で様式を取得)
- 必要書類の提出(営業所の変更がある場合はその書類も)
- 警察署に提出し、受理されれば追加完了
追加に関しては審査期間がほとんどないため、基本的にはすぐに反映されます。ただし、営業所が変わる場合などは再度審査が必要になることがあります。
営業所の条件とネット販売の取り扱い
自宅・賃貸でも申請できる?営業所の要件
古物商許可を取得するには、営業所の実体があることが条件です。自宅でも営業所として申請可能ですが、以下のような要件があります。
- 物理的に存在すること(郵便物が届き、訪問可能であること)
- 住所が登記・申請書に記載できること(表札や看板の掲示が推奨)
- 賃貸物件の場合は、大家や管理会社の「使用承諾書」が必要
- 1人暮らしのマンションでもOKだが、管理規約で商用利用が禁止されていないか要確認
店舗を構えなくても許可は取れますが、書類に虚偽があると許可が下りないので注意が必要です。
ネット販売・フリマアプリも許可が必要?
ネット上で中古品を反復継続して販売する場合も、古物商許可が必要です。以下のようなケースが対象となります。
- メルカリ・ラクマ・ヤフオクなどで中古品を定期的に販売している
- ネットショップ(BASEやShopify)で中古品を扱っている
- 海外から中古ブランド品を仕入れて転売している
一方、自分の不要品を一度限りで売る場合や、新品のみの取扱いであれば古物商許可は不要です。ただし、「営利目的」で繰り返し販売していると見なされると、無許可営業と判断される可能性があります。
バーチャルオフィスや無店舗営業の注意点
最近ではコスト削減のためにバーチャルオフィス(住所貸しサービス)を利用しようと考える人もいますが、古物商許可では原則としてバーチャルオフィスはNGです。
その理由は以下の通りです。
- 実際に営業実態が確認できない(警察の実地調査に対応できない)
- 他の利用者と住所が重複するため、責任の所在が不明確になる
- 書類上の住所と実際の保管場所が異なると違反になる可能性がある
また、店舗を持たずにネットのみで営業する「無店舗営業」自体は可能ですが、営業所(拠点)として使用できる住所は必ず必要です。
行政書士に依頼するべき?自分でやる?
自分で申請するメリット・デメリット
古物商許可は、自分で申請することも十分可能です。以下に、自己申請のメリットとデメリットを整理します。
メリット
- 費用を抑えられる(申請手数料19,000円のみ)
- 仕組みを理解できるため、その後の運用に役立つ
- 自分のペースで進められる
デメリット
- 必要書類の収集や記入に時間がかかる
- 記載ミスや不備で再提出になる可能性がある
- 警察署とのやり取りや質問対応が必要になる
書類作成や法令の読み解きに自信がある方、コストを抑えたい方には、自力申請がおすすめです。
行政書士に依頼する場合の費用と流れ
書類作成に不安がある方、時間が取れない方は、行政書士に依頼するという選択肢があります。
一般的な費用相場
- 30,000〜50,000円前後(報酬)
- +申請手数料19,000円(別途)
依頼から取得までの流れ
- ヒアリング・必要書類の案内
- 書類の作成とチェック
- 管轄警察署への申請(同行または代理提出)
- 許可が下り次第、行政書士から連絡
- プレート作成のアドバイスやアフターフォロー
プロに任せることで、手間や不安を大きく軽減できます。
どんな人が行政書士の代行サービスを使うべき?
以下のような方は、行政書士など専門家への依頼を検討するのが良いでしょう。
- 平日は仕事で忙しく、警察署に行く時間がない人
- 書類作成に自信がなく、ミスによる申請却下を避けたい人
- 急いで許可を取りたい人(プロなら書類を短期間で準備可能)
- 法人で役員が多く、複雑な書類が必要なケース
費用はかかりますが、手続きに不慣れな方や失敗したくない方にとっては、安心と効率を買う価値があります。
古物商許可取得後にやるべきこと
プレートの作成と設置の義務
古物商の許可が下りた後は、「古物商標識(プレート)」を作成し、営業所に掲示する義務があります。これは古物営業法で定められたルールであり、掲示しないまま営業すると指導や処分の対象になることもあります。
プレートに記載する内容(例)
- 「東京都公安委員会許可 第123456789号」
- 「古物商 ○○太郎」
プレートはインターネット通販などで1,000円~3,000円程度で注文可能です。材質はアクリル・金属・プラスチックなどさまざまですが、耐久性と見やすさを考慮して選ぶとよいでしょう。
変更・追加申請が必要なケースとは?
古物商許可を取得した後でも、以下のような変更があった場合は、管轄の警察署を通じて「変更届出」や「変更申請」が必要です。
変更内容 | 届出・申請の必要性 |
氏名・住所の変更 | 届出が必要 |
営業所の移転 | 新たな許可申請が必要 |
取扱品目の追加 | 届出が必要 |
役員の変更(法人) | 届出が必要 |
法人代表者の交代 | 許可の再取得が必要になることも |
変更の内容によって手続きの内容が異なるため、不明点は警察署に確認することをおすすめします。手続きを怠ると、許可が無効になる可能性もあるので注意しましょう。
帳簿の管理や届け出義務も忘れずに
古物商として営業を開始したら、帳簿の記録・管理義務も発生します。これは、盗品などの不正取引を防止するための措置です。
記録が必要な内容は以下のとおりです:
- 買取・販売した商品の名称・数量・特徴
- 取引日・相手方の氏名・住所・本人確認書類の種類・番号
- 取引方法(現金、振込、フリマアプリなど)
帳簿の形式は、紙・Excel・専用ソフトいずれも可能ですが、警察からの確認に備えていつでも提示できる状態にしておく必要があります。帳簿は最低3年間の保管義務があるため、整理して保存しましょう。
複数の都道府県で販売する場合は?
基本的に営業所がある都道府県でのみ許可を取得すればOKです。ただし、営業所が複数ある場合は、それぞれの所在地で許可を取得する必要があります。
たとえば、東京と大阪に営業所があるときは以下のようになります。
- 東京都に営業所 → 東京都公安委員会で許可取得
- 大阪にも別の営業所 → 大阪府公安委員会で別途許可が必要
また、インターネットを通じて全国に販売する場合でも、「主たる営業所の所在地」で許可を取得すれば問題ありません。
副業や会社員でも取得できる?
はい、副業や会社員でも古物商許可は取得可能です。実際に副業でフリマアプリやネットショップを運営している人の多くが、古物商許可を取得しています。
ただし、以下の点には注意が必要です。
- 勤務先の就業規則に副業禁止規定がないか確認
- 営業所として申請する場所が実在しているか(自宅でも可)
- 許可取得後は帳簿管理などの義務も発生する
会社員でも、「副業で本格的に中古品販売を始めたい」「メルカリで仕入れ転売をする予定がある」といった方は、早めに古物商許可を取得しておくと安心です。