フランチャイズオーナーの平均年収
フランチャイズオーナーの平均年収は、業界・業種や店舗数によって大きく異なり、一概に金額を提示することはできません。ただ、業界・業種ごとの年収目安や特徴をお伝えすることはできます。
コンビニエンスストアの場合
平均年収は約700万円と比較的高い水準ですが、フランチャイズオーナー個人の年収ではなく、1店舗あたりの年収として捉える必要があります。夫婦で経営している場合は、夫婦合わせた年収が約700万円となります。
飲食業の場合
平均年収は約400万円~1,000万円と幅があります。飲食業はフランチャイズのなかでもロイヤリティが低い業種であるため、売上次第では高収入を得られる可能性があります。
塾の場合
平均年収は約300万円~600万円です。開業当初は地域に根付くまでに時間がかかるため、100万円程度の年収になることもあります。しかし、生徒の集客に成功し、店舗数が増えていけば数千万円の年収も期待できます。
リペア/ハウスクリーニングの場合
平均年収は約500万円~900万円です。技術や経験がなくても、研修制度が充実しているため、比較的短期間で開業できます。少ない資金でも開業しやすいこと、土日のみの副業としても取り組みやすいことから、融資を受けずに開業したい人やスモールスタートしたい人にも人気です。
買取の場合
平均年収は約1,000万円~1,400万円と、非常に高い水準です。高額な商品を扱うため専門知識や経験が必要ですが、フランチャイズに加盟し研修やマニュアルを活用することで、開業のハードルを低くできます。最近は加盟店が買い取った商品を本部が買い上げるモデルのチェーンも多く、在庫リスクを抑えて運営できると人気です。
コインランドリーの場合
平均年収は約300万円です。人件費を抑えられること、店舗に常駐する必要がないことから、副業として始める人も少なくありません。
フランチャイズオーナーの仕事内容
フランチャイズオーナーの仕事内容は、加盟するフランチャイズによって異なりますが、大きく3つに分けられます。具体的な仕事内容やオーナーとして意識すべきことについて解説します。
経営管理
店舗の運営に必要な資金調達、売上管理、人材の採用・教育、店舗運営に関する意思決定などを行います。本部からの指示に従いながら、店舗の経営状況を常に把握し、適切な判断を下すことが求められます。
これらは経営者としての業務です。ある程度は人に任せることもできますが、資金調達や意思決定などの重要な業務はオーナー自らが行わなければなりません。
店舗運営
店舗の清掃、商品陳列、接客、顧客対応、トラブル対応などを行います。店舗の規模や業種によって具体的な業務内容は異なりますが、顧客満足度向上と売上拡大のために、常に努力する必要があります。
これらの業務は、いわゆる店長業務です。ただ、オーナーは店長と違い、店舗運営だけでなく経営判断も行わなければなりません。雇用した店長にこれらの業務を任せ、オーナー自身は経営に専念するのもいいでしょう。「自ら店頭に立ちたい」「独立・開業したばかりで資金がない」という場合はオーナーが店長業務をすることが、「多店舗展開したい」「経営が軌道に乗ってきたから余裕をつくりたい」という場合は雇用した店長に任せることが多いです。
本部との連携
本部からの指導や研修を受け、経営ノウハウを習得します。また、定期的に売上報告や店舗運営状況の報告を行う必要があり、本部との密なコミュニケーションが求められます。
店長を雇用している場合、店長との連携を意識しながら本部とコミュニケーションを取らなければなりません。店長とオーナーの間で認識の齟齬があると、スムーズな店舗運営が難しいでしょう。
本部主導の研修やイベントなどに店舗スタッフを連れて行く機会もあるはずです。このようなときは現場を直に見ている店長と話し合い、どのスタッフを連れて行くのか、スタッフの育成プランと併せて考えることが大切です。
フランチャイズオーナーになるメリット
フランチャイズオーナーになることで、自力で起業するよりも少ないコストとリスクでビジネスを始められます。その理由を、フランチャイズオーナーになる3つのメリットと併せて紹介します。
メリット1.未経験でも開業しやすい
フランチャイズオーナーになる最大のメリットは、未経験でも比較的容易に開業できることです。
