終身雇用や年功序列の制度が廃止されつつある昨今、今努めている会社を早めに退職して次のキャリア設計を始めたい、何か好きなことややりたいことのために時間をつかいたい、なんて方も少なくないでしょう。そんなときに検討してみたいのが早期退職です。早期退職とはどのような制度で、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。解説していきます。
早期退職とは
早期退職制度とは定年前に退職を希望する社員が自主的に退職できるための制度です。退職希望者は退職金の割増し、勤務の免除、キャリアサポートなどの優遇措置が一般的に受けられます。
社員が会社に退職を強要されることはなく、あくまで対象は定年前に退職を希望する人です。会社に早期退職制度があったとしてもその会社で勤められます。
早期退職でもらえる2種類の退職金
早期退職をする際、気になるのは退職金についてではないでしょうか。早期退職をしてもらえる退職金には、退職一時金と退職年金(企業年金)の2種類があります。それぞれどのような退職金なのか、解説します。
退職一時金
早期退職でもらえる1つ目の退職金は、退職一時金です。退職一時金制度とは、企業が独自に積み立ててくれていた金額を全額退職時に支給してもらえる制度です。一般的に退職金と聞いてイメージされるのは、退職一時金であれことが多いでしょう。
もらえる額や時期については企業の規程で定められています。詳しくはご自身の企業の規定を確認してみてください。
退職年金(企業年金)
早期退職でもらえる2つ目の退職金は、退職年金(企業年金)です。退職年金制度とは、企業を退職した際に自身もしくは家族に支払われる企業年金のことで、確定拠出年金や確定給付企業年金などの制度を含みます。
退職金は一般には一括で受け取ります。それに対して企業年金の場合には、満額を分割して定期的にお金を受け取れます。退職年金の場合は一般的な分割でなく、一括受け取りの選択もできます。どのように受け取るかはライフスタイルに合わせて決めましょう。
早期退職制度を利用すると、退職金はどうなるのか
早期退職制どを利用すると、どれほどの退職金をもらえるようになるのでしょか。
早期退職制度を利用すると、退職金が平均700万円増える
早期退職をすると、退職金が大学・大学院卒(管理・事務・技術職)、高校卒(管理・事務・技術職)、高校卒(現業職)の退職金を平均して700万円ほど多く退職金がもらえます。
定年 早期退職 差額
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 1,896万円 2,266万円 370万円
高校卒(管理・事務・技術職) 1,682万円 2,432万円 750万円
高校卒(現業職) 1,183万円 2,146万円 963万円
【参照】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou04.pdf
早期退職する前に、給与規定をよく確認しよう
どこの企業でも同じように退職金をもらえるわけではあります。自分がどれほどの額をもらえるのか企業の給与規定によって異なります。相場を調べてみることも重要ですが、自分自身の給与規定も事前に確認してみるようにしましょう。
2種類の早期退職制度
早期退職といっても選択定年制度と早期希望退職制度という2種類の制度があります。どちらの制度も早期退職をすることに変わりはないものの、実施される目的が大きく異なることから自己都合の退職なのか、会社都合の退職なのかみなされ方が異なってきます。
退職が自己都合なのか会社都合なのかは次のキャリア設計にも関わってくることです。選択定年制度と早期希望退職制度の違いを解説します。
選択定年制度
早期退職するための1つ目の制度は、選択定年制度です。
選択定年制度とは、50歳から65歳までの間であらかじめ自分自身で定年を設定し、その年齢になったタイミングで早期退職するかどうかの選択ができる制度です。自分で設定した年齢での貯蓄額や年金受給のタイミングによって、退職せずに定年後も働くかの選択ができます。選択定年制度を利用するとそのまま同じ会社で勤務を継続できます。そのため、定年後新たに働き口を探す必要がないのがメリットです。
一般的に、自身で設定していた年齢で早期退職すると退職金が増額されます。それに対して定年後も継続して勤務をする場合は役職から外されたり、給与が減額されたりするケースが好少なくありません。
そんな選択定年制度とは、福利厚生を目的として活用される制度です。定年まで一社で勤める終身雇用や年功序列の時代ではなくなりつつある昨今、転職・独立・開業・早期リタイヤなど、自身の理想とする人生を歩むことを選択定年制度の目的としています。あくまで自分の選択での退職となるため、自己都合での退職とみなされます。
早期希望退職制度
早期退職するための1つ目の制度は、希望退職制度です。
主に経営悪化に陥った企業が定年前の従業員に対して退職一時金の割増しのような優遇措置を提示し、期間を定めて早期退職者を募集するのが、希望退職制度です。業績悪化に伴う人件費削減や経営リスクに備えてコストカットをすることを目的として利用されています。
希望退職制度は選択定年制度と異なり企業の都合上での退職にあたるため、基本的には会社都合による退職とみなされます。
早期退職では退職金だけでなく、失業手当も考えよう
早期退職をする際には、退職金がいくらもらえるのかはもちろん、失業手当がどれほどもらえるのかも確認しましょう。自己都合で退職した場合と会社都合で退職した場合とでは失業手当を受給できる条件も異なります。
自己都合退職(選択定年制度)の場合
自己都合で退職した場合、失業保険に加入していた期間に応じて受給期間が決まります。
会社都合退職(早期希望退職制度)の場合
会社都合で退職した場合、失業保険に加入していた期間と年齢に応じて受給期間が決まります。
【参照】
ハローワークインターネットサービス|基本手当の所定給付日数
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
早期退職するメリット
早期退職するのには、いくつかのメリットがあります。早期退職を決意するためにも、どのようなメリットがあるのかは知っておきたいでしょう。早期退職する3つのメリットをご紹介していきます。
退職金が増える
早期退職すると、退職金が割増された割増退職金を受給できます。企業が割増退職金を支給する目的としては、従業員の退職後のキャリア形成や生活を支援しながら退職を促進するためです。
令和4年の厚生労働省が実施した「就労条件総合調査」を見ても、大学・大学院卒の管理・事務・技術職、高校卒の管理・事務・技術職、高校卒の現業職の退職金は定年と早期退職をしたときでは平均700万円ほど割り増しされた退職金をもらえます。
【参照】
退職給付(一時金・年金)の支給実態
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou04.pdf
再就職先を斡旋してもらえるケースも多い
早期退職の優遇措置の一環として、再就職先を斡旋している企業もあります。提携している職業への紹介事業を通じて就職先を紹介してもらえたり、グループ企業への斡旋を受けられたりするため、自力で就職活動をして再就職先を探す労力と手間をかけずに済みます。
若いうちにセカンドキャリアを歩める
定年した60歳を超えてから新たなキャリアを探すのは、よほどの専門的な知識やスキルがあったとしてもハードルが高いです。早期退職をできれば若いうちにセカンドキャリアを成形し始められるため、再就職先を見つけるハードルもそこからの成長スピードも早いでしょう。
早期退職するデメリット
早期退職にはさまざまなメリットがあります。ただし、デメリットがあることも理解しておかなくてはいけません。早期退職をするデメリットを3つお伝えします。
一時的に無職になる
早期退職をすると、本来定年まで働いていればまだ会社に所属していた時期に組織から外れることになります。そのため、一時的に無職になってしまいます。もちろん、次の仕事を見つけるまでは毎月固定給が入ってくるわけではありません。退職から次の仕事を見つけられるまで生活できる分の貯蓄は蓄えておくことをおすすめします。
厚生年金の受給額が減ることも
早期退職をすると、年金額を決定する年金をもらい始めるまでの平均給料や厚生年金への加入月数などにも影響が出ます。そのため、場合によっては厚生年金の受給額が減ってしまうリスクがあります。次の仕事がなかなか見つからず離職期間が長引いてしまうと年金の総支給額も減額してしまうため、覚悟が必要です。
社宅に住んでいた場合、家がなくなる
社宅に住んでいて早期退職をした場合、当然退職時に社宅を引き払わなければいけません。その際発生する引っ越し費用や、転居先の契約金から家賃まで、すべて自己負担になります。
早期退職する前に、退職金と勤め続けた場合の給与のシュミレーションをしよう
早期転職をするのにはさまざまなメリットとデメリットがあります。一度退職すると同じ企業の同じポジションに戻ることはなかなかできません。後悔のない早期退職にするたえにも、早期退職するといくら退職金をもらえるのか、勤め続けた場合どれほどの給料と退職金をもらえるのか、しっかりシミュレーションをして確かめてみることをおすすめします。