フランチャイズ本部から経営ノウハウや店舗運営マニュアルが提供されるため、ビジネス経験がなくても、必要な知識やスキルを身につけられます。また、研修制度が充実しているため、実践的なスキルを習得してから独立・開業できます。
開業資金の調達や店舗物件の選定などのサポートを受けられる場合もあり、自力での開業に比べて、コストやリスクを抑えながら事業を始められます。
メリット2.多店舗展開がしやすい
フランチャイズシステムは、ブランド力やノウハウを活かして、比較的容易に多店舗展開できます。
1店舗目の成功を基に複数の店舗を展開することで、売上を拡大し、経営を安定化させられます。本部からのサポートも受けられるため、より安全に、より効率的に多店舗展開を進められるでしょう。
2店舗目以降はスケールメリットを活かして、コストを抑えながら運営できるため、加速度的に利益率を伸ばしていけます。
メリット3.コストを抑えて開業・運営できる
フランチャイズでは本部からの支援により、コストを抑えて開業・運営できます。そのため、自己資金が少ない人、融資を受けずに自己資金のみで開業したい人におすすめです。
商品仕入れでは、フランチャイズ本部がまとめて商品を仕入れるため、一括(大量)仕入れによる割引価格で商品を購入できます。加盟するチェーンによりますが、フランチャイズ本部が統一的な広告宣伝活動を行うため、広告宣伝費も削減可能です。
何よりフランチャイズ本部から店舗運営に関するノウハウやシステムを提供されるため、効率的に運営できます。マニュアルも充実しているため、スタッフの育成にかかる労力も最小限です。
フランチャイズオーナーになるデメリット
フランチャイズオーナーになることには、メリットだけでなく、デメリットも存在します。開業前にしっかりと理解し、慎重に検討することが重要です。
デメリット1.自力での開業に比べて自由度が低い
フランチャイズオーナーは本部からの指導を受けながら運営するため、自力での開業と比べて自由度が低くなります。
店舗運営は本部が定めたマニュアルやルールに従う必要があり、商品仕入れは本部指定の商品に限られます。価格設定も自由にできず、本部が定めた価格で販売しなければなりません。これらの制限により、独自のアイデアを活かした経営は難しくなります。自由に商品を選びたい人、自分のアイデアや顧客の声を活かしてサービスを改善していきたい人には窮屈かもしれません。
営業時間や定休日の定めがあり、オーナー自ら店頭に立つ場合、自由な働き方も難しいかもしれません。「せっかく独立したのに、会社員の頃とあまり働き方が変わっていない」「会社員だった頃よりも忙しくなった」とならないよう、加盟前にこれらの縛りについてよく確認しておきましょう。
デメリット2.競業避止義務や違約金の縛りがある
フランチャイズ契約には、競業避止義務や違約金の縛りがある場合があります。
競業避止義務とは、契約期間中はフランチャイズと同業種の事業を行ってはいけないという制限です。フランチャイズ契約の解約後も、一定期間有効であることが多いです。そのため、「自分で事業を起こすために、フランチャイズに加盟してノウハウを学んでから独立しよう」という考え方はおすすめできません。
また、フランチャイズには契約期間の定めがあり、期間内に解約すると違約金を支払う必要があります。事業が赤字でも違約金がネックになり、なかなか解約(廃業)できないというケースもあるでしょう。
これらの義務や縛りにより、事業の撤退や業態変更が難しくなり、経営リスクを高める可能性があります。
デメリット3.他店による風評被害のリスクがある
フランチャイズシステムは、同じブランドを掲げて運営するため、ほかの店舗による風評被害を受けるリスクがあります。
ほかの店舗で食中毒や顧客トラブルが発生する、サービス品質が低いなどの問題が起こると、チェーン全体の信頼低下や売上減少につながる可能性があります。自店舗は直接的な関係がなくても、顧客離れや売上の減少といった影響を受けるかもしれません。
フランチャイズオーナーになる前に、ブランド全体の評判やほかの店舗の運営状況を十分に確認し、風評被害のリスクを理解しておくことが重要です。自店舗において顧客満足度向上や高品質なサービス提供に努めることで、風評被害の影響を受けにくくすることもできます。
フランチャイズオーナーに向いている人
フランチャイズオーナーは、責任感と自立心を持って、自らの判断で経営を進めていく必要があります。さらに、高い協調性と主体性を兼ね備え、本部との良好な関係を築きながら事業を運営していくことが重要です。フランチャイズオーナーに向いている人の特徴を3つ紹介します。
責任感と自立心がある人
フランチャイズオーナーは、店舗運営の責任をすべて負います。売上や利益はもちろんのこと、従業員の管理や顧客対応など、さまざまな課題に自らの判断で対応していかなければなりません。そのため、責任感と自立心を持って、積極的に行動できることが求められます。
売上目標達成のために独自のマーケティング戦略を立案・実行できる人、顧客満足度向上のため従業員教育に力を入れられる人、経営状況を分析し必要に応じて改善策を実行できる人などが向いています。
協調性と主体性が高い人
フランチャイズオーナーは、本部との良好な関係を築くことが重要です。本部は経営ノウハウや店舗運営マニュアルを提供するだけでなく、さまざまな課題解決を支援します。本部からの指導を受け入れる素直さ、積極的にコミュニケーションを取っていく協調性が必要です。
その一方で、自らの意見を積極的に提案し、経営者として前のめりに行動していく主体性も必要です。
本部のマニュアルやアドバイスをすぐに、そのまま実践できる人、わからないことや不安なことがあればすぐに質問できる人などが向いています。
忍耐力がある人
フランチャイズオーナーになっても、すぐに結果が出るものではありません。長期的な視点で、忍耐強く努力を続けることが求められます。
短期的な利益よりも長期的な視点で経営を考えられる人、困難な状況でも諦めずに努力を続けられる人、目標達成に向けて計画的に行動できる人などが向いています。
また、フランチャイズオーナーには主体的・積極的に行動していく力が求められますが、ここぞの場面での慎重さも大切です。「すぐに開業したい」とはやる気持ちを押さえて準備ができる人、事業拡大に向けて情報を集めたり資金を用意したりできる人も、フランチャイズオーナーに向いています。
自力での独立・開業に向いている人
自力での独立・開業は自由度が高いと同時に、責任やリスクも大きいです。成功するには強い意志とさまざまな課題を乗り越える力が必要です。自力での独立・開業に向いている人の特徴を3つ紹介します。
強い意志と情熱
独立・開業には、明確な目的意識と強い意志が必要です。目的意識がはっきりしていないと、困難にぶつかったとき、それを乗り越える気力がわいてきません。自分が本当にやりたい事業を明確に理解している人、困難な状況でも諦めずに努力を続けられる人などが向いています。
フランチャイズオーナーと異なり本部からのサポートがなく、すべての課題を自分の力で乗り越えなければなりません。そのためには強い意志力が必要ですが、意志力を保つにはコツがあります。たとえば栄養バランスの取れた食生活や十分な睡眠時間、適度な運動などを心がけることで、メンタルをフラットな状態に保てます。このことを理解し、自分で自分をケアする力も必要です。
問題解決能力
独立・開業には、予期せぬ問題や課題が常に発生します。このような事態に陥っても冷静に、自ら問題の解決策について調べたり考えたりする力が必要です。柔軟な思考でさまざまな解決策を検討できる人、失敗から学び改善していくことができる人、適切な相談相手を探してアドバイスを素直に受け入れられる人などが向いています。
特に重要なのが自分の頭で考える力です。インターネットが普及した現代では、わからないことがあっても検索ですぐに調べられます。しかし、経営課題の解決方法は調べて見つかるものではありません。検索したり人に相談したりして得たヒントをもとに、自分の頭で考える力が必要です。
コミュニケーション能力
独立・開業を成功させるには、顧客や取引先と良好な関係を築くこと、困難な状況に陥ったときに相談したり助け合ったりできる協力者を見つけることが欠かせません。
特に自力での開業ではフランチャイズ本部からのサポートがないため、自力で協力者や取引先を見つけなければなりません。顧客のニーズを丁寧に聞き取り適切な提案ができる人、相手に信頼感を与えるコミュニケーションを取れる人などが向いています。
フランチャイズオーナーになる方法と成功のポイント
フランチャイズオーナーになり成功するには、事前にしっかりと情報収集を行い、自分に合ったフランチャイズ本部を選ぶことが重要です。経営者としての自覚を持ち、本部と協力しながら事業を進めていく必要もあります。
そのために大切な5つのポイントを紹介します。
ポイント1.複数のフランチャイズを比較・検討する
複数のフランチャイズを比較・検討することで、自分に合ったフランチャイズを見つけられます。比較するポイントには、事業内容、初期費用、ロイヤリティなどがあります。まずはフランチャイズ比較サイトや加盟店募集の要項、資料請求などを通して、これらの情報を集めましょう。
ポイント2.各チェーンの稼げる仕組みやサポート体制をチェックする
各フランチャイズチェーンの収益モデルやサポート体制をしっかりと確認することが重要です。収益モデルには、ロイヤリティや使用料などによる継続的な収入、商品販売収入、サービス提供収入などがあります。理想とする働き方や地域特性などを軸に、自分に合う収益モデルを選びましょう。
たとえば不労所得をつくりたいなら、コインランドリーや格安SIMの販売代理店などが適しています。コインランドリーは定期的な清掃や備品の補充こそ必要ですが、スタッフを常駐させる必要がなく、不労所得に近い収入源になりえます。格安SIMの代理店のなかには、ユーザーが支払う月額料金の一部が、契約を獲得した代理店に継続して入るものがあります。
稼げる仕組み、リスクヘッジのための仕組みも大切です。たとえば買取販売のフランチャイズでは、加盟店が一般消費者から買い取った商品を、本部がそのまま買い取ってくれるところがあります。このような仕組みなら、加盟店は在庫を抱えるリスクがありません。
サポート体制では開業支援はもちろん、開業後の運営支援も充実していることを確認しましょう。どのようなマニュアルが提供されるのか、定期的に研修が開かれるのか、スーパーバイザーの訪問はあるのかなどが主な確認ポイントです。
ポイント3.「自分との相性」も重視して本部を選ぶ
フランチャイズオーナーにとって、本部は事業運営のパートナーとなります。そのため、本部の経営理念や価値観に納得・共感できるかが重要です。考え方が合わないと、本部からのアドバイスを素直に受け入れられないでしょう。経営方針が合わなければ、事業に対するモチベーションが一気に下がってしまうかもしれません。
ロイヤリティやサポート体制などの条件面も大切ですが、事業へのモチベーションを維持するには、このような相性が重要です。
ポイント4.経営者としての自覚を持ち、対等なパートナーとして本部と接する
フランチャイズオーナーは、経営者としての自覚を持つことが重要です。本部からの指示やアドバイスに従う必要はありますが、自らの判断で経営を進めていくことも大切です。
わからないことや不安なことを相談したり、定期的に開かれる研修に参加したり、本部からのサポートを徹底活用することは大切です。しかし、本部に頼りきりの姿勢ではいけません。本部とは対等なパートナーとして接し、積極的に意見交換を行うことを心がけましょう。
ポイント5.オーナー自身や家族の人件費を忘れない
収益計画を立てる際には、オーナー自身や家族の人件費も忘れずに考える必要があります。人件費を削減するためにオーナーや家族が店頭に立ち働くということは多いです。
自分や家族への給料を考えず、ただ人件費の削減のために店頭に立つということを続けていると、自分の首をどんどん絞めていくことになります。自分や家族への給料を考慮に入れることで、より現実的な収益計画を立てられます。
フランチャイズオーナーには高い協調性と主体性が求められる
フランチャイズオーナーが成功するには、本部との連携が欠かせません。高い協調性を持ち、本部からの指示やアドバイスを素直に受け入れ、積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
その一方で、フランチャイズオーナーは経営者であり、自らの判断で店舗運営を行う必要があります。本部からの指示に従いながらも、言いなりになるのではなく、主体的に考え行動することも重要です。
フランチャイズオーナーは、協調性と主体性の両方をバランスよく持ち合わせている必要があります。この2つの資質は今の仕事や普段の生活での心がけで鍛えれます。今すぐフランチャイズオーナーになる予定でなくとも、これらを意識し、フランチャイズオーナーとしての資質を養っておきましょう。